『わるいやつら』を見て、松本清張三部作を考えてみた
夜の時間で昼ドラっぽいドロドロな感じが受けた松本清張原作のドラマ。明るいサバサバ系のお姉さんというイメージだった米倉涼子が、このシリーズに出演して一皮むけて、一気に女の色気としたたかさを持つ“悪女”系の大人の女優に変身したっていう感じだもんね。今回放送の『わるいやつら』が、松本清張三部作の最後ということで、どこがみんなのツボだったのか、ちょっと考えてみました。
●地味なオンナが男を踏み台にして変わっていく●
『黒革の手帖』では、銀行のOLがお金を横領して、銀座のクラブのママに華やかに転身。『けものみち』では、病身の夫を介護して疲れ果てていた女が夫を殺し、政財界のフィクサーの愛人になり、富も夢だったジュエリーデザイナーの地位も手に入れる。そして『わるいやつら』では、好きな男に裏切られた看護師がいろいろな手を使って復讐をしていく。最初はパッとしない女が、大物と付き合ったり、華やかな世界をのぞいたことによって、見た目から美しく変わっていく。そして、心も強くしたたかに。女としてはうらやましい。あんなふうに、お金をいっぱい使って、キレイになって、男の人を鼻であしらってみたーいって思うもん。男をステップアップの道具として操ってるってところも、見ていてスカッとしちゃうのよ。
●女のバトル●
『黒革の手帖』では、元子(米倉涼子)が波子(釈由美子)と銀座の一流クラブのママの座をめぐって、激しく戦った。イヤー、波子、すごかったよね。欲望ギラギラむき出しで。『けものみち』では、民子(米倉涼子)に愛人の座を奪われた米子(若村麻由美)が、笑顔でちくちくと嫌味を言う姿にぞぞーっとしたもんです。『わるいやつら』では、戸谷(上川隆也)の愛を独り占めにしようとする豊美(米倉涼子)とチセ(余貴美子)と隆子(笛木優子)の、嫉妬心を抑えつつの静かな会話が怖かった。女を引き摺り下ろすのは女だ!ってことで、そのドロドロぶりがたまりません。
●ちょっとうらやましいエロ●
男の人もこの三部作にハマってるのは、男として、一度はやってみたい、ちょっとエロな憧れシチュエーションが満載だから……たぶん(笑)。やっぱり、地味な女を自分の手で育ててキレイにしていく。高級クラブで美人のお姉さまたちと楽しく遊ぶ。愛人に無理難題を言う。突き放しても「あなたが好きなの」といってすがり付いてくる女がいる。そんな金も地位も権力も持っていて、モテる男……を自分と重ね合わせて、ささやかな欲望が満たされたりするんじゃないかな。女からみると、たとえば『黒革の手帖』の美容外科院長の楢林(小林稔侍)の「いいだろ、おいおい」みたいな直球スケベおじさんを見ると、「ホントに男って……ちょろい」と思って、違った意味でおじさんあしらいの勉強にもなったりしました(笑)。
●女と男の愛の戦い●
まあ、主人公の女の人たちは、しっかり一人で生きていこうとは思いつつ、やっぱり、男の人と真実の愛を貫きたいと思っている……そんな乙女心の純情や弱さが見えるから、わかるわかる~とも思うわけね。お互い、好きという気持ちはあっても、出世や自分の夢を阻む敵だったりして、なかなか素直に愛の世界に飛び込めない。その愛の探りあいにハラハラして、目が離せなくなっちゃうのよね。
『黒革の手帖』と『けものみち』のラストは、出てくる女も男も、自分の思い描いていた姿とは違った……という切ない終わり方になっていた。だから、ドラマが終わると同時に夢から覚め、「おいしい話はありませんわ」と、すぐ現実に戻れてよかったのよね(笑)。『わるいやつら』では、今までメインだったのは戸谷だったけど、ようやく、豊美が男にすがる女から、男を手玉に取る女にパワーアップしてきたので、見る張り合いが出てきたってもんです。思う存分、女にいたぶられる男の人の姿を楽しみましょう。現実でできない分だけね。
『わるいやつら』朝日放送・テレビ朝日・金曜夜9:00~9:54
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2007-03-01 【テレビ】 | 固定リンク
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