何も語らないテル。だからこそ、ジーンと胸に染みる『僕の歩く道』

余命がわかってから、どうやって生きていくかを描いた『僕の生きる道』。仕事人間の男が妻に去られ、初めて子どもと向き合い、絆を深め、本当の幸せとは何かを考えていく『僕と彼女と彼女の生きる道』。そして、その最終章として登場したのが、『僕の歩く道』だ。主人公のテル(草なぎ剛)は、自閉症という障害を持っている。そのテルを見守る人たちとテルとの関わりを描いていくのが、このドラマ。ということで、
☆『僕の歩く道』のここに胸ジーンポイント
●ただ前を向いて生きているテル
自閉症は人それぞれ症状が違うけれど、このテルの場合は、知能程度は10歳前後。記憶力はずば抜けていい。人がいった言葉をそのまま受け取り、相手への思いやりを持つまでの感情を持っていない、というのが大まかな症状として描かれている。
マイペースで他人にあわせることのできないテルに、動物園の同僚たちは、戸惑う。例えば、「ウソをついてはいけません」「約束は守らなければいけません」。そう教えられてきたことをかたくなに守るテル。それを見て、自分のズルさや、いい加減さを反省したり……。最初は、やりにくいと思っていた人たちも、テルの行動を見ているうちに、普段忘れていること、目をつぶってしまってることに気づき、自分の生き方を考え直していく。
今回のドラマでは、テルは自分から「こうしなよ」とは言わない。ただ、自分なりの生き方をしているだけ。テルはそれだけで、周りの人たちの冷たく固まった心をちょっとずつ、やさしくほぐしていく。その人を疑うことを知らないピュアな心を持っているテルの存在だけで何か、ジーンとしてしまう。
●テルのちょっとした変化
動物園の飼育係という仕事を持ったことで、いろんな人と関わり合い、無表情だったテルもたまに、笑顔を見せたり、ちょっと相手への気遣いを見せたりする。それが、自分のことのようにうれしくなっちゃうんだよね。例えば、結婚式でうれしくて泣いていた都古(香里奈)に、悲しいときに泣くというイメージしかないテルが、「僕が代わりに笑ってあげる」と言ったとき。雨が降ってきたとき、いつもは自分だけ傘を差していても平気なのに、ふと、隣りで濡れていた都古に気を使うように傘を差しかけたとき。同じ道以外は通ることのできなかったテルが、家を飛び出していった甥の幸太郎(須賀健太)を探すために、勇気を振り絞って、今まで通ったことのない新しい道に足を一歩踏み入れたとき。
そんなささいだけど、テルにとっては大きな冒険や成長が毎回ちょっとだけエピソードとして盛り込まれている。そんなシーンのときは、つい目がうるうる。
●静かでキレイな映像と演出
出てくる人たちは、ものすごく怒ったりわめいたり、泣いたりはしない。感情を抑えてふつうの会話をする。ただ静かに、ドラマの中の時は流れていく。そして、時折、ふっと映し出されるのが、真っ青な空だったり、広い草原だったり……、そのときの人の気持ちの動きを全部包み込んでしまうような自然の映像。その静かでキレイな映像が、見ている側にいろいろな想像をさせ、テルのコトバや、周りの人のテルへの思いなどが心に深くじっくり届くようにしてくれている気がする。見ている人それぞれへ、いろんなことを考える時間、余韻を与えてくれる、そんな演出に、胸が切なくなってくるの。
自閉症を持っている人が身近にはいないので、障害を持っている人たちとその家族や周りの人たちの悩みは全くというほど、想像ができない。でも、このドラマを見たことで、苦しくて悩んだりしたときでも、自分の選んだ道をまっすぐに見つめ、精一杯、生きていくこと。それが大切なんだろうな。そんな生き方ができるようになりたいと、強く思ったドラマです。草なぎくんの熱演、ホントに拍手。見たあとは、心にろうそくがポッと灯ったように、ほんの少し、心がほんわかして、なぜか人にやさしくしたくなる気にさせるドラマです。
「僕の歩く道」 フジテレビ・火曜夜10:00~10:54
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