和三盆糖と小豆の香りにほっとする、風流な蒸菓子。「冨士屋の小男鹿」

長らく続いたこの連載も、今回で最後。記念すべき最終回は、少々地味ながら風雅な香り漂う、老舗の蒸菓子をご紹介します。
小男鹿という珍しい名前は、「さをしか」と読みます。ほんのりと小豆色をした竿ものの蒸菓子ですが、表面のシマ模様や切り分けると顔を出す小豆の斑点が、野山を駆け巡る鹿に見えなくもない。昔ながらの和菓子って、本当に粋な名前が付いてますよね。
山芋や阿波特産の和三盆糖、小豆を使った素朴なその味に出会ったのは、かれこれ10年前。食通のカメラマンさんから教えていただき、口にして以来、大好きなお菓子のひとつとしてずっと大切にしてきました。見た目も味も決して派手ではないので、「きっとこの人なら分かってくれるだろう」という方を選んで差し上げたり、自宅で贅沢なお茶の時間に楽しんだり。
このお菓子の魅力はなんといっても、もっちりとした独特の舌触り。蒸菓子ならではの弾力を噛みしめるたび、品のいい小豆と和三盆糖の香りが広がります。甘さもぐっと控えめで、すべてがそこはかとない。強いインパクトのある味ではないのに、いつまでも記憶に残って、また食べたくなるのです。
おいしいものがあふれる昨今、「あのお菓子、また食べたいな」といつまでも記憶に残る味って、そうたくさんはないものです。目の前にしただけでワクワクしてくる、そんなお気に入りが自分の中にいくつかあると、毎日がほんの少し楽しくなる。
連載は終了しますが、おいしいもの探しはまだまだ続きます。みなさんも、おいしくてハッピーになれるとっておきを日々見つけて、シアワセな気分とともに味わって下さいね。
『冨士屋』
小男鹿(1本)¥1785(送料別)
http://www.saoshika.co.jp/
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