私が「オルフェウスの窓」を追ってレーゲンスブルグまで行ったように、佐藤可士和にも、‘いつか訪れてみたい遠い場所’ というのがありました。
そのひとつがギリシアのオリンピア。オリンピック発祥の地として知られる地ですが、実は佐藤にとっては、‘ものをつくることを人生の仕事にしよう’と確信した運命の瞬間に関わる場所なのです。本人もよくインタビューなどで答えていますが、高校2年生の時、初めて行った美大受験のための美術予備校で、ヘルメス像のデッサンをして、なんて楽しいんだろうと衝撃を受け、自分にはこれしかないとクリエイティブの道に進むことを決意した経緯があります。そんなエピソードを聞いていましたので、新婚旅行は迷わずギリシアへ。まずはヘルメス像、そして私の行きたいエーゲ海の島々(塩野七生さんが大好きなので…)にも行け、なんだか新生活スタートにふさわしい(?)パルテノン神殿などもあるのですから、ここしかないと思いました。
オリンピアは、アテネからバスで2時間ほどのところですが、ギリシア文字は普通のアルファベットではないので、まず道々の看板や案内が読めない。そしてもちろん英語は通じない。そしてメジャーな観光地ではないので、そもそも案内自体が少ないのです。「ここでいいのか???」とかなり不安になりながらもなんとか辿り着いたヘルメス像。本物が放つオーラは圧倒的で圧巻で、当時はまだ美術の知識も全くなかった私でさえ、ただならぬ気配を感じました。佐藤はというと、何分間も呆然と立ち尽くして、ただ静かに見入っていたのでした。









