クリント・イーストウッドのガッツ
クリント・イーストウッドの最新作
『グラン・トリノ』が公開されています。
イーストウッドはアクション映画の大スター
でしたが、40歳すぎてから監督業にも進出して、
次から次にすばらしい作品を連打。
今やアメリカ映画のトップ・フィルムメーカーです。
今年78歳なのに、そのエネルギーは枯渇することを知りません。
『グラン・トリノ』は自ら主演もして、
頑固で偏見に満ちた老人が、アジア系の若者と心を
通わせていくドラマ。大変見応えのある秀作ですが、
ごらんになると、この頑固老人のギクッとする
「人種差別発言」に驚かれると思います。
日本は「差別表現」に非常に敏感な国です。
映画の字幕もそれに気をつけねばならず、
限度を踏み越えると、映画の審査をする<映倫>から
「あそこは別の表現に変えるように」という注意を受けます。
『グラン・トリノ』より
(c) 2009 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All Rights Reserved.
ところが人種のるつぼといわれるアメリカはかなり社会状況が異なり、
日本ではだれも口にしないような種々の差別表現がまかり通っています。
通常であれば、こういう表現は字幕にする際、
日本のレベルにやわらげねばならないのですが、
この映画は「差別表現を平気で連発する頑迷な老人」が
主人公のキャラクターで、表現をやわらげてしまうと、
キャラクターが死に、ドラマのパンチが失われてしまいます。
そういう意味で、これは字幕の翻訳に大変苦労した作品でした。
幸い審査をなさった映倫の担当委員もその点を理解してくださって、
審査は無事パスということになり、ホッと胸をなでおろしました。
イーストウッド監督とは『硫黄島からの手紙』のときに
お会いしましたが、もちろんこの映画の主人公のような、
苦虫を噛みつぶしたようなbigot(偏屈者)とはほど遠く、
いつもニコニコと、温かい笑顔を見せてくださるすばらしい方。
今の位置に到達しながら「僕は毎日、何か新しいことを
学ぶように努力している」と言われたことが忘れられません。
78歳にして、この言葉! 思わずわが身を恥じました。
『硫黄島~』来日会見で監督の通訳をする筆者(中央)
PHOTOGRAPH by HIRONOBU AOYAGI
必ずや、今のままのペースとエネルギーで、
監督と俳優という二足のわらじを履きながら、
映画を作り続けられることでしょう。
ちなみに「二足のわらじ」は英語ではtwo hats 「ふたつの帽子」。
Mr. Eastwood will keep wearing two hats in the years to come.
「イーストウッド監督は今後もふたつの帽子をかぶり続けるだろう」
というように使います。
2009-04-30 | 固定リンク





