トム・フォードの才能、コリン・ファースの勇気
ハリウッド惑星も冬の気配を見せている。
年末賞レースに向かって試写が無数にあるのに、いまだに「これだ!」と
周りを(ワタシを)熱くする、高温度の作品が登場しないのが冷え冷えの原因。
そんな中でトム・フォードの監督デビュー作『A Single Man』を見て、
ムムム…感動! 体温上昇。ある日突然愛する人を失い、生きることさえ
重荷になってしまった男が、徐々にまた心を開いていくシンプルな話。
クリストファー・イシャーウッドの同名の原作がもとになっている。
初めて作った映画がこんなにうま手くできちゃうワケ?と、
トム・フォードのフィルムメーカーとしての才能を賞賛しながら、
愛ってなんなの?という永遠の疑問が心の中で目を覚ます。
生きる希望をくれるのも愛。生きる希望を消滅させるのも愛。
ベタベタせずにさらっと、それでいて心の深いところをぐっとつかむ、
too muchでもtoo littleでもない適当な度合いを熟知してるバランス感覚が見事。
来日でも旋風を巻き起こしたトム・フォード。木藤さんのブログでのレポートもごらんあれ
主役ジョージを演じたコリン・ファースは、
トム・フォードからのメールでこの作品について知った。
「メールアドレスを知らせていないトムからメールをもらった驚き(笑)よりも、
彼の雄弁な“誘い”に感動したんだ」と笑う。
理想のジョージは最初からコリン・ファースだった。ところが周りから、
“彼がやるはずないだろう”と言われ、交渉する前にあきらめてしまった。
それが、幸か不幸か、ジョージ役に決まっていた俳優が降板。
爪を噛んで待つトム・フォードのところに、脚本を読んだコリンから
「興味がある」と返事が来る。
サンタフェからロンドンにすっ飛んで行った(トム・フォードの言葉)。
結果はめでたしめでたし。
コリン・ファースはシャイなイギリス紳士然としており、はっきりいって
退屈きわまりないインタビュー対象というのが、これまでのワタシ的意見だった。
この映画がベネチア国際映画祭でで絶賛され、主演男優賞をもらったことなどが
コリンに自信を与えリラックスさせたのか。
いつもはカチカチに凍ったようなユーモアのセンスもほどよく解凍され、
言葉が弾み、 心から楽しそうな笑顔でインタビューを受けてくれた。
普段は避ける、イタリア人の妻…コリンがのぼせ上がると即刻地上に
引きずりおろしてくれるありがたい素敵な妻(笑)の話までしてくれた。
フ~ム、コリン・ファースも大口開けて大声で笑うことがあるかもしれない
…と彼のイメージに温かい血が流れ始めたたインタビューだった。
英国美青年としてスタートし、黙々と我が道を進み、
キャリア最高の演技、アカデミー賞候補確実と評される役に巡り合った49歳。
そのうえ、それは多くのハリウッド俳優たちがやりたくても手を出さない
ゲイの役だと言うところが、人生の不思議と皮肉。
コリン演じるジョージが愛するアメリカ人のジム役も、
なんとイギリス人のマシュー・グッドが扮し、
ジョージが教える大学で、彼に惹かれるアメリカ人学生ケニーも
『アバウト・ア・ボーイ』でヒュー・グラントを困らせる少年役だった
イギリス子役のニコラス・ホルトが、素敵な青年に成長して演じている。
イメージにこだわる臆病なハリウッド人種のゲイ恐怖症が暴露された形だ。
「自分がやりたいと思う役に必要なら、裸にもなる、セックスシーンも大胆にやる、
ゲイでもレズビアンでも人間を演じること変わりなし」と、
演技の本質を大事にするイギリス人俳優。
アメリカ英語を難なくこなす彼らのハリウッドへの侵入は加速している。
イギリス好きのワタシは大喜び。
PHOTOGRAPH (C)H.F.P.A.
2009-11-12 | 固定リンク








