古今東西、老若男女を問わず、恋は突然訪れる。 「山桜」&「痛いほどきみが好きなのに」
ちょっと前になりますが、12月に友人の結婚披露宴がありました。新郎新婦ともに私の大学時代の友人で、当時の2人は単なる友人同士。でも、昨春のある集まりをきっかけに、4ヶ月で入籍し(デートはたった4、5回!)、12月の披露宴を迎えたわけです。卒業してそろそろ20年。まさか、今頃こんなことが起きようとは!! 昨年一番の――自分の妊娠・出産以上の――サプライズでした(笑)。そう、すっかり忘れていたけれど、恋は突然訪れるもの。今週は、そんな切ない恋のお話2本です。
「山桜」――江戸後期、北の小国。野江(田中麗奈)は叔母の墓参りの帰り道、1本の山桜を見つける。薄紅色の花を満開に咲かせた、そのあまりの美しさに、思わず手を伸ばすが、届かない。その時突然、後ろから声がかかる。「手折ってしんぜよう」。振り返った野江に、背の高い武士は1本の桜の枝を手渡す。手塚弥一郎(東山紀之)と名乗った男は、かつて野江が断った縁談の相手だった。若くして夫に先立たれ、実家に戻っていた彼女に申し込まれた2つの縁談。母ひとり子ひとりの手塚家よりも、と会うこともないまま磯村家に嫁いだ彼女をいまだに案じてくれていた弥一郎の言葉は、野江の心を優しく満たす。これきりのはずだった2人の出会いは、やがて野江の運命までも変えていくことに……。
「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」――ここ数年続く、藤沢周平作品の映画化。本作はその5作目となりますが、実は企画が持ち上がったのは9年も前のことでした。当時、まだ10代の田中麗奈の2本目の主演作「はつ恋」を製作中だった本作のプロデューサー・小滝祥平氏が、彼女主演でいつかは、と考えていたそうです。
その想いが見事に結実。野江を演じた田中麗奈の凛としたたたずまいと、美しく咲き、潔く散る山桜がマッチした美しい映画になりました。私が初めて彼女を見たのは、映画「がんばっていきまっしょい」の女子高生役。役柄同様、高校生だった彼女も今年28歳なのですから、しみじみ、時の流れを感じてしまいます(笑)。
映画にも不思議な時間が流れていました。99分というどちらかと言えば短い作品なのですが、なんだか長いときが流れているような。それは、よくある退屈で長く感じた、ということでは決してなく、ゆったりと静かで、とても心地よいものでした。
実家に戻った自分の存在が弟や妹の縁談の邪魔になってはいけないと、急いで嫁いだ磯村の家は、武士でありながら蓄財に励む夫や舅と、そんな家をとにかく守ろうとする姑のいる、実家とはまるで違うところでした。馴染むことができないまま、たまの里帰りを唯一の心のよりどころとしていた野江にとって、誰かがどこかで自分のことを心配してくれていたということが、どれほど嬉しかったか。野江の表情ひとつで、それが伝わってきます。
その言葉の主、弥一郎は、命を賭して正義を貫こうとする人でした。野江がそんな彼に魅かれていくのは当然のこと。一度は縁があった相手なのに、と思えば思うほど、余計に思い切ることができなくなっていくのかもしれません。
満開の山桜のように、人の生きる姿勢も美しい映画です。言葉に出さないからこそ、伝わるものもある。そんな気がしました。
「山桜」 5月31日(土)~、テアトル タイムズスクエア他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.yamazakura-movie.com
(c)「山桜」製作委員会
「痛いほどきみが好きなのに」――ニューヨークに住む20歳のウィリアム(マーク・ウェバー)は俳優の卵。仕事もそれなりに順調で、人生を謳歌していた。そんなある晩、行きつけのバーで出会ったシンガーソングライター志望のサラ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)に、彼は一目で恋に落ちる。出会った晩にキスを交わした2人は、そのままつき合い始めるが――。
原作は、俳優イーサン・ホークの書いた自伝的な小説で、本作の映画化にあたって自ら監督・脚本・出演(ウィリアムの父親役)を務めています。「失恋した女性が感じる喪失感や弱さを描いた物語は山のようにあるけど、同じ経験をする男性についての物語は見たことがなかった。だったら自分で書こうと思ったんだ」と言うだけあって、ウィリアムがサラに翻弄される描写がとてもリアルです。
好きになったらすぐにセックスしたいウィリアムと、そこまで踏み込むには慎重なサラ。それは単に男女の違いだけでなく、サラが手痛い過去を抱えていたから、ということもあるのですが。その微妙な気持ちのスレ違いは、次第に埋めようもなく大きくなっていくのです。
「怖くてたまらない。君に好かれているのか自信がない」というウィリアムの想いは、誰しも覚えがあるのではないでしょうか? ある日突然自分に襲いかかり、自分で自分にイライラしてしまうほどの不安を抱えた切なさこそが恋なのですが、そんなことは過ぎてしまった今だからこそ言えること。
好きになればなるほど、追いかければ追いかけるほど、離れていってしまう相手。なぜ、自分と同じだけ愛してくれないのか。いつも不公平な天秤に、やりきれなさが募ります。
そういえば、20歳の頃の彼は今頃どうしているだろう? そんなことをふと懐かしく思い起こしながら、思うようにならない嵐のような痛みをともなう恋を、あなたも一緒に感じてください。
「痛いほどきみが好きなのに」 5月17日(土)~、新宿武蔵野館他、全国公開
オフィシャルサイトhttp://www.itakimi.jp
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2008-05-09 【映画】 | 固定リンク
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