思わず原作も読みたくなる、小説と映画の幸せな関係「つぐない」&「ジェイン・オースティンの読書会」

かつて、「読むほうが先か、観るほうが先か」なんてコピーがありましたが、あなたはどちら派ですか? 私は、映画を見てから原作を読むほうが好きでした。先に読んでしまうと、好き勝手に膨らませたイメージと映画が違っていて、ガッカリすることがよくあったので(逆は少ない)。でも、ここ数年は原作モノが多すぎて、ほとんど読めないまま次の映画が公開されていくという状態でした。そんな中、久しぶりに原作を読みたくなる映画に出会いました。映画はもちろん良かったのですが、きっと原作も良いに違いない。そんなふうに思わせる2本です。
「つぐない」――1935年夏。イギリスの政府官僚タリスの広大な屋敷には2人の娘がいた。姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)は大学を卒業したもののその後が決まらず、屋敷で退屈な日々を過ごし、妹のブライオニー(シアーシャ・ローナン)は小説家を志す多感な13歳だ。久しぶりに帰省する兄を迎えるため、屋敷が慌ただしいムードに包まれる中、妹は姉と使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)が諍いを起こすのを目撃する。かつては仲の良い幼なじみだったのに、いつしかろくに口もきかなくなった2人の間に立ち込める危うい空気。さらにその後、ブライオニーは2人が激しく愛し合う図書室に居合わせてしまう。しかし、彼女には姉が辱められているように見えたのだった。嫌悪と恐怖を抱く中、事件が起こる。滞在中のいとこローラ(ジュノー・テンプル)が何者かに乱暴されたのだ。人影を見たブライオニーは、「犯人はロビーだ」と証言する――。
受賞は音楽賞のみでしたが(タイプライターの音を使ったBGMがとても印象的でした)、全米アカデミー賞で作品賞他7部門にノミネートされた話題作です。妹ブライオニーは13歳をS・ローナン、18歳をロモーラ・ガライ、現在をヴァネッサ・レッドグレイブの3人が演じ分けていますが、特に助演女優賞にノミネートされたS・ローナンの存在が鮮烈でした。
撮影時、実際に13歳だった彼女の青い瞳がとにかく印象的。少女特有の潔癖で冷えて澄んだ眼差しには、汚いもの、イヤなものをバッサリと切り捨ててしまうことに何のためらいもありません。ある意味、冷徹なまでに純粋な少女ブライオニーが、その瞳で語られます。
姉たちの激しく燃え上がる、セクシュアルな生々しい感情を理解できず、またロビーへ淡い想いを抱いていたが故に、許すことができない少女。自分の証言がどんな事態を引き起こしてしまったのか、気づいた時にはすでに取り返しがつかないのです。戦争へとまっしぐらに進む時代の流れも、罪のない恋人たちをさらに追い詰め、悲劇を深めます。
深い考えのない一言が、時にどれほど恐ろしく哀しい事態を招くのか。何が人生の岐路なのかは、後になって振り返ってみなければわからないのかもしれません。成長し、夢をかなえて作家となったブライオニーが、その人生すべてをかけて償おうと選んだある方法。あなたはどう感じるでしょうか?
イギリスだけで150万部のベストセラーとなった原作の大河小説「贖罪」も、きっと読み応え十分なはず。このゴールデンウィークに、ぜひ読破したくなった1冊です。
「つぐない」 4月12日(土)~、テアトル タイムズスクエア他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.tsugunai.com
(c)2007 Universal Studios. All Rights Reserved.
「ジェイン・オースティンの読書会」――ブリーダーのジョスリン(マリア・ベロ)の愛犬が死んだ。哀しむ彼女を元気づけるため、友人のバーナデット(キャシー・ベイカー)は読書会を計画する。テーマは“人生最高の解毒剤”ジェイン・オースティンだ。彼女の長編小説は6冊。1冊ごとにリーダーを決める読書会のお約束に従って、4人のメンバーを捜すことに。共通の友人シルヴィア(エイミー・ブレネマン)とその娘アレグラ(マギー・グレイス)を誘ったところで、励ます相手が変更。シルヴィアが、20年以上連れ添った夫ダニエル(ジミー・スミッツ)に、「好きな人ができた」と告げられたのだ。バーナデットはオースティン映画祭で知り合った高校のフランス語教師プルーディー(エミリー・ブラント)をスカウト。一方、ジョスリンはシルヴィアの相手にと、偶然知り合ったSFファンの青年グリッグ(ヒュー・ダンシー)に声をかける。こうして、読書会が始まった。
アメリカでミドルクラスの女性の3人に1人が参加するほどブームになっている「読書会」を、知っていましたか? 私は本作で初めて知りました。テーマを1つ決めて何冊か選び、1冊ごとにリーダーを決めて食事やワイン、コーヒーなどを楽しみながら本について語る、ホームパーティのようなものだそうです。とは言っても、必ず指定された本を読み込み、自分の意見を披露しなければならないので、討論会のような一面もあるのかも。
J・オースティンは18世紀末から19世紀初めのイギリス人作家で、独身のまま41歳でその短い生涯を閉じました。本作は、そのオースティンの読書会に参加する6人のメンバーの人生と、オースティンの小説をシンクロさせて展開するという小説が原作。小説の中で実在の小説について語るという、“劇中劇”ならぬ“小説中小説”(笑)です。
オースティンの小説のストーリーはここでは省きますが、全然読んだことがない私でも十分理解できる展開。読書会のメンバーが、いくら早口に小説の感想や意見を語っても、なんとなくついていけるし、そうこうしているうちに映画に引き込まれてしまうのです。
年齢を重ね、経験も積み、酸いも甘いも噛み分けた(はずの)女たち(アレグラとプルーディー、グリッグは若いですが)がとっても魅力的。彼女たちが抱える、今まで見ないふりをしていた様々な悩みやコンプレックスが、読書会によって目の前に突きつけられ、否応なく自分を見つめ直す破目に陥るのですから、読書ってホントにすごい(笑)。
オースティンの作品はほとんど映画化されているので(最近では、「プライドと偏見」:原作タイトル「自負と偏見」/出演キーラ・ナイトレイ、「エマ」:出演グウィネス・パルトロウ、ユアン・マクレガー、「いつか晴れた日に」:原作タイトル「分別と多感」/出演エマ・トンプソン、ヒュー・グラントなど)、映画を見る度に原作も……と思いつつ1度も果たせませんでしたが、今度こそ! と決意も新たになりました(笑)。バーナデットが言うように“人生最高の解毒剤”なのかも、と思わせてくれます。
人間的で魅力的な個性溢れるキャラクターたちと、その周辺のこれまたステキな人々とが囲む幸せなエンディングは、見ているこちらまでイイ気分。莫大な製作費をかけ、スター俳優が出演する、いわゆる大作ではありませんが、これほど満足感を味わわせてくれるんですから、映画もスゴイ。読書は1人でするもの、と思い込んでいましたが、こんな読み方も楽しそう。原作も、J・オースティンの小説も、がんばって読むぞ! と試写室を出てくる時に決心しました。今度こそ(笑)。
「ジェイン・オースティンの読書会」 4月12日(土)~、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.sonypictures.jp/movies/janeaustenbookclub/index.html
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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2008-04-11 | 固定リンク
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