アカデミー賞ノミネート作、続々日本公開中! 「フィクサー」&「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

先日ご紹介した、2月24日に発表された第80回全米アカデミー賞。日本でも、ノミネート作品が続々と封切られています。今週は、作品&監督&主演男優賞他、多数の部門にノミネートされた2作品のご紹介です。
「フィクサー」――元検察官のマイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)は、マンハッタンの大手法律事務所の弁護士。しかし、法廷で弁護をしたことは1度もなく、在職15年にも関わらず共同経営者ですらない。彼はフィクサー(もみ消し屋)としてその力を発揮し、上司バック(シドニー・ポラック)もそれ以上を認めようとはしなかった。このまま人生を終えるのか? 思い悩む彼の元に、同僚でトップ弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)の自殺の知らせが届く。農業会社U・ノース社の巨額な薬害訴訟を担当していたアーサーは、ある秘密を握っていたらしい。依頼主のU・ノース社法務部長カレン・クラウダー(ティルダ・スウィントン)と会ったマイケルは、アーサーの自殺に疑惑を抱く――。
原題は主人公の名前そのまま、「マイケル・クレイトン」。ストーリーや設定もスリリングで引き込まれますが、一番の魅力はG・クルーニーに尽きるのではないでしょうか。
夢や野心を抱いて転身したのに、現実は弁護士とはいえないような仕事ばかり。有力なクライアントが犯した軽微な罪を、発覚前に“もみ消し”たり、根回ししたり。その24時間営業の仕事は離婚を招き、10歳の息子の親権をめぐって妻と訴訟の最中。おまけにいとこと始めたレストランも失敗、失踪したいとこが残した8万ドルもの借金を、1週間以内に返済しなければならない。これからの人生を考え直したくもなるというものです。
そんな中、親しかったアーサーが突然、自殺を遂げます。「大きな訴訟を抱えてストレスに耐え切れなくなった」とされますが、マイケルには信じられません。アーサーは何を知っていたのか? 何が起きているのか?
地位も財力もないマイケルが単身で調査し、闘うにはあまりにも巨大な相手。しかも、仲間たちを敵に回すことになるかもしれない。目をつぶっていたほうが、ずっと楽なのです。でも――果たして彼はどんな選択をするのでしょうか?
スリリングな展開の合間に登場する、マイケルの息子を見つめる優しい眼差しに胸キュン。G・クルーニーを初めて見たのは「ER/緊急救命室」の小児科医ダグ・ロス役でしたが、あの時はこんなに大スターになるとは思いもしませんでした(笑)。彼の存在が「ER」を大ヒットに導いたと言えますし、同様に本作も一層おもしろくなっていると思うのです。
主演男優賞にノミネートされていましたが、授賞式前のインタビューではあっさり、「ダニエル・デイ=ルイスしかいないでしょ」(その予想通り、結果はD・D=ルイスでした)。余裕たっぷりで、今や“ハリウッドの兄貴”のような存在のG・クルーニーにとって、受賞するかどうかなんて、もしかしたらどうでもいいことなのかも。次回作は、盟友ブラッド・ピット共演のコーエン兄弟監督作品。華やかなエンタテインメントに徹した作品から、舌鋒鋭いメッセージ色の強い作品まで、今後の活躍がまたまた楽しみな兄貴です。
「フィクサー」 日比谷みゆき座他、TOHO系全国公開中
オフィシャルサイト http://www.fixer-movie.com
(c)2007 Clayton Productions, LLC
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」――20世紀初頭、ダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は一攫千金を夢見て、石油採掘に賭けていた。傍らにはいつも幼い息子H.W.(ディロン・フレイジャー)の姿が。彼の存在は、時に険悪になる交渉をスムーズにしていた。ある日、ポール(ポール・ダノ)という青年が、故郷の土地に石油が埋蔵されているという情報を持ってくる。地元の人々に知らせないまま、土地を安価に買いあさったダニエルは、石油を掘り当てて莫大な財産を手に入れる。しかし、ポールの双子の兄弟で牧師のイーライ(P・ダノ/2役)は、土地を荒らし、教会に寄付をしない彼に反感を持っていた。そんな中、採掘場で起きた爆発事故でH.W.が聴力を失ってしまう。それをきっかけにダニエルはイーライに暴行、2人の間の亀裂は決定的なものになっていく――。
2時間38分という長尺に目を逸らすこともさせないままグイグイ引き込んで、何かを目の前に突きつけるような物語です。試写室を出た時、宣伝担当の方に「どうでした?」と聞かれ、「いやあ……」と絶句してしまった私。何を話していいのやら、何から言っていいのやら、頭の中を嵐が吹き荒れているような気分でした。
タイトルの「ブラッド」には、血族、石油の他にも、いろんな意味が込められているのでしょう。人間の飽くなき欲望と愛憎、疑惑、羨望、裏切りが、華やかなアメリカン・ドリームを体現した“成功”の裏にうごめいています。
ダニエルは、聴力を失ったこととある事件を起こしたことから、息子を遠い寄宿制の学校に預けます。「捨てられた」と思い込むH.W.。ダニエル自身(ある事情からイーライに強制されて)、「息子を捨てた!」と告白します。でも、連れ歩いていたのは計算ずくだったかもしれませんが、赤ん坊の頃からたった1人で育ててきた彼に、本当に一片の愛情もなかったのでしょうか?
そして、厚い信仰心で神の言葉を語り、信者からカリスマ的な存在に祭り上げられていたイーライ。でも、人々が尊敬の眼差しで彼を見つめていたとき、彼は本当に純粋に、神のことだけを考えていたのでしょうか?
映像やセリフで語られない部分が、“余白”としてたくさん残されているような気がします。財産も地位も名誉も手にしたダニエルが、どんな結末を迎えるのか。信仰に生きたはずのイーライが、最後に頼るものは何なのか。すさまじい迫力で競演しているD・D=ルイスとP・ダノ。2人が繰り広げる背筋の寒くなるラスト・シーンに、あなたは何を感じるでしょうか。
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 4月26日(土)~、シャンテ シネ他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://movies.co.jp
(c)2007 BY MIRAMAX FILM CORP. AND PARAMOUNT VANTAGE, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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2008-04-18 | 固定リンク
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