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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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“自由の国アメリカ”を生きた実在の男たち 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」&「ラフマニノフ ある愛の調べ」

Movie080425_1_2

アメリカ――と聞くと、つい“自由の国”という枕詞をつけたくなります(まぁ、最近ではいろんな問題が表面化して、単純に“自由”を謳ってはいられないようですが)。今週は時代も国籍も異なりますが、“自由の国”アメリカを生きた実在の男たちの物語です。

「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」――チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)はテキサス州選出の下院議員。酒と女性が大好きで、再選されたことが唯一の功績と言われるような存在だ。しかし、ソビエト連邦軍に侵攻されたアフガニスタンのニュースを見たとき、彼の中で何かが起きる。国防費歳出小委員会のメンバーだった彼は、アフガニスタンへの密かな加勢費用を倍にするよう働きかける。そんな動きを察知したのが、テキサス州で6番目の大富豪ジョアン(ジュリア・ロバーツ)だった。反共主義者でアフガニスタンの支援活動を精力的に行っていた彼女に難民キャンプを見せられたチャーリーは、決意を新たに、情報収集のためCIAから担当者を呼び寄せる。やってきたガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、切れ者過ぎて出世街道から外れた男だったが、その的確な情報と指南で、小さな動きは大きなうねりを起こし始め――。

久々に登場のT・ハンクス最新作は実話。お気楽議員の義憤がきっかけで、世界が変わったという物語です。膨大な予算で最新兵器を湯水のように投入して隣国に侵攻したソ連。対するアフガニスタンに資金はなく、最新戦闘機に昔ながらの銃で立ち向うのですから、勝負になるはずがない。おもちゃ型爆弾の投下で子供たちまでが無残な目に遭っているのを知ったチャーリーは、何が何でもソ連に一泡吹かせようと決心するのです。

権力も、世界情勢の大した知識もなかった彼が、ガストやジョアンと作戦を立て、自分の人脈を使い、ジワジワとアメリカを動かしていきます。時にコミカルで楽天的にも見える彼の行動が、おもしろいように形を成し、実現していくさまは痛快です。

「自分が息をしている限り、ソ連に自分たちのしたことのつけを支払わせ、アフガニスタン人を助ける」。それまで大した実績もない、単なる頭数合わせのような議員だった彼を決意させたものは何だったのか。チャーリーは少年時代のある出来事をきっかけに、生まれながらに手にしている母国の“自由”と“平等”の意味を実感していました。だから、“自由”を脅かされ、難民としてさまよう人々の状況を許すことができなかったのです。

アメリカに生きる自分だからできること――目的に向って突き進むチャーリーの姿に、彼がいかに母国を信じ、自由と平和に囲まれた日常を大切にしているかが見えてきます。

全編、明るくコミカルなトーン。でも、「9.11」を知っている私は、どうしても拍手喝采だけして見ることができませんでした。考えないではいられません。なぜ、19人のテロリストたちが、アフガニスタンからやってきたのか。それはチャーリー自身の苦いモノローグとして、エンディングを飾ります。もし、ソ連軍撤退後に彼とガストの提案が実現していたら――歴史に「たら」「れば」は禁物ですが――「9.11」はなかったかもしれない。現実のチャーリーは政界を引退しましたが、軽快なエンタテインメントの向こう側の現実は、今なお、続いています。

Movie080425_2_2「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」 5月17日(土)~、日劇1他、全国公開
オフィシャルサイト http://charlie-w.com
(c)2007 Universal Studios. All Rights Reserved.


Movie080425_3_2

「ラフマニノフ ある愛の調べ」――その夜、アメリカのカーネギー・ホールは興奮に包まれた。ロシアから亡命してきた天才ピアニストにして作曲家であるセルゲイ・ラフマニノフ(エフゲニー・ツィガノフ)の神業のような演奏が披露されたのだ。熱狂的な賞賛に、ラフマニノフの友人で主催者のスタインウェイ(アレクセイ・コルトネフ)は、200日で100都市をまわる超人的ツアーを企画。ラフマニノフは妻ナターシャ(ヴィクトリア・トルストガノヴァ)とともに出発する。各地で大成功を収めながらも、日に日に憔悴していくラフマニノフ。故国への望郷の念。新しい曲ができない焦り。優しい妻の励ましも疎ましく、自分の殻に閉じこもってしまう。そんなある日、贈り主不明のライラックの花束が届く。それは、彼にとって忘れることのできない思い出の花だった。一体誰が? 呼び覚まされた懐かしい記憶を胸に、新たな旋律が生まれようとしていた。

コミック、ドラマ共に人気を博した『のだめカンタービレ』に出てきた「ピアノ協奏曲第2番」の作曲者と言えば、「ああ、あの」とすぐわかるかもしれません。超絶的テクニックを駆使して数々の美しい難曲を生み出した彼は、ドから1オクターブ半上のソまで届く(!)ほどの大きな手を持っていたそうです。

その大きな手の持つイメージとは逆に、繊細で神経質な彼は、家庭的にはあまり恵まれていませんでした。裕福だった生家は没落し両親は離婚。才能を認めてくれた恩師とは方針の違いから決別。人妻との熱烈な恋と手痛い失恋。初めて作曲した交響曲の失敗とそれによる神経衰弱。そして、革命を受け入れられなかったがために故国まで失います。その彼が自由な音楽活動を目指し、妻や娘を連れて亡命した先がアメリカでした。

夢と希望を抱いて渡米したのに、生活のため多くの時間を演奏活動に費やさなければならなかったことは、作曲を優先したい彼にとってはとてもつらいこと。才能溢れる音楽家をアメリカは大歓迎しますが、彼の焦燥感は癒されることはありません。もし、違った時代に生まれていたら、と思わずにはいられません。

そんな彼の元に届いたライラックの花。「伝記的な映画ではなく彼の生涯を自由に解釈した愛の物語」とパーヴェル・ルンギン監督が語るように、本作は事実と想像で織り成されていますが、この贈り主不明の花束は事実だそうです。この贈り主が誰だったかという解釈がとってもステキ。悲劇の音楽家であったラフマニノフですが、アメリカにわたってのちの人生は、少しは心穏やかに過ごせたのではないか、と信じたくなります。

1943年、ガンのため、ロサンゼルスで死去した彼は、ニューヨークのロシア人墓地に埋葬されました。自由を求めてアメリカに来ましたが、故郷への想いは断ちがたく、演奏会のギャランティをソビエト領事館に寄付したこともあったというラフマニノフ。今は、もっと自由な国で、自由に音楽を楽しんでいるのでしょうか。

Movie080425_4_2「ラフマニノフ ある愛の調べ」 Bunkamuraル・シネマで公開中、他全国順次公開
オフィシャルサイトhttp://rachmaninoff.gyao.jp
(c)2007 THEMA PRODUCTION JSC   (c)2007 VGTRK ALL RIGHTS RESERVED.

 
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2008-04-25 | 固定リンク | コメント (0)

アカデミー賞ノミネート作、続々日本公開中! 「フィクサー」&「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

Movie080418_1

先日ご紹介した、2月24日に発表された第80回全米アカデミー賞。日本でも、ノミネート作品が続々と封切られています。今週は、作品&監督&主演男優賞他、多数の部門にノミネートされた2作品のご紹介です。

「フィクサー」――元検察官のマイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)は、マンハッタンの大手法律事務所の弁護士。しかし、法廷で弁護をしたことは1度もなく、在職15年にも関わらず共同経営者ですらない。彼はフィクサー(もみ消し屋)としてその力を発揮し、上司バック(シドニー・ポラック)もそれ以上を認めようとはしなかった。このまま人生を終えるのか? 思い悩む彼の元に、同僚でトップ弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)の自殺の知らせが届く。農業会社U・ノース社の巨額な薬害訴訟を担当していたアーサーは、ある秘密を握っていたらしい。依頼主のU・ノース社法務部長カレン・クラウダー(ティルダ・スウィントン)と会ったマイケルは、アーサーの自殺に疑惑を抱く――。

原題は主人公の名前そのまま、「マイケル・クレイトン」。ストーリーや設定もスリリングで引き込まれますが、一番の魅力はG・クルーニーに尽きるのではないでしょうか。

夢や野心を抱いて転身したのに、現実は弁護士とはいえないような仕事ばかり。有力なクライアントが犯した軽微な罪を、発覚前に“もみ消し”たり、根回ししたり。その24時間営業の仕事は離婚を招き、10歳の息子の親権をめぐって妻と訴訟の最中。おまけにいとこと始めたレストランも失敗、失踪したいとこが残した8万ドルもの借金を、1週間以内に返済しなければならない。これからの人生を考え直したくもなるというものです。

そんな中、親しかったアーサーが突然、自殺を遂げます。「大きな訴訟を抱えてストレスに耐え切れなくなった」とされますが、マイケルには信じられません。アーサーは何を知っていたのか? 何が起きているのか?

地位も財力もないマイケルが単身で調査し、闘うにはあまりにも巨大な相手。しかも、仲間たちを敵に回すことになるかもしれない。目をつぶっていたほうが、ずっと楽なのです。でも――果たして彼はどんな選択をするのでしょうか?

スリリングな展開の合間に登場する、マイケルの息子を見つめる優しい眼差しに胸キュン。G・クルーニーを初めて見たのは「ER/緊急救命室」の小児科医ダグ・ロス役でしたが、あの時はこんなに大スターになるとは思いもしませんでした(笑)。彼の存在が「ER」を大ヒットに導いたと言えますし、同様に本作も一層おもしろくなっていると思うのです。

主演男優賞にノミネートされていましたが、授賞式前のインタビューではあっさり、「ダニエル・デイ=ルイスしかいないでしょ」(その予想通り、結果はD・D=ルイスでした)。余裕たっぷりで、今や“ハリウッドの兄貴”のような存在のG・クルーニーにとって、受賞するかどうかなんて、もしかしたらどうでもいいことなのかも。次回作は、盟友ブラッド・ピット共演のコーエン兄弟監督作品。華やかなエンタテインメントに徹した作品から、舌鋒鋭いメッセージ色の強い作品まで、今後の活躍がまたまた楽しみな兄貴です。

Movie080418_2 「フィクサー」 日比谷みゆき座他、TOHO系全国公開中
オフィシャルサイト http://www.fixer-movie.com
(c)2007 Clayton Productions, LLC


Movie080418_3

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」――20世紀初頭、ダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は一攫千金を夢見て、石油採掘に賭けていた。傍らにはいつも幼い息子H.W.(ディロン・フレイジャー)の姿が。彼の存在は、時に険悪になる交渉をスムーズにしていた。ある日、ポール(ポール・ダノ)という青年が、故郷の土地に石油が埋蔵されているという情報を持ってくる。地元の人々に知らせないまま、土地を安価に買いあさったダニエルは、石油を掘り当てて莫大な財産を手に入れる。しかし、ポールの双子の兄弟で牧師のイーライ(P・ダノ/2役)は、土地を荒らし、教会に寄付をしない彼に反感を持っていた。そんな中、採掘場で起きた爆発事故でH.W.が聴力を失ってしまう。それをきっかけにダニエルはイーライに暴行、2人の間の亀裂は決定的なものになっていく――。

2時間38分という長尺に目を逸らすこともさせないままグイグイ引き込んで、何かを目の前に突きつけるような物語です。試写室を出た時、宣伝担当の方に「どうでした?」と聞かれ、「いやあ……」と絶句してしまった私。何を話していいのやら、何から言っていいのやら、頭の中を嵐が吹き荒れているような気分でした。

タイトルの「ブラッド」には、血族、石油の他にも、いろんな意味が込められているのでしょう。人間の飽くなき欲望と愛憎、疑惑、羨望、裏切りが、華やかなアメリカン・ドリームを体現した“成功”の裏にうごめいています。

ダニエルは、聴力を失ったこととある事件を起こしたことから、息子を遠い寄宿制の学校に預けます。「捨てられた」と思い込むH.W.。ダニエル自身(ある事情からイーライに強制されて)、「息子を捨てた!」と告白します。でも、連れ歩いていたのは計算ずくだったかもしれませんが、赤ん坊の頃からたった1人で育ててきた彼に、本当に一片の愛情もなかったのでしょうか?

そして、厚い信仰心で神の言葉を語り、信者からカリスマ的な存在に祭り上げられていたイーライ。でも、人々が尊敬の眼差しで彼を見つめていたとき、彼は本当に純粋に、神のことだけを考えていたのでしょうか? 

映像やセリフで語られない部分が、“余白”としてたくさん残されているような気がします。財産も地位も名誉も手にしたダニエルが、どんな結末を迎えるのか。信仰に生きたはずのイーライが、最後に頼るものは何なのか。すさまじい迫力で競演しているD・D=ルイスとP・ダノ。2人が繰り広げる背筋の寒くなるラスト・シーンに、あなたは何を感じるでしょうか。

Movie080418_4 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 4月26日(土)~、シャンテ シネ他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://movies.co.jp
(c)2007 BY MIRAMAX FILM CORP. AND PARAMOUNT VANTAGE, A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 
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2008-04-18 | 固定リンク | コメント (0)

思わず原作も読みたくなる、小説と映画の幸せな関係「つぐない」&「ジェイン・オースティンの読書会」

Movie080411_1

かつて、「読むほうが先か、観るほうが先か」なんてコピーがありましたが、あなたはどちら派ですか? 私は、映画を見てから原作を読むほうが好きでした。先に読んでしまうと、好き勝手に膨らませたイメージと映画が違っていて、ガッカリすることがよくあったので(逆は少ない)。でも、ここ数年は原作モノが多すぎて、ほとんど読めないまま次の映画が公開されていくという状態でした。そんな中、久しぶりに原作を読みたくなる映画に出会いました。映画はもちろん良かったのですが、きっと原作も良いに違いない。そんなふうに思わせる2本です。

「つぐない」――1935年夏。イギリスの政府官僚タリスの広大な屋敷には2人の娘がいた。姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)は大学を卒業したもののその後が決まらず、屋敷で退屈な日々を過ごし、妹のブライオニー(シアーシャ・ローナン)は小説家を志す多感な13歳だ。久しぶりに帰省する兄を迎えるため、屋敷が慌ただしいムードに包まれる中、妹は姉と使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)が諍いを起こすのを目撃する。かつては仲の良い幼なじみだったのに、いつしかろくに口もきかなくなった2人の間に立ち込める危うい空気。さらにその後、ブライオニーは2人が激しく愛し合う図書室に居合わせてしまう。しかし、彼女には姉が辱められているように見えたのだった。嫌悪と恐怖を抱く中、事件が起こる。滞在中のいとこローラ(ジュノー・テンプル)が何者かに乱暴されたのだ。人影を見たブライオニーは、「犯人はロビーだ」と証言する――。

受賞は音楽賞のみでしたが(タイプライターの音を使ったBGMがとても印象的でした)、全米アカデミー賞で作品賞他7部門にノミネートされた話題作です。妹ブライオニーは13歳をS・ローナン、18歳をロモーラ・ガライ、現在をヴァネッサ・レッドグレイブの3人が演じ分けていますが、特に助演女優賞にノミネートされたS・ローナンの存在が鮮烈でした。

撮影時、実際に13歳だった彼女の青い瞳がとにかく印象的。少女特有の潔癖で冷えて澄んだ眼差しには、汚いもの、イヤなものをバッサリと切り捨ててしまうことに何のためらいもありません。ある意味、冷徹なまでに純粋な少女ブライオニーが、その瞳で語られます。

姉たちの激しく燃え上がる、セクシュアルな生々しい感情を理解できず、またロビーへ淡い想いを抱いていたが故に、許すことができない少女。自分の証言がどんな事態を引き起こしてしまったのか、気づいた時にはすでに取り返しがつかないのです。戦争へとまっしぐらに進む時代の流れも、罪のない恋人たちをさらに追い詰め、悲劇を深めます。

深い考えのない一言が、時にどれほど恐ろしく哀しい事態を招くのか。何が人生の岐路なのかは、後になって振り返ってみなければわからないのかもしれません。成長し、夢をかなえて作家となったブライオニーが、その人生すべてをかけて償おうと選んだある方法。あなたはどう感じるでしょうか?

イギリスだけで150万部のベストセラーとなった原作の大河小説「贖罪」も、きっと読み応え十分なはず。このゴールデンウィークに、ぜひ読破したくなった1冊です。

Movie080411_2 「つぐない」 4月12日(土)~、テアトル タイムズスクエア他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.tsugunai.com
(c)2007 Universal Studios. All Rights Reserved.


Movie080411_3

「ジェイン・オースティンの読書会」――ブリーダーのジョスリン(マリア・ベロ)の愛犬が死んだ。哀しむ彼女を元気づけるため、友人のバーナデット(キャシー・ベイカー)は読書会を計画する。テーマは“人生最高の解毒剤”ジェイン・オースティンだ。彼女の長編小説は6冊。1冊ごとにリーダーを決める読書会のお約束に従って、4人のメンバーを捜すことに。共通の友人シルヴィア(エイミー・ブレネマン)とその娘アレグラ(マギー・グレイス)を誘ったところで、励ます相手が変更。シルヴィアが、20年以上連れ添った夫ダニエル(ジミー・スミッツ)に、「好きな人ができた」と告げられたのだ。バーナデットはオースティン映画祭で知り合った高校のフランス語教師プルーディー(エミリー・ブラント)をスカウト。一方、ジョスリンはシルヴィアの相手にと、偶然知り合ったSFファンの青年グリッグ(ヒュー・ダンシー)に声をかける。こうして、読書会が始まった。

アメリカでミドルクラスの女性の3人に1人が参加するほどブームになっている「読書会」を、知っていましたか? 私は本作で初めて知りました。テーマを1つ決めて何冊か選び、1冊ごとにリーダーを決めて食事やワイン、コーヒーなどを楽しみながら本について語る、ホームパーティのようなものだそうです。とは言っても、必ず指定された本を読み込み、自分の意見を披露しなければならないので、討論会のような一面もあるのかも。

J・オースティンは18世紀末から19世紀初めのイギリス人作家で、独身のまま41歳でその短い生涯を閉じました。本作は、そのオースティンの読書会に参加する6人のメンバーの人生と、オースティンの小説をシンクロさせて展開するという小説が原作。小説の中で実在の小説について語るという、“劇中劇”ならぬ“小説中小説”(笑)です。

オースティンの小説のストーリーはここでは省きますが、全然読んだことがない私でも十分理解できる展開。読書会のメンバーが、いくら早口に小説の感想や意見を語っても、なんとなくついていけるし、そうこうしているうちに映画に引き込まれてしまうのです。

年齢を重ね、経験も積み、酸いも甘いも噛み分けた(はずの)女たち(アレグラとプルーディー、グリッグは若いですが)がとっても魅力的。彼女たちが抱える、今まで見ないふりをしていた様々な悩みやコンプレックスが、読書会によって目の前に突きつけられ、否応なく自分を見つめ直す破目に陥るのですから、読書ってホントにすごい(笑)。

オースティンの作品はほとんど映画化されているので(最近では、「プライドと偏見」:原作タイトル「自負と偏見」/出演キーラ・ナイトレイ、「エマ」:出演グウィネス・パルトロウ、ユアン・マクレガー、「いつか晴れた日に」:原作タイトル「分別と多感」/出演エマ・トンプソン、ヒュー・グラントなど)、映画を見る度に原作も……と思いつつ1度も果たせませんでしたが、今度こそ! と決意も新たになりました(笑)。バーナデットが言うように“人生最高の解毒剤”なのかも、と思わせてくれます。

人間的で魅力的な個性溢れるキャラクターたちと、その周辺のこれまたステキな人々とが囲む幸せなエンディングは、見ているこちらまでイイ気分。莫大な製作費をかけ、スター俳優が出演する、いわゆる大作ではありませんが、これほど満足感を味わわせてくれるんですから、映画もスゴイ。読書は1人でするもの、と思い込んでいましたが、こんな読み方も楽しそう。原作も、J・オースティンの小説も、がんばって読むぞ! と試写室を出てくる時に決心しました。今度こそ(笑)。

Movie080411_4 「ジェイン・オースティンの読書会」 4月12日(土)~、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.sonypictures.jp/movies/janeaustenbookclub/index.html
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 
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2008-04-11 | 固定リンク | コメント (0)

これぞセイシュン! 笑った後はちょっぴりアツい「うた魂(たま)♪」&「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」

Movie080404_1

春です! 今年も近所の公園の並木が一斉に桜の花を咲かせています。花粉症というやっかいな長年の相棒もいるので、つらい季節ではありますが、それでもなんだか心が弾みます。そう、春といえば“青春”という春もありました(笑)――あらためて口にするとちょっと気恥ずかしいですが、誰もが通り過ぎる(あるいは現在進行形で過ごしている)10代という青春時代。あなたは何をしていました(います)か? 今週は笑えて、ちょっぴり感動でアツくなる、青春時代ど真ん中の2本です。

「うた魂♪」――荻野かすみ(夏帆)は自分の歌声とルックスに自信たっぷりな、合唱部でソプラノパート・リーダーを務める女子高生。生徒会長の牧村(石黒英雄)から、「歌っている荻野さんの写真を撮りたい」と言われ、有頂天だ。ところが、上がってきた写真の自分は、想像とはまったく違う、ものスゴイ顔。ショックを受ける彼女に、牧村のひと言が追い討ちをかける。「産卵中のシャケみたいにユーモラスだね」。すっかり自信を喪失した彼女は、産休中の先生に代わり合唱部顧問を務める瀬沼先生(薬師丸ひろ子)に退部を申し出る。しかし、最後の舞台となるはずだった夏の合唱祭で、心から歌を愛するヤンキー高校の合唱部部長・権藤(ゴリ<ガレッジセール>)たちと出会い……。

実は小・中学生時代、地元の少年少女合唱団(といっても、少年は1人もいなかった)に在籍していた私。毎週日曜日の練習がめんどうくさいこともあったけど、ハモった時の感覚――自分の身体が楽器みたいにワンワン反響して、まるで“音の宇宙”に放り込まれたような不思議な感覚――が大好きでした。

だから合唱と聞くと、当時を思い出してなんだか懐かしくなります。確かに、自分がどんな顔して歌っているのか、見たことはなかったなあ。だから、かすみの衝撃も少しは理解できそう。彼女ほどナルシスティックなところはない、と思っていますが(笑)。

この、かすみ役の夏帆がとってもカワイイのです「天然コケッコー」のそよちゃん役でも、しっかり者の中に天然なところがちらちら見えていましたが、今回はカンペキな天然ぶりを披露(笑)。一歩間違うと嫌味なナルシストを、かわいくおかしく、生き生きと演じています。

それから、尾崎豊を愛する男子高生・権藤を、ガレッジセールのゴリがシブーく(?)熱演。実年齢の半分しかない18歳の役に、最初は「どうよ??」と思いましたが、そんな事実は次第に気にならなくなってくるから、大したモノ。なんだかやる気のなさそうな代用教員の瀬沼役、薬師丸ひろ子もステキ。かつて主演映画の主題歌を歌ってはヒットを飛ばしていた彼女が、その頃と同じ透き通った、まさしく合唱部のような歌声で意外な曲を聞かせてくれるのも見どころ(聞きどころ)です。

当初、田中誠監督は合唱部分を吹き替える予定だったそうですが、かすみ率いる七浜高校合唱部も、権藤率いる湯の川学院高校合唱部も、結局、吹き替えナシ。「ハモった時の気持ちよさに気づいてしまった」とゴリが言うように、俳優陣の努力が見事なハーモニーを聞かせてくれます。

歌っていいよな。音楽っていいよな。そんな気分いいラスト・シーンでは、思わずあなたも歌を口ずさんでいるはず。私は見事にハマり、試写室を出る時に鼻歌を歌っていることに気づき、ちょっと赤面でした(笑)。

Movie080404_2 「うた魂(たま)♪」 4月5日(土)~、シネクイント他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.utatama.com
(c)2008「うた魂♪」製作委員会


Movie080404_3

「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」――1979年夏。田園風景が広がる平和な田舎町でママチャリ(市原隼人)は仲間たちと“イタズラ”を生きがいに楽しい毎日を送っていた。ところが、突然強敵が現れる。それは身長183cmの巨大な敵は国家権力を背負った公務員、新たに赴任してきた駐在さん(佐々木蔵之介)。なんと彼はイタズラされたらきっちりやり返すという、信じられない大人げなさで彼らの前に立ちはだかってきたのだ。おまけにママチャリたち憧れの、喫茶店に勤める町いちばんの美人(麻生久美子)は彼の奥さんだった。こうなったら負けるわけにはいかない。ママチャリたちと駐在さんのイタズラ大戦争の火ぶたが切って落とされた――!

ご存知の方も多いと思いますが、本作の原作は大人気のブログ小説。原作者・ママチャリさんの青春時代を小説にした、一部実話の物語です。30年前ではありますが、うらやましいほどバカバカしくて楽しい彼らの青春が、コミカルに生き生きと描かれています。

共通一次試験、インベーダーゲーム、口裂け女、ぶらさがり健康器……なつかしの流行モノや社会現象を背景に、「夢想花」「愛の水中花」「狼なんか怖くない」などなど、なつかしの歌をBGMに流してのイタズラの応酬。大マジメに頭をひねって作戦を考えるのですが、どのイタズラも決して他人を傷つけたり、不快にしたりはしません。今の世の陰湿なイタズラと違って、健康的ですらあるかも(健康的なイタズラって……笑)。

こんなバカバカしいことに、なんでここまでマジに……なんて思ったアナタは、ちょっとお疲れ気味かも。何も意味がなくても、どんなにバカバカしくっても、彼らは真剣。これだけ真剣に取り組む姿を見れば、それがたとえ何だって応援したくなってきます。

そして、青春時代らしく、イタズラと共にあるのは友情や恋、彼らなりに1本筋が通った意地。最後を飾る最大の作戦は感動的で、少しばかりジンワリ目頭が熱くなりました。

市原隼人くんたちママチャリ一味は合宿状態で撮影に臨んだそうですが、だからこそのピッタリ息のあったチームワークが、スクリーンいっぱいに繰り広げられます。このところ出演した映画やドラマが続々公開されてすっかりおなじみの佐々木蔵之介さんですが、この駐在役も大人げないのに懐が深くて、これまたイイんです。

そう、青春時代には一見ムダに見えることだって必要なのです。いえいえ、ムダだ、何だなんて、そんな議論こそムダ。花咲き誇る春に、彼らの青春を楽しんでください。

Movie080404_4 「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」 4月5日(土)~、シネマGAGA!他、全国公開
オフィシャルサイト http://bokuchu.gyao.jp
(c)2008「ぼくちゅう」PARTNERS

 
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2008-04-04 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

 
 
 
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