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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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正義の味方を喰ってしまう勢いの、時代を体現する敵役たち 「ノーカントリー」&「バンテージ・ポイント」

Movie080314_1

主人公は命懸けで法を守る正義の男――という映画は星の数ほどありますが、彼らをより盛り上げるのが、タフで強い敵役たち。今週は、そんな中でも特に不気味で恐ろしい敵役が登場する2本をご紹介します。彼らは恐ろしいだけでなく、存在そのものが「現代」という時代を表しているようで、映画から離れていろんなことを考えてしまいそうです。

「ノーカントリー」――メキシコとの国境に近いテキサスの砂漠で狩りをしていたモス(ジョシュ・ブローリン)は、偶然、トラック数台とそれを取り囲むような何体もの死体を見つける。荷台には現金200万ドルと大量のヘロインが残されていた。危険と知りつつ、人生を変えようと現金を持ち去ったモス。しかし、深夜、様子を見に現場に戻った時、追っ手の銃撃に遭い負傷してしまう。逃げ帰った彼は妻(ケリー・マクドナルド)を実家に帰し、現金を持って身を隠すことに。しかし、すでに消えた現金を取り戻すため組織が雇った殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)が、モスの行方を追い始めていた。一方、現場に駆けつけた保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、モスのトラックが残されていたことから、彼が巻き込まれたことに気づく。ベルもまたモスの行方を追い始めるが……。

先日のアカデミー賞で、見事主要4部門(作品・監督・助演男優・脚色賞)に輝いた本作が、いよいよ公開です。監督は、「バートン・フィンク」「ファーゴ」など個性的でスリリングな数々の作品を世に送り出してきたジョエル&イーサン・コーエン兄弟。2時間を超える長尺ですが、飽きさせることがありません。

先日のアカデミー賞予想でも少し書きましたが、とにかく圧倒的な存在感で物語を支配するのが、H・バルデム演じる殺し屋(“助演”というより、ほとんど“主演”という感じ)。「あいつの顔を見て生きてるヤツがいるのか」と言われるほど、スゴ腕の彼の仕事道具は銃でもナイフでもなく、なんと酸素ボンベ(のようなもの)。

さらに彼独特のポリシーがあって、「何もそんなことで殺さなくても……」という相手にも一切容赦はナシ。こうと決めたら、誰にも止めることは出来ないのです。そのゴツイ顔を飾る、内巻きのミョーにかわいいマッシュルームヘアが、不気味さをいや増します。

老保安官ベルは彼らを追いながら、犯罪組織に命を狙われているのに他人の金を離そうとしない男と、自分の邪魔をする人間を容赦なく排除していく男を理解できず、次第に無力感を覚えていきます。原題は、「NO COUNTRY FOR OLD MEN(年老いた=善良な男たちに住む場所はない)」。時代は変わり、人間と人間が起こす事件もすっかり変質してしまったのでしょうか?  

それにしても、ラテン系の濃い顔に好みは分かれるところですが、アカデミー賞授賞式で正装したH・バルデムはなかなかセクシーな2枚目ぶりで、シガー役を思い出すと余計にカッコよく見えてしまいました(笑)。

Movie080314_2 「ノーカントリー」 3月15日(土)~、日比谷シャンテ シネ他、全国公開
オフィシャルサイト http://nocountry.jp
(c)2007 Paramount Vantage, A PARAMOUNT PICTURES company, All Rights Reserved.


Movie080314_3

「バンテージ・ポイント」――スペイン・サラマンカにある広場には大群衆がつめかけていた。各国首脳が集まり開催されるテロ撲滅サミットの画期的構想を、アメリカ大統領アシュトン(ウィリアム・ハート)がスピーチすることになっているためだ。物々しい警備と各国報道陣が待ち受ける中、大統領が到着。護衛のシークレット・サービスの中にバーンズ(デニス・クエイド)がいた。1年前のアシュトン大統領狙撃事件で負傷した彼は、これが復帰後の初仕事。だが、神経過敏気味の彼に、周囲は不安の色を隠せない。唯一、復帰に力を貸した同僚テイラー(マシュー・フォックス)だけが味方だ。報道番組プロデューサーのブルックス(シガーニー・ウィーヴァー)や、アメリカ人旅行者ハワード(フォレスト・ウィッテカー)、非番の地元刑事エンリケ(エドゥアルド・ノリエガ)らが見守る中、壇上に立った大統領がスピーチを始めた時、一発の銃声が鳴り響く。崩れ落ちる大統領の姿にパニックとなった広場を、さらに爆発が襲い……。

各国首脳が集まってのテロ撲滅サミット開催など、現実を反映させたような設定で展開する本作の敵役である「テロリストたち」は、“殺し屋シガー”ほど超人的な個性派ではありませんが、逆にとってもリアルなのかもしれません。彼らは同じ主義主張を持つ者を敵陣営に送り込み、主義主張が異なる者でも必要な人材と判断すれば、弱みを握り、誘惑し、ありとあらゆる手段で計画に取り込むのです。その緻密な計画がジワジワと明らかになっていく過程はとってもスリリングです。

そのスリリングさを一層高めているのが、本作の特徴でもある、事件を見つめる様々な視点。大統領がホテルを出発し、広場で爆発が起こるまでの23分間を報道番組スタッフの視点、シークレット・サービスの視点、旅行者の視点、地元刑事の視点、そしてテロリストの視点など、なんと計8人分をひたすら繰り返すのです。まるでビデオを巻き戻すかのように(最近はDVDだから巻き戻しませんね・笑)何度も何度も“再生”するわけです。

もちろん居場所も見ているモノもそれぞれ違うので、まったく同じ映像ではないのですが、次第にイライラが(笑)。でも、それは作り手の思う壺にハマってしまった証拠。飢餓感にも似た感覚に襲われた頃、ようやく事態は24分目へ突入し、以降、クライマックスまで息つく間もない怒涛の展開が待っています。そして、少しずつ私たちに明かされていた事実がパズルのようにすべてピタリとはまった時、事件の全体が見えてくるのです。

エンタテインメントとして私たちを楽しませ、事件はちゃんと解決します。でも、テロリストが最後に残した一言にドキリ。「俺たちの戦いは、終わらない」。そう、今回は失敗したけれど、すぐそこに次が待っているぞ、と言わんばかりのテロがテロを呼ぶエンドレスな現実をまざまざと見せつけられたようで、ゾッ。

バーンズのような、法と正義を命懸けで守る人々がただテロリストを捕らえるだけでは、終わらない現実。この恐怖の連鎖は食い止められないのか。すっきりと解決したはずの物語を見終えた後、考えさせられてしまいました。

Movie080314_4 「バンテージ・ポイント」 サロンパス ルーブル丸の内他、全国で公開中
オフィシャルサイトhttp://sonypictures.jp
(c)2008 Columbia Pictures Industries, Inc. all rights reserved.

 
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2008-03-14 【映画】 | 固定リンク

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