真摯でピュアな想いがじわりと心を満たす 「君のためなら千回でも」

「君のためなら千回でも」――このタイトルを聞いたとき、てっきり恋愛物だと思ってしまったのですが、とんでもないカン違いでした。これは、真摯でピュアな2人の少年の友情と、ある願いが込められた物語なのです。
2000年のサンフランシスコ。アフガニスタンから父と2人でアメリカに亡命したアミール(ハリド・アブダラ)は、ささやかだが幸せな生活を送っていた。夢だった小説家としての第1作目が出版された日、アフガンにいる恩人ラヒム・ハーン(ショーン・トーブ)から電話が入る。余命わずかなハーンの願いはアミールに会うこと。いまだ政情不安なアフガン行きを心配する妻ソラヤ(アトッサ・レオーニ)を説得し、20年ぶりの故郷へ向かったアミールの脳裏には、封印していた少年時代の自分(ゼキリア・エブラヒミ)と親友だった使用人の子ハッサン(アフマド・ハーン・マフムードザダ)の記憶が甦っていた――。
身分や民族の違い(同じアフガニスタンでもアミールはパシュトゥーン人、ハッサンはハザーラ人)を超えて幼い頃からともに育った2人は兄弟同然。穏やかで平和な緑あふれる国アフガニスタンで凧を手に走り回る姿は、のびのびと楽しそうで笑みを誘われます。
凧はアフガンの伝統的な遊びで、糸にガラスを砕いたものを仕込み、2人1組で戦って糸を切った組が切られたほうの凧を獲ることができるそうです。アミールたちは無敵の強さを誇り、特にハッサンには、戦利品の凧がどこに落ちるのかを読む天才的な嗅覚がありました。アミールが無邪気に「ハッサン! 絶対獲ってきて!」と言えば、「君のためなら千回でも!」と答えて走り出すハッサン。2人の信頼はゆるぎないものだったのです。
そんな彼らを引き裂いたのは、ハッサンを襲った差別による心ない事件と、それを見ないふりをして逃げてしまったアミールの少し足りなかった勇気。卑怯な自分を隠すためにアミールが1度ついた嘘はどんどん膨れ上がり、耐え切れなくなった彼はさらに嘘を重ねます。それがハッサンを遠ざけることになっても、止めることはできないのです。
年を経てオトナになった今なら、「そんな嘘はつかなかったのに」と思うような嘘。誰しも、覚えがあるのではないでしょうか。初めは小さな嘘だったのに、嘘が嘘を呼んでがんじがらめになってしまったことが。苦い悔いを抱えて成長したアミールの姿に、ふと自分の姿を見たような気がしてきます。
映画というフィクションではありますが、そこに暮らす1人1人の姿を丁寧に描くことで浮かび上がる現実があります。美しい友情と果てることのない争い。でも、どちらも同じ、人間の持つ感情から生まれているのです。どうしたら、すべての子供たちが笑って暮らせる平和な世界になるのか。そんなたいそうな力は私にはありませんが、誰もがそれを心に留めておくことで、もしかしたら世界は少しずつ変わっていくのかもしれません。
「君のためなら千回でも」 恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座他、全国公開中
オフィシャルサイト http://www.kimisen.jp
(c)2007 DreamWorks LLC and Kite Runner Holdings, LLC. All Rights Reserved.
今年は誰? アカデミー賞予想(2)

<写真左>トミー・リー・ジョーンズ 主演男優賞ノミネート 「告発のとき」より
(c)2006 Elah Finance V.O.F.
<写真右>マリオン・コティヤール 主演女優賞ノミネート 「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」より
(c)2007 LEGEND-TF1 INTERNATIONAL-TF1 FILMS PRODUCTION OKKO PRODUCTION s.r.o.-SONGBIRD PICTURES LIMITED
アカデミー賞 オフィシャルサイト http://www.oscar.com
今週は、主演男優賞&主演女優賞ノミネートをご紹介します。先にお断りしておきますが、今年の予想は「一か八か」になってまいりました。実はインフルエンザに罹ってしまい、ほとんど試写に出かけられませんでした(涙)。そんな状況ですので、予想理由にお腹立ちになりませんよう、くれぐれもお願い申し上げます(※タイトルの後は日本公開予定)。
<主演男優賞>
ダニエル・デイ=ルイス 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(4月公開)
ジョニー・デップ 「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(公開中)
ヴィゴ・モーテンセン 「Eastern Promises」(初夏公開)
ジョージ・クルーニー 「フィクサー」(4月公開)
トミー・リー・ジョーンズ 「告発のとき」(初夏公開)
どうでもいいことですが、D・D・ルイス以外は宣伝マン時代に全員の作品を担当し、取材でお会いしたことがあります。なんだか嬉しいです(笑)。V・モーテンセンだけ初ノミネートというベテランぞろい。今回、T・L・ジョーンズは、作品賞他最多8部門ノミネートの「ノーカントリー」(「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も8部門)にも主演。ノミネートは「告発のとき」ですが、2本あわせ技でクビ1つのリードか。缶コーヒーのCMの出稼ぎ異星人キャラもかわいいですが、地味でシブイ役柄をきっちり決める実力派です。
<主演女優賞>
ジュリー・クリスティ 「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」(初夏公開)
マリオン・コティヤール 「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」(公開中)
エレン・ペイジ 「JUNO/ジュノ」(初夏公開)
ケイト・ブランシェット 「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(2月16日公開)
ローラ・リニー 「The Savages」(公開未定)
助演女優賞とWノミネートのC・ブランシェットは、前作「エリザベス」に続いて同役でノミネート。今回のエリザベスは、恋に悩み、スペインの無敵艦隊と戦わなければならない激動の時を迎えます。普段は華やかにセットしたかつらをつけた彼女。それを取り去った時の少年のようなざんぎり頭があまりに無垢で、胸を衝かれます。それにしても、イギリス人はエリザベス1世が好きなんですねえ(笑)。でも、本命はこちらも実在の人物を演じたM・コティヤールでしょうか。
さて、みなさんの予想はいかがですか? 来週は、監督賞&作品賞です。
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2008-02-15 【映画】 | 固定リンク
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