あこがれは時に殺意を招く?──『ジェシー・ジェームズの暗殺』

誰にでも「あの人みたいになりたい!」という、“あこがれの人”がいると思う。そして、できるものなら、その人とお近づきになって「もっと彼(彼女)を知りたい」と、思うのではないだろうか。
ただ、実際の相手が自分の思い描いていた人物と違った場合はどうだろう。魅力的な部分もあるけれど、許せない部分もある。だったら「相手を嫌いになる」で済めば問題ないけれど、崇拝していればいるほど、そう簡単に割り切れるものじゃない。
さらに、相手の弱みを身近で見てしまったことで、「だったら私だって、彼(彼女)に取って代われるのでは?」という欲まで出てくるかもしれない。
この映画『ジェシー・ジェームズの暗殺』の、ジェシー・ジェームズ(ブラッド・ピット)とロバート・フォード(ケイシー・アフレック)のように。
舞台は1880年代のアメリカ。ジェシー・ジェームズとロバート・フォードは、実在の人物だ。ジェシーは、窃盗団を率いて25件以上の強盗と17件の殺人を犯した重罪人のお尋ね者であるにもかかわらず、人々から権力に刃向かうアウトローとして称えられた伝説の男。一方、ロバートは、ジェシーの手下でありながら彼を背中から撃ち殺したとされる、アメリカ一の卑怯者と人々から蔑まれた男。
その「撃ち殺したらしい」という結果から憶測して、単に“ヒーローと卑怯者”として語り継がれている。けれども、誰よりもジェシーを崇拝していたロバートが、ジェシーの背中へ銃口を向けるに至るまでには、ひと言では言い表せない感情の荒波を体験したはず。「あこがれが殺意へと変わる」ロバートのその荒波は、何ゆえに起こったのか? 2人の男の間には、いったい何があったのか? といった、2人の感情の変遷が、本作では映しだされてゆく。
ここまで読んでくださった方は、もうお気づきだとは思うけど、銃を持ち馬にまたがる窃盗団の話とはいえ、いわゆる西部劇とは異なる、心理ドラマといった趣。それも、かなりサスペンスフルな心理ドラマになっているのがポイント。
なにしろ、ジェシーになりきるブラピに、まず魅せられる。カリスマ性があって、つかみどころがない。彼の内面に少し近づけたかな、と思ったら、次の瞬間にはこちらを威圧する。かと思えば、すごく痛々しい孤独な表情を見せたりもする。ベネチア国際映画祭の最優秀男優賞受賞も納得の、複雑だけど魅力的なジェシー像をみせてくれるのだ。もちろん、見た目もカッコいいしね。
さらに、ロバート役のケイシーも、ブラピに負けない迫真演技で応える。ジェシーというヒーローにあこがれる、おどおどした無垢な部分と、ジェシーに信頼されたことで顔を出す自惚れや強がり。そして、ジェシーと過ごすことで味わう、崇拝、失望、ジェラシー、怒りなどの感情の変化を、ケイシーが生々しく体感させるのだ。こちらも、ゴールデン・グローブ賞助演男優賞ノミネートをはじめ、各賞レースで大本命と言われている名演ぶり。
そんな2人のやり取りから感情の変化を読み取り、心のあやをひも解く、ヘタな犯人当てサスペンスより、よっぽどミステリアスで緊迫感のある心理劇だ。
加えて、『ショーシャンクの空に』『クンドゥン』『バーバー』をはじめ、アカデミー賞に5回もノミネートされた、名匠ロジャー・ディーキンズによる、2人の心の動きをも描写する詩的で美しい映像も見ものですよ。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』 1月12日(土)~丸の内プラゼールほか全国公開
オフィシャルサイトhttp://wwws.warnerbros.co.jp/assassinationofjessejames/
(c) 2008 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
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2008-01-11 【映画】 | 固定リンク
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トラックバック送信日 2008/02/06 20:12:13

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