ゴッド・ハンドが愛と笑いと感動をもたらす!?──『やわらかい手』

ときに、ピンチがチャンスに変わる場合がある。窮地に立たされたとき、ふだんの自分だったら選択しないようなことに思いきってチャレンジしてみると、道が拓けることもあるのだ。
映画で言えば、失業中、または悩める中年オヤジたちが生活向上のためストリッパーを目指す『フル・モンティ』(97年)とか、傷心の親友を励ますため、婦人会のおばさま方が自ら一肌脱いでヌード・カレンダーを作る『カレンダー・ガールズ』(03年)とか。どちらもイギリス映画なのだが、ギョッとするようなちょいエロ・テーマを心地いい笑いと感動に変えてしまうのが、じつに上手い。そして今回とりあげる、同じくイギリスが舞台の『やわらかい手』も、まさにそんな映画のひとつなのだ。
ロンドン郊外の小さな町に暮らすマギー(マリアンヌ・フェイスフル)は、夫に先立たれ、息子も独立した今や、孫だけが生きがいの中年主婦。だが、その孫は難病を患っていて、手術を受けないと命が危ない状態。しかも、手術には大金がいる。そこでマギーは、最愛の孫のために費用を調達すべく職探しを始めるのだ。とはいえ、経験も資格もない身。手術費をまかなえるほどの収入を得られる仕事先が、そう簡単に見つかるわけはない。
そんな切羽詰まった彼女の目に飛び込んできたのが、あるセックスショップの「接客係募集」の張り紙だった。こんなおばさんだから、どうせ裏方の仕事だろうと思ったら、なんと「手」を使って男たちを昇天させる「接客係」!! 男たちは急所部分に丸い穴の空いた壁の向こう側にいるので、直接顔を合わせる必要はないが、やはりフツーの主婦には抵抗がある仕事。だが、孫の手術は待っちゃくれない、と覚悟を決めるマギー。もちろん、ヤルからには本気で取り組む。その努力と資質の甲斐あって、たちまち行列ができるほどの人気者になってゆくのだが…。
マギーは口数も多くはないし、淡々としているんだけど、内面からにじみ出す品の良さとユーモア・センスがある。だからか、“風俗店なんて”という偏見や、“孫のためにカンバってます”という湿っぽさを感じさせないのが魅力。
なにしろ、最初は見知らぬ男たちのアソコを触るなんて、と目を白黒させていたのが、一度「こう」と決めた女は強し。殺風景な仕事部屋を花や小物で飾りつけ、「さぁヤルぞ!」とエプロンを締めて、前向きに仕事に臨んでゆく。そんなマギーの姿が、なんともチャーミングで痛快。さらに、みるみる人気を獲得する「天性のゴッド・ハンドの持ち主だった!」というのだからケッサクだ。
その中年主婦マギーを演じるのは、60年代に一世を風靡し、ドラッグ中毒でどん底に陥るも立ち直り、いまだ現役の歌姫マリアンヌ・フェイスフル。あのミック・ジャガーをはじめ世の男性諸氏をメロメロにし、「ルパン三世」の峰不二子のモデルとも言われる女性だ。女優としても、近作では『インティマシー/親密』や『マリー・アントワネット』などにも出演している。
マギーが放つ「品」と「キモの座り具合」は、まさに酸いも甘いも噛みわけてきたマリアンヌならでは。しかも、ただ逞しいだけじゃなく、本当に「可愛い女性」としてマギーを魅せてくれる。おまけに、孫を助けるためだけのドラマでは終わらない、艶っぽさのあるイキなエピソードまで用意されている。
いくつになっても女は現役、いくつになっても可憐かつタフであれ。マリアンヌだからというのではなく、同じ女としてこの心意気は見習いたいもんです。
『やわらかい手』 12月8日(土)~Bunkamura ル・シネマにて公開、以下順次
オフィシャルサイト http://www.irina-palm.jp/
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2007-12-07 【映画】 | 固定リンク
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