孤独=自分と向き合えば、生き残れる?──『アイ・アム・レジェンド』

もし自分が「人類最後の1人」という事態になったら、どうするだろう? いくら、ふだん人間関係が煩わしいと言ったって、話しかける相手もいない、答えてくれる人もいない、では…。そんな状況を想像するだけでも、恐ろしい。それが、リチャード・マシスンの同名小説を映画化した、この『アイ・アム・レジェンド』なのだ。
映画は、あの活気と喧噪にあふれた姿はどこへやら、建物は朽ちかけ、死んだように静まり返った2012年のニューヨークの風景から幕を開ける。道には廃車が乱雑に放置されている。「いったい何が起こったのか?」と頭をめぐらせていると、障害物を巧みに避け通りを走り抜ける、1台の真っ赤なマスタングが姿を現す。乗っているのは、ロバート・ネビル(ウィル・スミス)と愛犬のサム(アビー)。この1人と1匹は、3年間、お互いだけを頼りに暮らしてきた。
さかのぼること3年前の2009年。現代人がもっとも恐れる病・ガンの特効薬として開発されたウイルスが、皮肉にも人類を破滅へと追いやったのだ。ネビルは破滅を食い止めるために駆り出された有能な科学者だったが、ウイルスの威力はそれ以上だった。けれども、定めか、試練か、彼だけは感染しない特殊体質で、人類最後の1人として生き残る。
そして始まる、気が遠くなるような孤独との闘い。さらに、人類の絶滅と引き換えに出現した、日が沈むと蠢きだす“ヤツら”がいる。そんな絶望的な現実を、いかにしてサバイブしていくのか、が映しだされてゆく。
もちろん、“ヤツら”が何物で、どうやって1人で立ち向かうのか、も気になるところ。たしかに、緊張感とスリルたっぷりに描かれてもいる。ただ、この映画ほど大作感はなくとも、似たタイプの映画は以前にも見たことがある。
それ以上に、本作に引き込ませるのが、冒頭でも言った「孤独感」だ。詳しい説明もなく、寂れた人気のないニューヨークにポンと放り込まれる。「自分だったら何をする?」と思わずにはいられない。劇中、ネビルは毎日、メッセージを無線放送する。「私の名はロバート・ネビル。ニューヨークで生き残っている。もし誰か聞いているなら、応えてほしい」と──。
「きっと私も彼と同じように生存者を捜すだろう、でも3年もなんて耐えられるだろうか?」と、つねにネビルと行動を共にしているような、自分が彼の立場だったらと考えずにはいられない。まさに、体感度満点のリアルなシミュレーション。
また、興味深い点も多々あり、例えば「働かなくてすむのなら働きたくない」というのが人情(私情かな?)なのに、ネビルはとっても規律正しいストイックな暮らしを送っている。その姿を見て、人って「やるべきこと」があるから生きていられるのかも、と思わされたり。あるいは、どんな苛酷な状況の中でも、例えば航空母艦の上でのゴルフや、DVDショップ内のマネキン美女への恋心などの“お楽しみ”を生み出せるタフさに感心したり。あるいは、ネビルを勇気づけるのにボブ・マーリィの曲が印象的に使われる様を見て、音楽の力をあらためて痛感したり。
もしかしたら、誰か生存者がいるかもしれないという、ささやかな「希望」と、最愛の人すら救えなかったという「後悔の念」が、ネビルを前へと突き動かす。その姿は、感動的ですらある。
そんな孤独や恐怖、葛藤をほとんどセリフがないにもかかわらず、しぐさや表情でリアルに味あわせる、ウィル・スミスの演技が絶妙。さらに、彼の言葉に聞き入り、抜群の返しをみせる愛犬サム役のアビーちゃんの名演も見ものですよ。
『アイ・アム・レジェンド』 12月14日(金)~サロンパス ルーブル丸の内ほか全国にて公開
オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/iamlegend/
(c) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
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2007-12-14 【映画】 | 固定リンク
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