ド派手な中にも隠し味の効いた和製西部劇──『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』
ブラッド・ピットの新作『The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford』も、ラッセル・クロウの新作『3:10 to Yuma』も、どっちも共に西部劇。もしかして、これは、西部劇ブーム再来の兆し? と思っていたら、我が国の三池崇史監督の最新作も西部劇だ! しかも、ハリウッド産のウエスタンではなく、おもしろければ何でもアリの“マカロニ・ウエスタン”にオマージュを捧げた“和製ウエスタン”。過激バイオレンス『殺し屋1』から、ミュージカル『カタクリ家の幸福』に、おじさんヒーロー『ゼブラーマン』まで、何でもござれの三池流“マカロニ”が、この『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』なのである。
舞台となるのは、壇ノ浦の戦いから数百年後の寒村“湯田(ユタ)”。黄金が埋まっているというウワサを聞きつけてやって来た、平清盛(佐藤浩市)率いる平家ギャングと源義経(伊勢谷友介)率いる源氏ギャングが、隙あらば敵の命を頂戴し、お宝を独り占めしようと睨み合う。住処を乗っ取られた村人たちは、生きた心地がしない。そんな物騒なところに、流れ者の凄腕ガンマン(伊藤英明)がやって来る。このガンマンを味方につけた方が勝ち、と踏んだ両ギャング団は彼を抱き込もうとするのだが…。金のため、エゴのため、復讐のため、そして愛のための、血で血を洗う壮絶な戦いが繰り広げられてゆく。
冒頭、銃のホルスターに箸入れまで付いているクエンティン・タランティーノ演じる、スキヤキ作りの達人でもある早撃ちガンマンに導かれる“スキヤキ・ウエスタンの世界”は、ウエスタンと時代劇が同居したような舞台で、赤い出で立ちの平家ギャングと白い格好の源氏ギャングが、なんと全編英語でののしり合う。単なる和製というのではない、まさに和洋折衷、美味しそうなら何でも試すゾの新テイスト。
しかも、ちょい役&脇役まで豪華メンツがそろったキャストがスゴイ。なかでも、クールで冷酷、加えて神秘的で目を奪われる伊勢谷くんと、ただのオバさんに見えてじつは伝説の女ガンマンなんです、という難役を体当たりでこなした桃井かおり姐さんのカッコよさが光る。また、ダンナのアキラ(小栗旬)を清盛に殺され、義経のオンナになってまで復讐を誓う木村佳乃の妖艶な演技にも注目。
ただ、独裁的でしたたかな清盛役の佐藤浩市と、紅白どっちのご機嫌も取るコウモリ男な“保安官”役の香川照之、両者は怪演してるんだけど、かなり周りから浮いているのでノレない人もいるかも。これまでも“三池映画の笑い”はブッ飛んでるから万人受けするものではなかったんだけど、今回、アクションに力を入れ込みすぎたからなのか、悪天候に祟られ撮影疲れが出たせいなのか、笑いにキレがないのが残念。
とはいえ、伊藤さんのガンさばきや伊勢谷くんの流麗な刀使いをはじめ、迫力があって、なおかつ美しいアクションは、マジで素晴らしい。おまけにヴィジュアルは、さすがハリウッドでも名が知られた栗田豊道(ロバート・アルトマン作品など)撮影監督、これぞ映画でしょうと言いたくなる、壮大でありながらも情感のあるドラマチックな映像美なのだ。これは大画面で体験しなくちゃもったいない。
さらに極めつけが、ドンパチ映画だけでは終わらないドラマ性。父のアキラを目前で殺され口が聞けなくなった少年、平八(内田流果)が、甘やかしは一切なしだけど深い愛に支えられ、苛酷すぎる現実から逃避するのを止め、現実を受けとめてゆく姿。そしてエンディングにかかる、北島三郎によるコブシ回しも絶好調のマカロニ主題歌の日本語カヴァー曲が胸にジ~ンと響きわたる。(私は女だから気分だけだけど)まさに男泣きってかんじで目頭が熱くなる力作です。
『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』 9月15日(土)~渋谷東急ほか全国公開
オフィシャルサイト http://django-movie.com/main.html
(c)2007 Sukiyaki Western Django film partners
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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2007-09-14 【映画】 | 固定リンク
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