夢を追うアナタに贈る──『ミス・ポター』
アーティストが生みだす作品を観たり読んだり聴いたりして、私たちは作り手がいったいどんな人なんだろう、と想像をめぐらす。そして、興味を覚えたアーティストに関する書物や映像に触れ、やっぱり思ったとおりだったとほくそ笑んだり、意外な一面を知り驚いたり…。
では、イギリスを代表する人気者で、長きにわたって世界中で愛されている“ピーターラビット(R)”の生みの親、ビアトリクス・ポター(TM)とは、どんな人物だったのだろうか? を描いているのが、この『ミス・ポター』。
ビアトリクス・ポター(1866-1943年)は、裕福な家のお嬢さまとして生まれながらも、安穏とした生活に流されず童話作家になる夢を実現した女性。大好きな小動物を主人公にして、ピーターラビットと仲間たちの物語を描き、23冊の絵本にして遺したアーティスト。そして晩年は、愛着のある湖水地方の自然を守るため、広大な土地を買い取り、自然と共に生きた人でもある。そういったプロフィールは知っていても、正直どんな人なのかは知らないに等しい。
本作では、ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)の作品が本になって世に出てゆく過程を描きつつ、彼女の担当編集者で一番の理解者でもあるノーマン・ウォーン(ユアン・マクレガー)との身分違いの恋、さらには彼女が味わう人生最大の悲劇、そしてその傷心を包みこんでくれる、自然美あふれる湖水地方で暮らし始めるまでの半生が映しだされてゆく。
といっても、著名なアーティストの足跡を追う単なる伝記映画という作りではなく、ビアトリクスの人間性にスポットを当てているのがポイント。なかでもアーティストとしての彼女を支え、彼女の人生に多大な影響を与えるノーマンとの関係は、まるで純愛ロマンス映画のよう。
なにしろ、「きっと私は生涯独身で絵を描きつづけるんだろう」と覚悟を決めた女性の前に、夢を後押ししてくれる心惹かれる理想の人が現れるなんて、まさにシンデレラ・ストーリーでしょう。もちろん、現実は甘いだけじゃあ終わらないし、ユアンが演じるノーマンは“白馬に乗った王子”というより“馬に振り回される純朴青年”ってかんじではあるんだけど。それでも、心と心の通い合いがスクリーンから伝わってくるほどの“お互いへの深い思い”には、やはり魅せられる。
そして夢見がちな乙女の部分と、繊細ながらも芯は強い女の部分が同居している、ビアトリクスの人としての魅力。乙女で、繊細で、穏やかなのに根性が座ってる、その人柄や行動力は、“いま”の私たちから見てもステキに映ると思う。しかも、今から100年以上も前。女は結婚するまでは親に従い、結婚後は夫に従え、という時代だ。そんな“意志を持つ女性”にとっては、ものすごく生きにくい世の中で、世間の風潮や親の意見に振り回されず“自分らしく”生きることは並大抵のことではないはずなのに、彼女は笑顔で「ただ好きだから」と夢を叶えてゆく。そんなビアトリクスに、なによりも心惹かれるのは私だけではないと思う。いくら食べるのに困らないとはいえ、彼女の絵本作家デビューは30歳半ば。湖水地方を守ると決意した第2の夢なんて、40を越えてからだ。何かをやりたい! という気持ちに年齢なんて関係ないんだよね、きっと。なんてったって、ビアトリクスはそれを実践したのだから。
『ミス・ポター』 9月15日(土)~日劇3ほか全国東宝洋画系にて公開
オフィシャルサイト http://www.excite.co.jp/cinema/miss-potter/
(c)F.W 07
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2007-09-07 【映画】 | 固定リンク
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