女のコのためのおしゃれ映画──DVD『ひなぎく』

長らく廃盤だった、女のコなら(もちろん、かつて女のコだった人も)きっと気に入ると思うガーリー・ムービーの傑作『ひなぎく』が、手の出るお値段(税込3,990円)で再発売される。初DVD化のとき、なんと6,090円も出して買った身としては、少々複雑な気分ではあるんだけど、やはり自分の好きな映画が広まるのは喜ばしいことなので、よしとしよう。
主人公は、2人の女のコ。ひなぎくの花輪を乗せた金髪のボブがチャームポイントの姉と、うさぎの耳結びにしたブラウン・ヘアがキュートな妹。とはいえ、2人はつねに気まぐれ、すべて冗談めかしてしゃべるので、姉妹というのもウソかもしれない。「誰もわかってくれない」「やることなすこと失敗ばかり」「それでも、駄目でも、けっこう!」という彼女たち。分別のあるオトナは彼女たちを無視し、寄ってくるのはスケベ心まるだしのおじさんだけ。だったら好き勝手にやってやる、とばかりに、おしゃれして、お化粧もキメて、高級ナイトクラブで酔っ払ってバカ騒ぎ、エロおじさんたちには食事だけさんざんおごらせておいて“はい、さようなら~”。そんな彼女たちの、ウソとイタズラと反逆心に満ち満ちた“やりたい放題ライフ”が描かれてゆく。
まず驚くのが、1966年にチェコで作られた映画であるにもかかわらず、いま見てもまったく古さを感じさせないということ。とくに、彼女たちの2ショットは、エッジの効いたファッション誌のグラビアやポスターになってもおかしくないくらい、独創的でありながら可愛さもある場面ばかり。
もちろん、彼女たちのファッションも見もので、現代でも有効なAラインの色違い・柄違いワンピをはじめ、クラシックな感じが逆に新鮮でキュートなビキニやインナー、スカーフ等の小物使いなど、すべてがおしゃれでキュート! もう、見てるだけでも楽しくなってくる。
さらに、彼女たちが暮らす部屋のインテリアにも注目。大きい葉っぱや押し花で壁を飾りつけたり、雑誌を切り抜いて写真や文字をコラージュしてディスプレイしたり、青リンゴや大ビン入りピクルスをオブジェに見立てたり…といったセンスは、まさに“いただき!”ってかんじ。
加えて、明確なストーリーがない分、映像で遊び心を発揮。モノクロとカラーの使い分けにとどまらず、フィルムを着色した紫、セピア、グレー、ピンクなどの色のマジックに始まり、場つなぎには花・蝶・ネジなどの画を挿入し、ポップアートっぽいヴィジュアルになっているのだ。
ソフィア・コッポラ(『ヴァージン・スーサイズ』『マリー・アントワネット』)や『アメリ』の雰囲気が好きな人なら、確実にハマると思う。
そうした見た目だけでも存分に楽しめる映画ではあるんだけど、ただの“女のコの悪ふざけ映画”では終わっていないのもポイント。「どうして男は愛してるとしか言えないの?」と単純で意外性のない男を嘆き、「私たちに何が欠けてるの?」と周りから無視されることに恐怖を覚え、「人生は通り過ぎていく」こともわかっている。それでも「何かしなくっちゃね」と、不安や憂鬱を高らかに笑い飛ばし、イタズラ遊びを繰り返す。そんな2人を淋しいと見るか、小気味いいと見るか、は観る人しだい。でも、世の中に「死ね死ね死ね」とうそぶきながらも、つねにお腹を空かせて食べ物を求めている(=じつは生に貪欲な)彼女たちの生き生きとした姿に魅せられるのは私だけではないだろう。
そして、クライマックスで女性監督ヴェラ・ヒティロヴァーが私たち観客に問う、「破壊されたものを元に戻すことはできるのか?」を受けて、もう一度はじめから見直すと、また違った見かたができる、意外と奥が深い映画でもあるんです。
『ひなぎく』
ダゲレオ出版(Tel.03-5766-1119)より発売
(c) FIMEXPORT PRAGUE DISTRIBUTION s.r.o.
オフィシャルサイト
http://www.imageforum.co.jp/hinagiku/
◎9月21日発売/3,990円(税込)
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2007-09-21 【映画】 | 固定リンク
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コメント
私はソフィアさんが大好きで、とくにヴァージンスーサイズが大好きなんです。 だから、ガーリー、好きです。なんか写真みただけでも、絶対いいだろうな。っていうのがつたわってきます。
投稿: 伊丹 | 2007/09/22 14:02:21