イケないオトナの心理とは?──『リトル・チルドレン』
「アナタはしあわせですか?」と訊かれて、何のためらいもなく「ハイ!」と答えられる人は、いったいどれくらいいるのだろうか。人間には現状に満足できない、“もっともっと”という欲望や、“もし違う道を選んでいたら…”という迷いがあるから、なかなか現実をありのままには受け入れられない。しかも、かなりハメを外した生活をしている人でない限り、日常というのはそれほど刺激的なものじゃない。
そんな心の内に潜む衝動的欲求に突き動かされ、イケないことをしてしまう迷える大人たちのお話が、この『リトル・チルドレン』。現代のチェーホフと言われるトム・ペロッタのベストセラー小説を、『イン・ザ・ベッドルーム』のトッド・フィールド監督が映画化した作品だ。
新居を買い、ボストン郊外に引っ越して来たサラ(ケイト・ウィンスレット)は、経済力のあるマジメな夫と3歳のカワイイ娘に恵まれた主婦。一見、何不自由のない幸せな日々を送っているように見えるけど、なぜか満たされない。公園に行っても、他のママさんたちは子どもの話か、ダンナとのマンネリHの話ばかりで実りナシ。ただひとり、そんなサラの心を捕らえるのが、ママ連中のあこがれの的である通称“プロム・キング”ことブラッド(パトリック・ウィルソン)。美人で仕事のできる妻キャシー(ジェニファー・コネリー)に代わって、主夫をしながら司法試験を目指すハンサムなパパさんだ。他のママさんたちから浮いてる2人は、すぐに意気投合。とはいえ、互いに家庭のある身。最初は分別あるお付き合いを心がけていたのだが、抑えていた内なる欲望が騒ぎだし…。そして、そんな2人の恋か情事か、の関係と共に、罪を償い街に戻って来た性犯罪者ロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)と周りの反応が描かれてゆく。
もしワタシがサラの立場だったら、同じような行動を取るのかなあ? 恋人がキャシーのように完璧すぎる人だったら、やっぱりブラッドのように息苦しくなって逃げ出したくなるかな? などなど、登場人物たちの心理を、ついつい自分に置き換えて見てしまうのが、この映画のおもしろさ。
ここに出てくる人たちは、褒められた人たちじゃないし、むしろ弱い人たちだ。それでも、満たしてくれるものを探している。たとえ間違った方向に突っ走っちゃったとしても、人生をあきらめてはいない人たち。そんな人たちの感情の揺れや心理をていねいに、ユーモアを交えて見せてくれるから、彼らに親近感を覚えるし、先述したように“もし自分だったら…”と考えてしまうのだ。
そして、そうした人間心理を、さらに興味深いものにしているのが、ロニーの存在。まあ、得体の知れない元犯罪者が戻って来る、と聞けば劇中の住人たちと同じように脅威を感じて、追い出したくもなるだろう。ベタなサスペンスよりもスリリングなロニーの予測不可能な行動には否応なしに引き込まれてしまい、目が離せない。
答えを押しつけるのでも、ただ投げかけるだけでもなく、一緒に考える楽しみがある。リアルだけど愛しい、シリアスなのにユーモラスな人間ドラマ。
『リトル・チルドレン』 7月28日(土)~Bunkamuraル・シネマ、シャンテシネほか全国公開
オフィシャルサイト http://www.little-children.net/
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2007-07-26 【映画】 | 固定リンク
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