子供たちをとおして自分を見つめ直す──『それでも生きる子供たちへ』
今週から加藤アカネさんのピンチヒッターをつとめさせていただきます大塚と申します! 期間限定のお付き合いではありますが、どうぞよろしくお願いします。記念すべき第1回は、名だたる監督たちが参加した豪華なオムニバス映画をお届けします。
長年、オンナをやっていると「子供は好き?」と訊かれることが度々ある。その都度、答えに窮してしまうのは私だけだろうか? なぜ、誰も「大人は好き?」とは訊かないのに、子供は十把ひとからげにされてしまうのだろう? それぞれ個性も性格も違うはずなのに…。この『それでも生きる子供たちへ』(All the Invisible Children)は、そんな"Invisible Children(見えない子供たち)"の"個"を尊び、子供たちの姿をとおして「で、アナタはしっかり生きてるの?」と問いかけてくる作品なのである。では、その個性と魅力にあふれまくった子供たち一人一人を紹介していこう。
「タンザ」(メディ・カレフ監督作/ルワンダ<アフリカ>)
僕はマシンガンを抱えた一人前の少年兵。でも、僕の一番の自慢は、このスニーカーなんだ
タンザは、当たり前のようにゲリラ部隊に入隊させられ、不似合いな銃を握りしめ野山に入る12歳の少年兵。無邪気に仲間たちとじゃれ合いながらも、敵に遭遇すると容赦なく発砲する。くたびれたスニーカーを片時も脱がず大切に扱う少年タンザが、何のためらいもなく発砲する…。淡々と描かれる少年たちの姿の裏に、無垢な魂を悪用する大人の存在が見え隠れし、タンザの澄んだ瞳が言葉以上に心を打つ、せつない作品。
「ブルー・ジプシー」(エミール・クストリッツァ監督作/セルビア・モンテネグロ)
僕の一家は窃盗団。いま少年院にいる僕の夢は、理髪店で働くこと。でも、シャバに出たら、また…
15歳のマルヤンが入っている少年院は、私たちが想像する陰鬱な所とはまったく違って、ハイテンションな所員が歌って場を盛り上げ、悪ガキたちも伸び伸びと過ごす快適な所。マルヤンにとっては、親に盗みを強いられる外の世界より塀の中の方が自由、という事実にまず衝撃を受ける。そんな環境下でもタフに生き抜くマルヤンの笑顔に救われ、出所した後のトンデモ行動に拍手を贈りたくなる、音楽とパッションにあふれた痛快作。
「アメリカのイエスの子ら」(スパイク・リー監督作/アメリカ)
パパもママも大好きだけど毎日薬を飲まされるのはイヤ。「ママ、ワタシはエイズなの?」
ローティーンのブランカは、純然たる犠牲者といえるかもしれない。彼女のことは愛しているのに麻薬は止められない、心の弱い両親のせいでHIVに感染してしまったのだから。ここでは、同級生やその親からの心ない偏見にさらされながらも、ブランカがいかにして現実を受け入れていくのか、がポイント。彼女の凛とした表情を見ていると、こっちまで気持ちがシャンとしてくるから不思議。
「ビルーとジョアン」(カティア・ルンド監督作/ブラジル)
僕と妹のビルーは廃品を集めて家計を助ける。僕たちは楽しみながら仕事をする天才なのさ
私は、空き缶拾いや段ボール集めを、これほど楽しそうに、そして誇りを持って、行っているジョアンとビルーのような兄妹を見たことがない。実際、演じた2人も同じような生活をしているという。堂々としていて、年上の少年たちに妨害されてもヘコたれず、アクシデントでさえ創造力で乗り切ってしまう。この大人にはない柔軟さはアッパレ! そんな才能を称えつつ、彼らの未来を案じるラスト・シーンも印象的。
「ジョナサン」(ジョーダン・スコット&リドリー・スコット監督作/イギリス)
生きることにつまずいたら、一番楽しかった子供時代に戻ってごらん。ヒントが見つかるから
7作品の中で唯一、大人が主役のファンタジー。人生と仕事に息詰まった戦争カメラマン、ジョナサンが森を散策中に少年時代の仲間に呼ばれ、自分もみるみる少年に戻り、不思議な探検をする幻想的な1本。巨匠の父と娘がコラボした話題作であり、娘ジョーダンの繊細さが前面に出ている点も見もの。戦火の中でも遊びを生み出せる逞しき子供たちが、疲れた大人をも童心に返らせ、じんわり癒してゆく展開が興味深い。
「チロ」(ステファノ・ヴィネルッソ監督作/イタリア)
僕は仲間と街で金持ちから高級品を盗んで生活してる。警官に追っかけられるのなんて年中さ
少年チロは、白昼堂々のかっぱらいもへっちゃら、窃盗団のボスと交渉だってしちゃうツワモノ。でも、どんなにクールぶってても、両親の言い争っている声を聞けば憂鬱になるし、孤独も感じる…。こちらもナポリの街角にいる本物の子供たちを起用し、リアルな現実を美しい映像で見せてゆく。なかでも、チロ役の少年のヤンチャな表情と大人びた憂い顔、そして子供とは思えないセクシーさには魅せられます。
「桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)」(ジョン・ウー監督作/中国)
お金はあるけど両親はいがみ合い、私のことはほったらかし、貧乏だけど私には私を拾ってくれた優しいおじいさんがいる
そしてトリを飾るのは、詩的な映像美と(いい意味で)浪花節なストーリー展開で観客を感動させるジョン・ウーの作品。今回も、自分のことで精一杯の親に相手にされない令嬢、桑桑の孤独と、貧しくても幸せだった孤児の子猫に"こんなことが!?"な悲劇をシンクロさせ、泣かせてくれます。とくに、大人だったらとっくにやさぐれてる環境でも思いやりを忘れない、小猫役のチー・ルーイーちゃんのまぶしい笑顔に号泣必至。
以上、どれもが、大人よりも打たれ強い子供たちの奇跡を称える作品であり、彼らを憐れんだり、誰かを責めたりしていないところが好印象。なにより、それぞれの監督たちが子供の気持ちに戻って作ったんだろうなあ、という喜びがスクリーンから伝わってくるのがイイ。つまり、子供のためというより、本質を見失っている大人に向けた映画ともいえそう。子供たちを見て、知って、そして自分を見つめ直すのにも最適な7つのステキな物語。ただひとつ、ここに日本が入っていないことを、喜ぶべきか、悲しむべきか…。
『それでも生きる子供たちへ』 6月9日(土)~シネマライズ他、全国順次公開
オフシャルサイト http://kodomo.gyao.jp/
(C) 2006 MK FILM PRODUCTIONS Srl RAI CINEMA SpA
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2007-06-08 【映画】 | 固定リンク
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