陰謀。復讐。――その果てにあるものは? 「ザ・シューター/極大射程」&「女帝<エンペラー>」
リベンジ――とよく言いますが、実現させるのはなかなか難しいもの。だからこそ、ちょっぴりの願望を込めて、古今東西、復讐のドラマがよく描かれるのかもしれません。そして、復讐に燃える者たちは、望まない陰謀に巻き込まれた者たちであることもしばしば。今週は、強大な権力による陰謀に立ち向かい、復讐に突き進む主人公たちの物語です。
「ザ・シューター/極大射程」――海兵隊特殊部隊所属の狙撃の名手、ボブ・リー・スワガー(マーク・ウォールバーグ)は、相棒ドニーとアフリカの小国エリトリアで任務に就いていた。しかし、予想を超える敵の数に応援を要請するも、本部は彼らを見捨て撤退。ようやく敵を殲滅したスワガーの隣りで、祖国に愛する妻サラ(ケイト・マーラ)を遺しまま、ドニーは息絶えていた。3年後、退役し愛犬とワイオミングの山中でひっそりと暮らしていたスワガーの前に、ジョンソン大佐(ダニー・グローバー)とその部下たちが現れる。全米各地を遊説する大統領の暗殺計画阻止のため、スワガーの狙撃手としての力を貸して欲しいと言うのだ。一度は断るが、持ち前の正義感と自らの力を知るスワガーは、自分になら阻止できると考え、引き受けることに。しかし、それは巨大な陰謀の序章だったのだ……。
先日の全米アカデミー賞で助演男優賞にノミネート(「ディパーテッド」)されたM・ウォールバーグ。何本も主演作があるにも関わらず、なんとなく地味な“助演”のイメージがついているような気がするのは、私だけでしょうか? その彼の最新主演作です。
ワシントン・ポスト紙の映画批評家スティーヴン・ハンターが書いた原作は、日本でも『このミステリーがすごい!』の海外作品部門第1位を獲得した人気小説。すでにシリーズ物として根強いファンもいる主人公スワガーは、ハードボイルドな個性派です。
とにかく、その狙撃の腕のすごさといったら! 約2kmも先の物を撃ち抜いちゃうんですから、想像もつきません。身体能力、危機回避の判断力の早さ、そして非常事態のサバイバル力も並大抵ではありません。その彼が、強大な権力の使い捨てのコマとして選ばれ、大統領暗殺犯にされてしまうのです。
国中の注目を浴び、追われることになった彼が、たった1人でどう闘い、陰謀の真相を暴きだすのか。味方はドニーの妻サラと、ひょんなことからスワガー犯人説に疑問を抱いてしまったFBIの新人捜査官ニック(マイケル・ペーニャ)だけ。ちなみに、この一見いかにも頼りなさそうな新人ニック君が、意外に頼れる粘り腰をみせてくれるのも、見どころのひとつです。
スワガーとともに一歩一歩、真実に近づけば近づくほど、途方もなく巨大な陰謀の片鱗が見えてきて、「いったい、どう決着させるの?」と呆然としてしまうかも。「もしかして、現実のアメリカも……?」なんて思わせるリアルな設定にもドキリとさせられて、見応え十分です。
全然笑わない主人公スワガーは、マット・デイモン主演で人気シリーズとなった「ボーン・アイデンティティー」に比べると愛嬌は足りませんが(笑)、シリーズ化の可能性もあるかも。まずは、ご覧ください。
「ザ・シューター/極大射程」 6月1日(金)~、日劇3他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.shooter-movie.jp
「女帝<エンペラー>」――国同士が絶え間なく争い、国内でも実の父子、兄弟が争っていた戦乱期の古代中国。皇太子ウールアン(ダニエル・ウー)と想いを寄せ合っていたが、父である皇帝に望まれ、皇后となったワン(チャン・ツィイー)。しかし、ウールアンが失意のうちに都を去っている間に、皇帝の実弟リー(グォ・ヨウ)が皇帝を暗殺、新帝として即位する。リーの狙いは皇帝の地位だけでなく、美しく聡明なワンを手に入れることにもあった。リーがウールアンの暗殺も企んでいると知ったワンは、ある決意を胸に秘めて、彼の妻になる道を選ぶ。しかし、それはウールアンの嫉妬と不信を招き……。
“読んだことはなくても、ストーリーは知っている物語”をあげていけば必ず出てくる1本が、シェイクスピアの『ハムレット』ではないでしょうか? 本作は舞台を古代中国に、主人公をハムレット(=ウールアン)から彼の母ガートルード(=義母ワン)に移したことで、新たな復讐の物語となりました。
とにかく衣装やセットの豪華絢爛ぶりにため息。中国各地からモンゴル草原まで、約3ヶ月の撮影期間と2000万ドルもの製作費をかけただけあって、圧倒的な迫力で迫ってきます。その中心となるチャン・ツィイーは、男たちを夢中にさせてしまうのも納得の美しさ。さすが某シャンプーのCMで“アジアン・ビューティ”に認定されただけあります(笑)。
アクション・シーンも、中国映画「HERO」や「LOVERS」でお馴染みのワイヤー・アクションで、殺気よりも優美さを感じさせ、まるで舞踊を見ているように、どこまでも鮮やかで艶やか。
個人的には、オフィーリア役に当たる、ウールアンの許婚者チンニー(ジョウ・シュン)が印象的でした。原作『ハムレット』では、復讐に燃える彼に冷たくされたことで精神的に追い詰められ、狂死してしまう哀れな婚約者でしたが、チンニーはウールアンの心を別の女性が占めていることを知りながら、しなやかな強さで一途に彼を想い続けます。
憎い男と夜をともにしながら、揺るぎない決意を胸に1日1日指折り数えるワン。彼女の復讐と野望は周囲の人々をも巻き込み、燃え上がります。その結末がどんなものになるのか。その目で見届けてください。
「女帝<エンペラー>」
6月2日(土)~、有楽座他、全国東宝洋画系にて公開
オフィシャルサイトhttp://jotei.gyao.jp
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