あなたは、お母さんのことをどのぐらい知っていますか? 「眉山」&DVD「オール・アバウト・マイ・マザー」

先日13日は「母の日」でしたが、あなたはお母さんに何かしてあげましたか? 考えてみれば、昔はずいぶんケンカもしましたが、年を重ねるごとに母は近しい存在になってくるような気がします。でも、意外に母の若い頃の話はあまり知らないままじゃないでしょうか? 今週は母の物語です。
「眉山―びざん―」――東京の旅行代理店に勤務する河野咲子(松嶋菜々子)は、故郷・徳島に暮らす母・龍子(宮本信子)の入院の知らせを受ける。父を知らない咲子にとって、母はたった1人の身内だった。帰郷した彼女に母は変わらぬ気丈な姿を見せるが、担当医から告げられた病名は末期ガン。咲子は母に真実を話すことが出来ない。しかし、ある日、かつて母の営む店に勤めていた松山(山田辰夫)から、龍子が「自分が死んだら咲子に渡すよう」にことづかっていたという箱を渡される。中には、自宅の登記簿の他に、死んだはずの父が咲子の誕生日ごとに送ってきた手紙の束と、若い頃の母が見知らぬ男性と写っている1枚の写真が収められていた。問い詰める咲子に、逆に母は本当の病状を隠していたことで切り返す。母が病状に気づいていたこと、諍(いさか)いをしてしまったことに落ち込む咲子を慰めたのは、病院で知り合った医師・寺澤(大沢たかお)だった。母の最期が近いことを知った咲子は、母が愛する阿波おどりを見せるために、寺澤と外へ連れ出すが――。
タイトルの眉山(びざん)とは、万葉集にも詠まれているなだらかな美しい眉のようなシルエットを持つ山で、古くから徳島の人々を優しく見守り、癒してきた山です。阿波おどりと共に、徳島を象徴する風景のひとつと言えるのかもしれません。
“神田のお龍”と呼ばれるチャキチャキの江戸っ子だった母が、なぜ縁もゆかりもない徳島に1人やって来て咲子を産んだのか。しかも、咲子に相談もせず、医大生の解剖実習のために遺体を提供する“献体”まで申し込んでいたのです。営んでいた店をたたむ時も、ケアハウスに入居する時も、いつも事後報告だった母に、ついに咲子の不満が爆発してしまうのもやむを得ないような気がします。
そんな気丈な母を演じる宮本信子が、とにかくカッコいいです。映画出演は実に10年ぶりだそうですが、さすがの貫禄。筋が通らないことには一言、言わずにはいられない。でも、決して尾を引かない潔い彼女を慕う人々が大勢いるというのも納得。そのピンと張った背筋ひとつをとっても、全身で龍子の生きてきた人生を語っているようで、圧倒されます。
父のこともあって、母にどこか距離を置いてきた咲子が、手紙を頼りにかつての2人が歩んだ道をたどって行くシーンはジンと心に迫ります。考えてみれば、私も両親がどんな想いを抱いて生きてきたのか、その青春時代について聞いたことは、ほとんどありませんでした。その時々の切なくつらい想い、考えていたことなど、知っているようで何も知らないことにハッとさせられます。
母の本当の想いを初めて知った咲子が、何を考え、どう行動していくのか。ハンカチを握り締めて、劇場でご覧ください。
「眉山―びざん―」 全国公開中
オフィシャルサイト http://www.bizan-movie.jp
(c)2007「眉山」製作委員会
「オール・アバウト・マイ・マザー」――臓器移植のコーディネーターとしてマドリードの病院に勤めるマヌエラ(セシリア・ロス)は、女手ひとつで息子エステバン(エロイ・アソリン)を育ててきた。「父親についてすべて教えて」という彼の願いを17歳の誕生日にかなえる約束をするが、その晩、2人で芝居を見た帰り道、大女優ウマ(マリサ・パレデス)のサインが欲しくて道路に飛び出した息子は交通事故に遭い帰らぬ人に。息子の死を別れた夫に伝えようと決心したマヌエラは、18年ぶりにバルセロナへ向かう。そこで出会ったシスター・ロサ(ペネロペ・クルス)は密かに妊娠していた。その相手は、4ヶ月前に行方不明になったマヌエラのかつての夫ロラ(トニ・カント)だった……。
1999年に公開され(日本は2000年)、カンヌ国際映画祭最優秀監督賞や、全米アカデミー外国語映画賞を始めとする各賞を総ナメにしたスペイン映画です。最愛の息子を喪った母が、息子の想いを別れた夫に伝えるために、18年間に得たものすべてを捨てて、青春時代を過ごしたバルセロナへ向かいます。
そもそも18年前、なぜマヌエラがお腹に子供がいることを夫にも告げず、ひとりバルセロナを去ったのか。彼女がどれほどの想いで決断したのかは、案外さらりと語られます(とは言っても、かなりすさまじい状況下にあったのですが)。
様々な想いを飲み込み、それを昇華し、歩んできたマヌエラ。彼女の強さは、おそらくは息子の存在を唯一の支えにしていたものだっただろうに、それすらもなくしてどうなってしまうのか。でも、彼女はやっぱり前を向いて歩いていくのです。
その強さは、他の登場人物――ロサ、ウマ、親友アグラード(アントニア・サン・フアン)にも通じていて、ただただ見入ってしまうばかり。何もなかったはずはないのに、何もなかったかのように前を見続ける彼女たちの姿は、言葉には出さずとも、互いの人生を讃えているようにも見えてきます。
2作品とも、様々な女たちの人生を見ているうちに、いつのまにかピンと背筋がのびてしまうような物語です。希望あるエンディングが、さわやかな後味を残してくれますよ。
DVD
「オール・アバウト・マイ・マザー」
発売元:東芝エンタテインメント/販売元:アミューズソフトエンタテインメント
3129円(税込)で発売中
オフィシャルサイト http://www.amuse-s-e.co.jp/index.php
(c)EL DESEO S.A./RENN PRODUCTIONS/FRANCE 2 CINEMA. 1999.
下の「コメント」をクリックして、人名欄はペンネームを、URL欄は不要、コメント欄にご意見を書き込んで「投稿」をクリックしてください。
トラックバックについて詳しくお知りになりたい方は、「トラックバックについて」をクリックしてご確認ください。
2007-05-18 【映画】 | 固定リンク
トラックバック
このページのトラックバックURL:
http://www.typepad.jp/t/trackback/160820/6971235
このページへのトラックバック一覧 あなたは、お母さんのことをどのぐらい知っていますか? 「眉山」&DVD「オール・アバウト・マイ・マザー」:
» 眉山 宮本信子 トラックバック 眉山 宮本信子
宮本信子 眉山で映画復帰あの世の伊丹さんは「眉山」で見せた宮本の表情を笑顔をどう思ったでしょう。 復帰には「それだけの時間が必要だったと思う。つらさを無理に全部つぼに入れてフタしてた。“見ない”で進もうとした。映画館に行くのもつらかった...... [続きを読む]
トラックバック送信日 2007/05/25 0:15:07
» 眉山を皇后がごらんになった理由 トラックバック 眉山を皇后がごらんになった理由
さだまさしの小説の映画化眉山眉山(びざん) 徳島市の小さな山どの方向から眺めても眉(まゆ)の姿に見えることから、その名がついたといわれる。徳島市のシンボル的存在として親しまれている。 2007年5月12日より団塊世代さだまさし原作でこの眉山(びざん)を舞台にした映画「眉山ーびざん-」が公開されている。眉山(びざん) この映画今日見てきました。その一つの理由は、なぜこの映画を美智子美智子皇后がわざわざご覧になったのか、そのことが知りたかったのです。映画を見ながら、ストーリーや...... [続きを読む]
トラックバック送信日 2007/05/31 13:24:39
» さだまさし小説「眉山」の映画化 トラックバック さだまさし小説「眉山」の映画化
さだまさし原作映画 眉山 見てきましたさだまさし原作を読んだ後に今日見ました。美智子皇后様がなぜ試写をご覧になったのかも知りたかったからです。 原作とは違うのは勿論です、しかし感動は原作を引き継ぐものでした。ちょっとストーリー女手ひとつで育てられ、いつも厳しい母・龍子の背中を見ていた咲子。独立して東京で仕事をしていた咲子の元に龍子の入院の一報が入り、地元徳島に戻ってきた。病床での龍子は以前と変わらず看護士に説教をするような自分勝手な態度。そして、何事にも厳しい龍子の振る舞いは...... [続きを読む]
トラックバック送信日 2007/06/09 15:36:12
» さだまさし/さだまさしLIVEベスト トラックバック 有名人
さだまさし/さだまさしLIVEベスト 価格: 8,000円 販売元: アサヒレコ... [続きを読む]
トラックバック送信日 2007/09/18 2:21:35
コメントを投稿
*投稿された内容の修正、削除の依頼は一切応じられませんので、投稿される前に十分にご確認ください。
*「投稿」ボタンは1度だけ押してください。

コメント