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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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あなたは、お母さんのことをどのぐらい知っていますか? 「眉山」&DVD「オール・アバウト・マイ・マザー」

Movie0518_1

先日13日は「母の日」でしたが、あなたはお母さんに何かしてあげましたか? 考えてみれば、昔はずいぶんケンカもしましたが、年を重ねるごとに母は近しい存在になってくるような気がします。でも、意外に母の若い頃の話はあまり知らないままじゃないでしょうか? 今週は母の物語です。

「眉山―びざん―」――東京の旅行代理店に勤務する河野咲子(松嶋菜々子)は、故郷・徳島に暮らす母・龍子(宮本信子)の入院の知らせを受ける。父を知らない咲子にとって、母はたった1人の身内だった。帰郷した彼女に母は変わらぬ気丈な姿を見せるが、担当医から告げられた病名は末期ガン。咲子は母に真実を話すことが出来ない。しかし、ある日、かつて母の営む店に勤めていた松山(山田辰夫)から、龍子が「自分が死んだら咲子に渡すよう」にことづかっていたという箱を渡される。中には、自宅の登記簿の他に、死んだはずの父が咲子の誕生日ごとに送ってきた手紙の束と、若い頃の母が見知らぬ男性と写っている1枚の写真が収められていた。問い詰める咲子に、逆に母は本当の病状を隠していたことで切り返す。母が病状に気づいていたこと、諍(いさか)いをしてしまったことに落ち込む咲子を慰めたのは、病院で知り合った医師・寺澤(大沢たかお)だった。母の最期が近いことを知った咲子は、母が愛する阿波おどりを見せるために、寺澤と外へ連れ出すが――。

タイトルの眉山(びざん)とは、万葉集にも詠まれているなだらかな美しい眉のようなシルエットを持つ山で、古くから徳島の人々を優しく見守り、癒してきた山です。阿波おどりと共に、徳島を象徴する風景のひとつと言えるのかもしれません。

“神田のお龍”と呼ばれるチャキチャキの江戸っ子だった母が、なぜ縁もゆかりもない徳島に1人やって来て咲子を産んだのか。しかも、咲子に相談もせず、医大生の解剖実習のために遺体を提供する“献体”まで申し込んでいたのです。営んでいた店をたたむ時も、ケアハウスに入居する時も、いつも事後報告だった母に、ついに咲子の不満が爆発してしまうのもやむを得ないような気がします。

そんな気丈な母を演じる宮本信子が、とにかくカッコいいです。映画出演は実に10年ぶりだそうですが、さすがの貫禄。筋が通らないことには一言、言わずにはいられない。でも、決して尾を引かない潔い彼女を慕う人々が大勢いるというのも納得。そのピンと張った背筋ひとつをとっても、全身で龍子の生きてきた人生を語っているようで、圧倒されます。

父のこともあって、母にどこか距離を置いてきた咲子が、手紙を頼りにかつての2人が歩んだ道をたどって行くシーンはジンと心に迫ります。考えてみれば、私も両親がどんな想いを抱いて生きてきたのか、その青春時代について聞いたことは、ほとんどありませんでした。その時々の切なくつらい想い、考えていたことなど、知っているようで何も知らないことにハッとさせられます。

母の本当の想いを初めて知った咲子が、何を考え、どう行動していくのか。ハンカチを握り締めて、劇場でご覧ください。

「眉山―びざん―」 全国公開中
オフィシャルサイト 
http://www.bizan-movie.jp
(c)2007「眉山」製作委員会

Movie0518_2 「オール・アバウト・マイ・マザー」――臓器移植のコーディネーターとしてマドリードの病院に勤めるマヌエラ(セシリア・ロス)は、女手ひとつで息子エステバン(エロイ・アソリン)を育ててきた。「父親についてすべて教えて」という彼の願いを17歳の誕生日にかなえる約束をするが、その晩、2人で芝居を見た帰り道、大女優ウマ(マリサ・パレデス)のサインが欲しくて道路に飛び出した息子は交通事故に遭い帰らぬ人に。息子の死を別れた夫に伝えようと決心したマヌエラは、18年ぶりにバルセロナへ向かう。そこで出会ったシスター・ロサ(ペネロペ・クルス)は密かに妊娠していた。その相手は、4ヶ月前に行方不明になったマヌエラのかつての夫ロラ(トニ・カント)だった……。

1999年に公開され(日本は2000年)、カンヌ国際映画祭最優秀監督賞や、全米アカデミー外国語映画賞を始めとする各賞を総ナメにしたスペイン映画です。最愛の息子を喪った母が、息子の想いを別れた夫に伝えるために、18年間に得たものすべてを捨てて、青春時代を過ごしたバルセロナへ向かいます。

そもそも18年前、なぜマヌエラがお腹に子供がいることを夫にも告げず、ひとりバルセロナを去ったのか。彼女がどれほどの想いで決断したのかは、案外さらりと語られます(とは言っても、かなりすさまじい状況下にあったのですが)。

様々な想いを飲み込み、それを昇華し、歩んできたマヌエラ。彼女の強さは、おそらくは息子の存在を唯一の支えにしていたものだっただろうに、それすらもなくしてどうなってしまうのか。でも、彼女はやっぱり前を向いて歩いていくのです。

その強さは、他の登場人物――ロサ、ウマ、親友アグラード(アントニア・サン・フアン)にも通じていて、ただただ見入ってしまうばかり。何もなかったはずはないのに、何もなかったかのように前を見続ける彼女たちの姿は、言葉には出さずとも、互いの人生を讃えているようにも見えてきます。

2作品とも、様々な女たちの人生を見ているうちに、いつのまにかピンと背筋がのびてしまうような物語です。希望あるエンディングが、さわやかな後味を残してくれますよ。

DVD
「オール・アバウト・マイ・マザー」
発売元:東芝エンタテインメント/販売元:アミューズソフトエンタテインメント
3129円(税込)で発売中
オフィシャルサイト 
http://www.amuse-s-e.co.jp/index.php
(c)EL DESEO S.A./RENN PRODUCTIONS/FRANCE 2 CINEMA. 1999.

 
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2007-05-18 【映画】 | 固定リンク

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