オトコは永遠に迷える少年なのか――「輝ける女たち」&「こわれゆく世界の中で」
よく、「男はいつまでも少年の心を忘れない」なんて言いますよね。私はずっとこれを、「都合のいい言葉だなあ」と思っていました(笑)。でも、今週の2本を見ると「やっぱりそうかも」なんて、ヘンに納得しちゃいそう。あなたは、どうですか?
「輝ける女たち」――フランス・ニースにあるキャバレー“青いオウム”のオーナー、ガブリエル(クロード・ブラッスール)が突然の死を遂げた。遺言で、すっかり疎遠になっていたゆかりの人物が集められる。彼を父のように慕い、かつてはマジシャン仲間として一世を風靡し、数年前から店でショーをしているニッキー(ジェラール・ランヴァン)。同じくマジシャン仲間で、今は夫とワイン店を営むシモーヌ(ミュウミュウ)。彼女とニッキーの一夜限りの関係で生まれたマリアンヌ(ジェラルディン・ペラス)。ニッキーの離婚した妻アリス(カトリーヌ・ドヌーブ)と、2人の間の息子ニノ(ミヒャエル・コーエン)だ。父を嫌う子供たちの冷たい視線も気にせず、目下、歌姫レア(エマニュエル・ベアール)に夢中のニッキーは店を相続するのは自分だと信じていた。ところが、遺言状はニノとマリアンヌを指名。ニッキーの失意をよそに、2人は店の売却を考える。そんな中、それぞれが抱える秘密が次第に明らかになり……。
ガブリエルに一番近い存在で、苦難の少年時代から彼を父とも兄とも慕ってきたニッキー。でも、葬儀の直後からレアのお尻を追いかけ回し、数年ぶりに再会した子供たちも後回し。そのダメダメぶりは、情けないやらおかしいやら。でも、なぜだか憎めないのです。
なんでこんな頼りなくていい加減な男に、女たちが魅かれてしまうのか。アリスとシモーヌ、レアのきりりとした強さ潔さが際立つだけに、そう思わずにはいられません。3人の存在に邦題の意味もしっくりきて、かえって原題が不思議なほどです。
フランス語の原題「LE HEROS DE LA FAMILLE」は、英語の「Family Hero」。誰がヒーロー? と思うかもしれません。でも、なぜか最後まで見ると「なるほど」と思えてくるのです。
メイン・キャストが多くて、関係も複雑。何かありそうな、彼らの意味ありげな視線も飛び交って、ちょっと混乱しそうですが、彼らの過去や秘密が、ベールを1枚1枚はがすように明らかにされていくにつれ、どんどんおもしろくなっていきます。
そう、タフで優しい女たちは、キズつきやすい男を守るために命がけで嘘をつき、嘘がバレてしまった時は、その大いなる包容力で男を癒すのです。そうして迷える男たちは少しずつたくましくなり、1人で歩いていけるようになるのかもしれません。
酸いも甘いも噛み分けた凛々しい女たちが愛した、頼りなく、でもたまらなく愛すべき存在の男。ラスト・シーンでニッキーの後姿を見送りながら、疑問が氷解していくような気分になった私。あなたは、どうでしょうか?
「輝ける女たち」 4月14日(土)~、Bunkamuraル・シネマ他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.kagayakeru-movie.com
(c)2006 SBS FILMS EDEL WEISS SRL FRANCE 2
「こわれゆく世界の中で」――ロンドンのキングス・クロス駅周辺の再開発プロジェクトを担うウィル(ジュード・ロウ)は、共同経営者サンディ(マーティン・フリーマン)と近くのビルに新事務所を開いた。10年来の同棲生活を送るリヴ(ロビン・ライト・ペン)と彼女の娘ビー(ポピー・ロジャース)や、友人たちを招き賑やかなパーティーを開いた晩、事務所が盗難に遭う。数日後、新たに導入したコンピューターも再び盗難。その地区に住む、ボスニア人コミュニティーの窃盗団の仕業だった。治安の悪い地域だけに親身になってくれない警察に業を煮やしたウィルとサンディは、自ら夜のオフィスを見張ることにする。数日後、またもや忍び込もうとした少年ミロ(ラフィ・ガヴロン)を追いかけたウィルは彼の自宅を突き止め、仕立て屋をしていることを知ると、翌日、破れた服を手にミロの母アミラ(ジュリエット・ビノシュ)を訪ねる。この数年、心のバランスを崩し治療を受けるビーを生活の中心に置くリヴとの関係がギクシャクしていたウィルは、急速にアミラに魅かれていき――。
正式な結婚はしていないけれど、美人で優しい妻同然の女性と10年以上も生活を共にし、可愛い娘もいて、仕事も大きなプロジェクトを任されて順調に展開――一見すると、これ以上なにを望むのかと言いたいくらい、順風満帆なウィルの人生。でも、彼の心は何かが満たされていないのです。
それは家庭にありました。娘の心の病の原因が自分の離婚にあるのではないかと密かに悔やむリヴにとって、ビーは何よりも大切な存在であり、同時に人生の十字架でもあるのです。その気負いは、本当の家族になりたいと願うウィルでさえ、弾き飛ばしてしまいます。
そんな時に出会ったのが、アミラでした。内戦で夫を喪い、命がけで息子と亡命してきた彼女の強さや優しさに、ウィルは癒されたかったのかもしれません。そんな彼の気持ちもわからなくはないけれど、「ちょっと! ちょっと!」と言いたくなりませんか?
アミラに近づいたきっかけがきっかけだけに、厄介なコトになるのは目に見えてるし。何より、きっとそれまでにもいろんなことがあったであろうリヴたちとの10年が、それでダメになってしまうのだろうか、と。
あのアカデミー賞9部門を独占し、日本でも人々の感動の涙を絞った「イングリッシュ・ペイシェント」や、「コールド・マウンテン」のアンソニー・ミンゲラが監督&脚本ですから、登場人物たちの感情が静謐な中、丁寧に描かれていて、引き込まれずにはいられません。
でも、あえて言いたい! ウィルの両肩を持ってブンブン揺さぶりたい! 「しっかりしろよー!」と(笑)。やっぱり、男は永遠に迷える少年なんでしょうか? それぞれに悩み苦しんだ彼らが迎える結末はしみじみ心に残り、見終わった直後は、素直に「よかった」と思えたのですが、後日、ふと浮かんだのは「ウィル、しっかりしろよ」でした(笑)。さて、あなたはどう見ますか?
「こわれゆく世界の中で」 4月21日(土)~、シャンテ シネ、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
オフィシャルサイトhttp://www.movies.co.jp/breakingandentering
(c)2006 The Weinstein Company and Miramax Films. All Rights Reserved.
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2007-04-13 【映画】 | 固定リンク
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