黒人俳優を代表するアカデミー賞受賞の実力派2人の最新作、続々公開! 「デジャヴ」&「ラストキング・オブ・スコットランド」
ブラック・パワーが目立った2007年全米アカデミー賞。21世紀に入って、そんな傾向が強くなってきたようです(2002年に主演男優賞デンゼル・ワシントン&主演女優賞ハル・ベリー。2005年に主演男優賞ジェイミー・フォックス&助演男優賞モーガン・フリーマン)。今週は、主演男優賞に輝いた、黒人俳優を代表する実力派2名の最新作をご紹介します。
2006年2月、アメリカ、ニューオリンズ。全米最大のカーニバルを祝うため、500名を超える乗客がミシシッピー川のフェリー“スタンプ号”に乗り込んだ。陽気な音楽が鳴り響く中、出発してしばらく後、爆発音と共にフェリーは炎上する――。地獄絵図さながらの現場に駆けつけたATF(アルコール・タバコ・火器局)捜査官ダグ(D・ワシントン)は、543名の遺体の中の1人クレア(ポーラ・パットン)が、爆発の1時間前に死んでいたことを知る。彼女が事件の手がかりだと直感した彼は、彼女の自宅へ急行。そこで「君は 彼女を 救える」というメッセージを見つけた彼は、同時にかつて来たことがあるような「デジャヴ」を覚える。一方、周囲の監視カメラから不審人物を発見するなど、高い捜査能力を持つダグに目をつけたFBI捜査官プライズワーラ(ヴァル・キルマー)は、彼を特別捜査班に誘う。そこには、政府が密かに開発中の驚くべき監視システムがあった……。
かつて黒人俳優がキャスティングされたのは、コメディか型にはまった悪党役ばかり。そんな状況を打破したのが、シドニー・ポワチエ(1964年に黒人として初のアカデミー主演男優賞受賞)でした。でも、それ以降もなかなか全体の流れは変わらなかったのです。
そんな中で独特の地位を築いたのがD・ワシントンでした。尊敬するS・ポワチエの「自分がいいと信じる役が来るまで待つべき」というアドバイスに従った彼は、その実力と存在感を発揮できるタイミングを待ち、実に38年ぶりで、S・ポワチエに続く2人目の黒人俳優として主演男優賞を獲得するまでになったのです(1990年に助演男優賞も受賞)。
私が彼をスゴイと思うのは、同じようなタイプの役を避け、常に新しい役どころに挑み、社会派から娯楽作まで幅広く出演しているところ。「マルコムX」のタイトルロールを演じた後、同じような役のオファーがきたのをきっぱり断ったのは、ちょっと有名な話です。
本作の彼は、敏腕捜査官でありながら、捜査を進めるうち、すでにこの世にはいない女性に魅かれるという、軸となるサスペンスにロマンス色をたっぷり絡ませた役どころです。
普通、死んでしまった女性にそれほど強く想いを寄せるなんて、考えられないですよね。ところが彼は捜査の過程で、生きて話す生前の彼女の姿を見るのです。それも間近で、何度も何度も。なぜそんなことが可能なのかは、ぜひ本編で。そう、本作はただのサスペンスではないのです。
ダグが感じたデジャヴ(既視感)は、どこから来ているのか? 彼女の家で見つけたメッセージ――U(YOU) CAN SAV(E) HER=君は彼女を救える――が、なぜこれほどまでに気にかかるのか? そのすべての謎を解いたとき、彼は彼女を救うことが出来るのか――エンディングまで息つく間もない展開を、お楽しみください。
「デジャヴ」 3月17日(土)~、日劇1他、全国公開
オフィシャルサイト http://deja-v.jp
(c)TOUCHSTONE PICTURES and JERRY BRUCKHEIMER INC. All Rights Reserved.
スコットランドの医大を卒業したニコラス・ギャリガン(ジェームズ・マカヴォイ)は、若さに任せた冒険気分で、アフリカのウガンダの小さな村を赴任地に選ぶ。1971年、軍事クーデターを起こした将軍アミン(フォレスト・ウィテカー)が大統領の座に就いた直後のことだった。診療所で働き始めたニコラスは、偶然、演説会で近くの村を訪れていたアミンのケガを治療、アミンに気に入られて主治医に抜擢される。そして、いつしか主治医の枠を超え、アドバイザー的な役割まで果たすようになる。しかし、旧政権による大統領暗殺未遂事件や進まない政策は、スコットランド好きで「ラストキング・オブ・スコットランド」を自称するアミンの妄想や疑心暗鬼を増大させていく。気づいた時、ニコラスはアミンの第2夫人ケイ(ケリー・ワシントン)と心を通わせ、危険な立場にはまり込んでいた……。
あなたは、ウガンダのアミン大統領の名前を知っていましたか? 私は通り一遍の、“大量虐殺を行った恐怖の独裁者”というイメージだけでしたので、本作でいまだにウガンダの国民の一部がアミン元大統領を慕っていると知り、びっくりでした。
でも考えてみれば、人間はいろんな面を持っているのが当たり前で、一面しかない人なんていないですよね。ただの独裁者ではなく、大きな夢を抱き国民を熱狂させた、お茶目で気さくな人柄も確かにあったに違いないのです。
本作で、先日発表された今年のアカデミー主演男優賞を、4人目の黒人俳優として見事に受賞した、F・ウィテカー。その容貌と役柄のせいか、なんとなく気が弱そうな印象の彼ですが(私だけ?)、小心で、気分屋で、強権的な性格を併せ持つ、複雑な実在の人物を見事に演じきりました。
アミンやケイの存在と、描かれている事件は実在のものですが、ニコラスは架空の存在(スコットランド人の主治医とイギリス人のアドバイザーはいたそうです)。実際にアミンが親しくしていた数人の西洋人を元に生み出された、まだ若く、冒険心や理想に燃え、同時に浅はかで衝動に弱い彼の存在が、物語をより私たちに身近なものにしています。
2003年に亡命先のサウジアラビアで病死したアミン元大統領。本作を見た彼の実の息子が、「マイナス・イメージが誇張されている。(中略)より深く理解してもらうには何千年もかかるだろう」とコメントを発表しました。確かに正当な評価はこれからなのかもしれませんが、でも、虐殺も事実。物事や人間には様々な側面がある、ということを改めて考えてしまいました。
「ラストキング・オブ・スコットランド」 3月10日(土)~、有楽町スバル座他、全国公開
オフィシャルサイト http://movies.foxjapan.com/lastking/
(c)2006 TWENTIETH CENTURY FOX
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2007-03-09 【映画】 | 固定リンク
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