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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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時に“家族”の存在はうっとうしいけど、やっぱり大切なのです。「ママの遺したラヴソング」&「アルゼンチンババア」

Movie0330_01
あなたにとって、“家族”とは何ですか? 「いて当たり前」、そんな普段はまるで空気のような存在で、でも時に、うっとうしい、なんてこともあったりして。中々その大切さを身にしみて感じることは少ないですよね。今週は、そんな“家族”の大切さ、温かさがじわじわ伝わってくるような映画です。

「ママの遺したラヴソング」――幼いころから祖母に育てられたパーシー(スカーレット・ヨハンソン)の元に、何年も音沙汰のなかった母ロレーンの訃報が届く。祖母の死後、高校を中退し、フロリダで怠惰な生活を送っていたパーシーは、母が暮らしていた、自分の生まれ故郷でもあるルイジアナへと向かう。母は遺言でパーシーと友人である大学の元文学部教授ボビー(ジョン・トラヴォルタ)と作家志望の青年ローソン(ゲイブリエル・マック)に家を遺していた。酒浸りの見知らぬ男たちと住むなんて冗談じゃない、と一度はフロリダへ戻ろうとするパーシーだったが、長距離バスの待合室で、巻末にボビーの献辞が綴られた母の形見の小説『心は孤独な狩人』を読むうち、小説の主人公の歌手と、地元では知られた歌手だった母が重なり、記憶にない母の姿を知りたくなる。こうして3人の奇妙な共同生活が始まった……。

まだ10代なのに、早くも人生を見切ってしまったようなパーシー。生意気で不遜な態度をとってばかりですが、何かにつけて衝突していたボビーたちとの共同生活や、母と幼いころの自分を知っている周囲の人々の存在が、次第に彼女の気持ちをほぐしていきます。

父の名も知らず、母に愛された記憶もない彼女にとって、周囲の人々が懐かしそうに語る母の姿はまるで現実味がありません。でも、母の遺した数々の本を読むことで、母の存在は生身のものになっていくのです。そして、彼女が読書を好きだと気づいたボビーたちが学費を工面し高校に復学させることで、パーシーは失った少女時代を取り戻していきます。

演じるS・ヨハンソンがとってもかわいいのです。当時、彼女は20歳(撮影は2004年で現在22歳)。それまで演じてきた役柄は大人びたものが多かったのですが、本作では、少女らしくなかったパーシーが次第に”年相応”に見えてきてびっくり。“大女優”の片鱗をあらためて見せてくれます。

すっかり頭髪が白くなったJ・トラヴォルタの老け役ぶりも驚きでした。無精ヒゲを生やし、薄汚れた服装にサンダル履きという姿は、ただの年老いた酔っ払い。元大学教授らしく、その場に合った作家や哲学者の名文句をちょいちょい口にしますが、それすら、たわ言に聞こえてくるほどです。そんな彼が、ギターを片手に披露する歌声が見事。上手い下手を超えた、一種独特の雰囲気が、映画の彩りをさらに鮮やかにしています。

ジェイニー・ゲイベル監督が準備を始め、パーシー役をS・ヨハンソンにと心に決めてから2年後、初めて脚本を読んで出演を決めたS・ヨハンソンは16歳でした。それから予算確保まで実に4年。その間、2人はミーティングを重ね、実現を待ちました。その想いがいっぱい詰まった、切ないほど優しい“家族”を描いた映画です。ぜひ、ご覧ください。

「ママの遺したラヴソング」 4月7日(土)~、シネスイッチ銀座他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.mamanolovesong.com
(c)2004 BOBBY LONG, LLC

Movie0330_02
高校生のみつこ(堀北真希)は、墓石彫り職人の父・悟(役所広司)とイルカ好きの母・良子(手塚理美)の家族3人で、楽しく暮らしていた。その母が亡くなった。1日も欠かさず病院を見舞っていた父は、なぜかその日に限って姿を見せず、そのまま行方不明に。叔母・早苗(森下愛子)とその息子で同い年の信一(小林裕吉)らが心配する中、半年後に発見された父は、なんと町外れの風変わりな一軒家、通称「アルゼンチンババア」(鈴木京香)の家に住んでいた! みつこは勇気を奮って、父奪還に向かうが……。

まず、「アルゼンチンババア」というタイトルに驚きませんか?(原作のよしもとばななファンの方には、すでにおなじみですが) しかも、その“ババア”役をあの鈴木京香が演じるなんて。どんな“ババア”ぶりなのか、興味津々になりますよね。

予想にたがわず(?)、ただの“ババア”ではありません。ものすごくインパクトのあるヘアスタイルと、ちょっと変わったイントネーションの優しい語り口は、なんだか別世界の人のよう。彼女の淹れるマテ茶や手づくり蜂蜜、愛するタンゴ、そして抱えている哀しい過去も含め、すべてが“アルゼンチンババア”ワールドを作りあげています。

あんなに愛していた母の葬儀にも出ず、娘も仕事も放って半年も音信不通だった父の気持ちを理解できないみつこや周囲の人々は、父を元の生活に戻そうと奮闘しますが、なぜだか頑として父は戻ろうとしません。それは、どうしてなのか? 父の真情が少しずつ見えてくるにつれ、みつこたちのアルゼンチンババアに対する気持ちにも変化が生じていきます。

誰しも、どうしようもなくつらく哀しい出来事は、起こらないで欲しい、なかったことにしたいと願うもの。でも、それに向き合ってこそ、初めて次の幸せを見つけることが出来るのかもしれない。もちろん、そのためには時間が必要ですが。きっと明日は来る――何もかも包み込んでくれそうな“アルゼンチンババア”の存在は、その象徴なのかもしれません。

みつこたち“家族”が、どんなふうにして再生していくのか。珍妙なタイトルにしては意外なほど、優しくファンタジックな物語です。

「アルゼンチンババア」 東劇他、全国公開中
オフィシャルサイト http://www.arubaba.com
(c)2006「アルゼンチンババア」製作委員会

 
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2007-03-30 【映画】 | 固定リンク

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