日本人俳優が出演した、全米アカデミー作品賞ノミネート作2本! 「バベル」&「硫黄島からの手紙」+アカデミー賞受賞予想<4>
今週は、アカデミー作品賞にノミネートされた2作品のご紹介です。日本人俳優が大きく関わっている作品が2本も入っているというのは、とても珍しいこと。要注目です。
「バベル」――モロッコの山間の村で暮らすアブドゥラは、知人から1挺のライフルを買う。生活の糧であるヤギを襲うジャッカルの番をする、2人の息子に渡すためだ。だが、兄弟で銃のうまさを競ううち、弟は眼下の山道を走るバスに向けて銃弾を放ち――。アメリカ人夫婦のリチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)は2人の子供をメキシコ人乳母アメリア(アドリアナ・バラッザ)に預け、モロッコに来た。3人目の子供を喪った悲しみと壊れかけた夫婦の絆を立て直すための大切な旅だ。ところが、観光バスに乗っていたスーザンを1発の銃弾が襲う。病院はおろか医者もいないような場所で、リチャードは血まみれの妻を抱え、一番近い村へと走る――。災難を知らされたアメリアは途方に暮れていた。夫妻は彼女の息子の結婚式までに帰るはずだったのだ。考えあぐねたアメリアは、幼い兄妹(ネイサン・ギャンブル&エル・ファニング)を連れて故郷メキシコへ向かう。一方、モロッコ警察の捜査の結果、ライフルは東京に住むヤスジロー(役所広司)の物と判明。彼の元を警視庁の刑事が訪ねてくる。彼は妻の自殺以来、聾唖の1人娘チエコ(菊地凛子)との間にできた溝に悩んでいた……。
長いストーリーでゴメンナサイ。モロッコで起きた事件が、一見、何の関係もないアメリカ・メキシコ・日本の3つの土地をドミノ倒しのように駆け巡ります。話す言葉も、宗教も、生活習慣もまったく違うこの4つの土地で、いったい何が起きているのか。
「バベル」というタイトルは、旧約聖書の“バベルの塔”から。かつて言葉は1つで、人々は容易に意思の疎通が図れました。でも、神に近づこうと天まで届く塔を建てようとした人間に腹を立てた神は言葉を乱し、世界はバラバラに。その塔のあった街がバベルです。
でも、本当に世界はバラバラになったのでしょうか? 例え言葉や生活環境が違っても、互いの思いをうまく伝えあうことが出来なくても、ある1つの出来事が接点のなかった人々を否応なしに結びつけていくのです。人は1人じゃない、と思いませんか?
同時に、近くにいても気持ちが通じ合わないことも。妻亡き後、娘を何より大切にするヤスジロー。そんな父に苛立ちを覚えるチエコ。2人は手話という同じ言葉でコミュニケーションしているのに、すれ違っているのです。チエコの埋めがたい寂しさとは何か――。
アカデミー助演女優賞ノミネートで、俄然注目の的となったチエコを演じた菊地凛子が圧巻でした。聾唖であるため、時に他人に後ろ指を指され、思いをうまく伝え切れずに苛立つ彼女の姿は危なげで、見ている者を不安にさせます。誰かに理解されたいという強い願いが寂しさに変わって、スクリーンからあふれ出してくるようでした。
この映画を見て何を感じとるのかは、十人十色。あなたの感じるものは、私とは違うかもしれません。だからこそ、見て欲しい作品です。それにしても、ブラピのパートは、チエコやアメリアのパートに完全に喰われてしまったなあ(笑)。演じた菊地凛子とA・バラッザの助演女優賞ノミネートは、納得でした。
「バベル」 4月、日比谷スカラ座他、全国東宝洋画系公開
オフィシャルサイト http://babel.gyao.jp
(c)2006 by Babel Productions, Inc. All Rights Reserved.
2006年、硫黄島調査に向かった一団は、地中から数百通もの手紙を発見する。それは61年前、この地で戦った男たちが家族に宛てて書き、出すことのなかった「硫黄島からの手紙」だった――。1944年6月。厳しい戦況の最中、1人の指揮官が硫黄島に着任する。彼の名は、陸軍中将・栗林忠道(渡辺謙)。アメリカ留学経験を持つ彼には、この戦争がいかに厳しいものかがはっきりと見えていた。翌年2月、ついにアメリカ軍が上陸を始め――。
昨年、姉妹作「父親たちの星条旗」をご紹介した時に、『まだ、試写を見られませんが……』と言いつつ、ちょっとご紹介したのを覚えていらっしゃるでしょうか。12月の日本公開に続き、2月公開予定だったアメリカも急遽12月に公開。無事、資格を得て、今回のアカデミー賞ノミネートとなったわけです。残念ながら、下馬評で盛り上がっていた渡辺謙や二宮和也のノミネートはなりませんでしたが、評価はかなり高かったようです。
遅ればせながら、ようやく本作を見てきましたが、「外国人が日本を撮ると、どうしてこんなことに……」なんてことは、もちろんナシ。「『生きて帰れると思うな』とはアメリカ人に本気では言えない。ほとんどのアメリカ人は、『きっと危険だろうし、命を落とすかもしれないが、帰ってこられるかもしれない』と考えながら戦場に行くからね」と話すように、クリント・イーストウッド監督が一番理解できなかったのは、硫黄島に送り込まれた日本人兵士たちのメンタリティだったそうです。
それを理解するために、あらゆる資料を読んだという監督。ある評論家が「なぜ、この映画を日本人が撮れなかったのか」と言っていましたが、驚くほどに日本人兵士の描写への違和感はありません。
戦闘シーンに関しては、もっと壮絶で凄まじい映画が過去にもありました。でも、本作が重きを置いたのは、その裏の姿。硫黄島に送られた人々が何を思い、どう考え、どんな戦いをしたのか。実在の人物と架空の人物が入り乱れての物語ですが、そのエピソードの一つ一つは実際にあったかもしれない、そう思わせるほどのリアリティを持って迫ってきます(伊原剛志演じる実在した“バロン西”こと西竹一中佐は、ちょっとカッコよすぎですが・笑)。
この一大プロジェクトに抜擢された日本人キャストたちが口々に、「すばらしい現場だった」と語るように、現場は終始いい作品を作ろうというムードに満ちていたそうです。かつて戦った両国が、それについての映画を共に製作する――それもまた、感慨深いものがありませんか?
「彼らがどんな人間だったかを知ることは、日本だけでなく、世界中の人々にとって重要だと思う」という監督他スタッフ、キャストの思いがこもった作品です。ぜひ、劇場で。
「硫黄島からの手紙」 全国公開中
オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/
(c)2006 Warner Bros. Ent Inc. and DreamWorks LLC
「勝手に恒例(笑)! 全米アカデミー賞受賞予想 第4回」
今週は、作品賞です。まずはノミネート一覧を。
<作品賞ノミネート>(※タイトルの後は、日本公開予定です。)
「バベル」(4月公開)
「ディパーテッド」(公開中)
「硫黄島からの手紙」(公開中)
「リトル・ミス・サンシャイン」(公開中)
「クィーン」(4月公開)
作品の規模、カラーは異なりますが、どれも甲乙つけがたい見応え十分の作品ばかり。その中であえて私が受賞の可能性が濃厚だと思ったのは、「バベル」でした。人間って、どうしようもなく寂しい存在なのかもしれないけれど、だからこそ、自分以外の人とのつながりが大切なんだと、そんなことをふと思った作品。余韻を残す結末がまた、アカデミー会員好みかも(笑)。
今月25日(日本時間26日)に、いよいよ発表です。次週は受賞結果&勝率(?)をご報告します。あなたは、どの作品だと思いますか?
全米アカデミー賞 オフィシャルサイト http://www.oscar.com
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2007-02-23 【映画】 | 固定リンク
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が、“無冠の名監督”とまで言われたマーティン・スコセッシは、6度目のノミネートで作品賞、監督賞というもっとも偉大な賞を受賞することができたことは、すばらしかったです。おめでとう。 [続きを読む]
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