これは現実か? はたまた夢なのか? 「スターフィッシュホテル」&「ユメ十夜」

今週ご紹介する映画のキーワードは、“夢”と“小説”。一方の主人公は、人気ミステリー作家の小説を愛読し、悪夢に悩まされる会社員。もう一方は、あの文豪・夏目漱石が書いた“夢”をテーマにした小説。現実と夢の境目が判然としない幻想的な世界に、あなたは何を思いますか?
有須(アリス/佐藤浩市)は建築会社の会社員。設計事務所に勤める妻ちさと(木村多江)と、ちょっと裕福で穏やかな生活を送っていた。しかし、今では仕事や妻への情熱は消え、どこか乾いた毎日だ。そんな彼の楽しみは、人気作家黒田(串田和美)の描く幻想的なミステリー小説を読むこと。そのせいか、毎晩悪夢にうなされていた。ある日、妻が失踪する。そして現れた、ウサギの着ぐるみ姿の男(柄本明)。時を同じくして出版された黒田の新刊のタイトル「スターフィッシュホテル」は、有須が2年前の東北出張で、佳世子(KIKI)という女性と関係を持ったホテルの名前だった。さらに、妻の行方を捜す有須の行く先々で殺人事件が起きる。これは現実なのか、悪夢の続きなのか……? 有須がたどり着く結末とは?
アリス(=有須)にウサギとくれば、思い出すのは『不思議の国のアリス』ですよね。現実をどこか冷めた眼差しで眺めていた有須は、物語のアリス同様、ウサギ男の後を追うように“不思議の国”のような“現実”をさ迷います。
でも、それは本当に“現実”なのか? 彼の見る悪夢と目覚めている間に起きる出来事は、どこまでが事実で、どこからが虚構なのか。境目は、次第に曖昧になっていきます。
妻はなぜ失踪したのか? つきまとうウサギ男は何を知っているのか? そして、新刊小説に描かれているのは、まさしく今、自分の周囲で起きている出来事。いったい、なぜ? 彼の疑惑は膨らみ、孤独と焦燥にさいなまれます。
監督ジョン・ウィリアムズが日本在住の英国人という経歴のせいか、邦画にはないムードが物語をさらに幻想的に彩ります。「幻想的」とは言っても“夢落ち”などではなく、事件はちゃんと論理的な結末を迎えますので、安心して(?)見てください(笑)。
妻の失踪や殺人事件が解決し、すべてが結末を迎えたかに見えた後、実は物語にはまだ続きがありました。そのエピローグの意味は、見る人それぞれに委ねられているのです。あなたは、どう解釈するでしょうか?
「スターフィッシュホテル」 2月3日(土)~、シネマート六本木他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.starfishhotel.jp

静かに暮らす作家・百閒(松尾スズキ)と妻(小泉今日子)。しかし、突然妻が別れを告げる<第一夜>。口の悪い和尚(中村梅之助)を恨みながら、悟りを開こうと侍(うじきつよし)は悪戦苦闘するが<第二夜>。夜泣きした子供を背負って夜道を歩く漱石(堀部圭亮)が、ふいに思い出した恐ろしい過去とは<第三夜>。子供が全員“神隠し”にあったという田舎町に講演にやって来た漱石(山本耕史)に、少年時代の切ない記憶が甦る<第四夜>。町一番の色男・庄太郎(松山ケンイチ)が出会った美女(本上まなみ)の恐ろしいヒミツとは<第十夜>--それぞれに語られる、「ユメ十夜」の物語。
「こんな夢を見た」で始まる夏目漱石の短編集『夢十夜』は、漱石が、 「この作品が理解されるには100年もの永い年月がかかるだろう」と、知人への手紙に記した作品でした。それからちょうど100年。巨匠から鬼才、若手実力派まで個性豊かな、日本を代表する10組の監督(実相寺昭雄、市川崑、清水崇、清水厚、豊島圭介、松尾スズキ、天野喜孝&河原真明、山下敦弘、西川美和、山口雄大)が、これまた個性豊かな俳優陣をキャスティングして映像化したのが、本作です。
条件はただ1つ、“製作費はみな同じ”。後は原作をどう解釈しようが、どう料理しようが、十人十色。そのリクエスト通り、時代物から現代劇、ホラー・テイストからコメディ・タッチ、3D-CGアニメにサイレント・ムービーと、あらゆるジャンルが揃いました。
“夢”って、見ている時はとても理に適って納得しているのだけど、目覚めて説明しようとすると、途端にあやふやで不条理なものになってしまいますよね。それをあえて小説にした夏目漱石(もちろん、彼が本当に見た夢かどうかを確認するすべはありませんが)。さらに、映画化した製作陣。それだけでも、興味がわいてきませんか?
原作を読んだのは、10数年前の学生時代なので、私の記憶もおぼろげですが、それにしてもこんな解釈があるとは!と、驚いたエピソードも。あの世の漱石サンも、ビックリしているかもしれません。
とってもリアルな描写から、現実をはるかに超えた“向こう”の世界にポーンと飛んでいってしまっても、「そうそう、夢ってそんな感じ」と妙に納得してしまいます。そう、この映画はストーリー展開を楽しむのではなく、不条理で幻想的な世界を漂うのがおもしろいのだと思うのです。
十夜もの夢があれば、きっとあなたの琴線に触れる1本があるはず。夢の解釈はあなた次第。もちろん、解釈なんかしなくてもいいのです。何でも言い合える友達同士で見に行って、あれこれ話すもよし。1人で行ってじっくり堪能するもよし。夏目漱石ってどんな人?と考えるもよし。まあ、まずは不思議な世界を味わってみてください。
「ユメ十夜」 1月27日(土)~、シネマスクエアとうきゅう他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.yume-juya.jp
(c)2006「ユメ十夜」製作委員会
ところで先日、第79回全米アカデミー賞のノミネートが発表されました。そこで、来週から2月25日(現地時間)の発表まで、またまた恒例の受賞予想をしたいと思います。さて、あなたの予想は? どうぞ、お楽しみに。
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2007-01-26 【映画】 | 固定リンク
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