もし、ちがう時代に生まれていたら……?「マリー・アントワネット」&「夏物語」
現代の日本を生きる私たちが、“激動の時代”を身をもって実感することはあまりないですよね。でも、例えばニュースでイラクなどの世界情勢を聞くと、ふいに身近に感じることはありませんか? 今週は、時代に翻弄された人たちが主人公。国も時代もまったく異なりますが、なすすべもなく時代の波に巻き込まれてしまった人たちのドラマです。
1755年、オーストリア皇女として誕生した「マリー・アントワネット」(キルスティン・ダンスト)は、母のマリア・テレジア女帝(マリアンヌ・フェイスフル)の命令で、たった14歳で15歳のフランス王太子ルイ(ジェイソン・シュワルツマン)の元に嫁ぐ。服や持ち物、愛犬まで故国のものはすべて取り上げられ、たった1人で見知らぬ土地に足を踏み入れた少女を待っていたのは、豪奢な生活と、やがて来る、想像もつかないほど過酷な激動の時代だった。4年後、ルイ15世(リップ・トーン)が崩御し、王太子がルイ16世として即位する。18歳で王妃となったマリー。フランス革命までは、あと15年――。
30~40代前後の女性は、このあたりの史実に妙に詳しいのではないでしょうか? かく言う私もその1人。そう、それはみんな「ベルサイユのばら」のおかげ(笑)。原作コミック、宝塚歌劇団の舞台、TV&劇場版アニメと、当時、ホントに一大ブームを巻き起こし、それは今もなお続いています。
本作の脚本を自ら書き、メガホンをとったのはソフィア・コッポラ。前作「ロスト・イン・トランスレーション」で日本のホテル、パークハイアット東京を舞台に撮影したことが話題になりましたが、今回はなんとヴェルサイユ宮殿での撮影を実現させたのです。フランス政府の大々的な協力で、通常は立ち入り禁止の部屋も開放。そのかいあって、豪華絢爛な時代が完全に再現され、見応え十分です。
加えて、美しい衣装の数々。いわゆる時代物にありがちな重々しくどっしりしたものではなく、眩しいほどに明るくポップな色彩感覚で、マリーの若々しく元気なキャラクターを一層引き立てます。元々ファッションの仕事をしていた監督だけあって、そのあたりはお手の物。今までのコスチューム・プレイにはなかった味付けとなっているのです。
それにしても思うのは、こういう時代に生まれた彼女の不運。そりゃ、浅はかで考えナシな女の子です。でも、14歳の、現代日本ならば、まだ中学生。たった1人で異国に嫁ぎ、「オーストリア女」だとか、「不妊症」だとか聞こえるように陰口を叩かれ、プライバシーは1つもなく、唯一頼れるはずだった夫は頼りなく、心の支えになるはずの実母からも、「子供を生まなければ、あなたの立場はない」とまで言われ、彼女はどうすればよかったのか。
浪費家の側近たちにそそのかされ、ちょっと(?)ショッピングに走ったり、夜遊びやゲーム(=ギャンブル)に興じても、仕方なかったんじゃないか――。国民が、自由や権利という意識に目覚め始める時代でなかったら、やり直すチャンスもあったかもしれないのに。
現代に生きる私たちと変わらない感覚を持つ女の子として、生き生きと描き出されたマリー。もし、ちがう時代に生まれていたら? そんなことを思わずには、いられません。
「マリー・アントワネット」 1月20日(土)~、日劇3他、全国公開
オフィシャルサイト http://MA-movie.jp
(c)2005 I Want Candy LLC.
この機会に、伝説のコミック「ベルサイユのばら」を一気読み!
http://www.s-book.com/plsql/com2_series?tid=908855133
60歳を超えて独身を貫く元大学教授ソギョン(イ・ビョンホン)。彼の元を、かつての教え子でTVの放送作家をするスジン(イ・セウン)が訪ねてきた。番組でソギョンの初恋の女性を探したいというのだ。彼には生涯忘れられない「夏物語」が1つだけあった。それは、人類が初めて月面に着陸した1969年の夏。軍事独裁政権下にある韓国・ソウルの大学生だったソギョンが、ボランティア活動で滞在した農村で出会った、村の図書館司書ジョンイン(スエ)という女性との日々だ。彼女を探すためのわずかな手がかりをたよりに、スジンはプロデューサーのキム(ユ・ヘジン)と共にかつての農村へ向かうが……。
ご存知の方も多いと思いますが、つい20数年前まで、韓国は軍事独裁政権下にありました。1961年に軍事クーデターで政権を握ったパク・チョンヒが1963年に大統領に就任後、1979年に暗殺されるまで(暗殺犯は側近の中央情報部長)、独裁状態にあったのです。
当時の韓国憲法では大統領の三選(3期目の就任)は禁止。それを改定し三選を目指す大統領に、野党や学生を始めとした知識人は猛反発。各地でデモが繰り広げられていました。北朝鮮に対する方針も、今の「太陽政策」とは逆の強硬な態度で、共産主義的思想を持つ人々は「北のスパイ」や「アカ」と呼ばれ、不当逮捕も日常茶飯事。スパイ罪で投獄されることもあったのです。
裕福な家庭のお坊ちゃんだったソギョンは、周囲の熱心な活動家とは違って何のポリシーも持たない、のんびりした大学生でした。その彼が、友人に連れて行かれた農村活動で、生涯唯ひとつの恋に落ちてしまうのです。でもその相手は、父親が北朝鮮に亡命したという「スパイの娘」。何のしがらみも計算もなく、少しずつ距離を縮めていく微笑ましい2人に、時代は容赦なく立ちはだかります。
歴史に「もし」は禁物だと言いますが、でも、もし、2人がもう十数年遅く生まれていたら――ひと夏の物語は思い出だけに終わらず、次の夏、また次の夏へと積み重ねていけたかもしれなかったのに。
イ・ビョンホンが1年半の充電期間を経て選んだラブ・ストーリーは、無邪気な青年時代が私たちをよけいに切ない気分にします。それにしても、20代のお茶目でユーモラスな表情がとってもかわいくて、さわやかなのですが、妙に歯が白いんですよねえ。あまりに白くて、彼が笑うたびに視線が引き寄せられてしまいました(笑)。ストーリーに全然関係なくて、スミマセン。
「夏物語」 1月27日(土)~、シネマート新宿他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.natsu2007.jp
(c)2006 KM Culture co. Ltd, All Rights Reserved.
完全ノベライズ本も発売中。http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=4087605191
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2007-01-19 【映画】 | 固定リンク
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» 그해 여름(夏物語)二度目の鑑賞日記 トラックバック Designare☆Lee Byung-Hun
実は、日曜日「夏物語」二回目鑑賞に行って来ました。
あはは。
まともな主婦のやる事じゃないですね^^;
さすがに2日続けて行くとは、家族に言えず、お見舞いに行く用事があったので、それを口実に家を出て、その前にちょっと行って来ました。
そんなわけで、本編が始まってから入場し、エンドロールを見ずに退場したので、私が居る間は館内は闇の中で、どんな方が座っていらっしゃるのか見えなかったのですが、初日にはなかった男性の笑い声が、けっこう沢山聞こえたので、「日曜日なだけに、夫婦連れが多いのかな?」と思い... [続きを読む]
トラックバック送信日 2007/01/30 2:24:25

コメント
こんばんは。
はじめまして。
>もし、ちがう時代に生まれていたら……?
面白い切り口のレビュー、興味深く読ませていただきました。
ビョンホンファンなので、「夏物語」は2度も観ましたが、マリーアントワネットは未見ですので、鑑賞してみようかなと思います。
ありがとうございました。
TBさせて下さいね。
投稿: milky | 2007/01/30 2:22:55
milkyさん
読んでいただいて、ありがとうございます。
もう2度もご覧になっているなんて、さすが!
韓流ブームは一段落といった感じですが、まだまだみなさん、熱いですね。
また、機会がありましたら韓国映画もご紹介したいと思います。
投稿: 加藤アカネ | 2007/02/01 12:13:23