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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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パートナーに支えられながら、自分の道を歩んだ人たち 「敬愛なるベートーヴェン」&「ヘンダーソン夫人の贈り物」

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今週は、実在の人物を主人公にした作品をご紹介します。1人は、知らない人はいない超有名人ですが、もう1人は日本ではあまり知られていないかも。2人とも周囲の目や噂にとらわれることなく、パートナーとともに自分の信じる道をしっかりと歩んだ人たちです。

1824年ウィーン。『交響曲第九番』の初演まであと4日と迫っているのに、ベートーヴェン(エド・ハリス)はまだ肝心の合唱部分を完成させていなかった。途方に暮れた音楽出版社のシュレンマー(ラルフ・ライアック)は、音楽学校に一番優秀な学生を写譜師(作曲家が書いた楽譜を清書する人)としてよこすよう依頼するが、やって来たのはアンナ(ダイアン・クルーガー)だった。若い女性に“野獣”ベートーヴェンとの仕事が務まるはずがないと追い返そうとするが、作曲家を志すアンナはベートーヴェンと聞いて目を輝かせる。「敬愛なるベートーヴェン」と仕事ができるチャンスは、これが最初で最後かもしれないのだ。訪ねてきた写譜師が女性だったことにベートーヴェンは激怒するが、彼女の才能を知り、不承不承ながら仕事をまかせることに――。

クラシック音楽に詳しくなくとも、ベートーヴェンと言えば、『エリーゼのために』や『交響曲第五番 運命』など、聞けばすぐわかる名曲の数々や、教科書に載っていたライオン・ヘアと眉間に深いシワの肖像画で思い出す人も多いのではないでしょうか。

気難しい不世出の作曲家の晩年(映画では54~57歳)は耳が不自由で、家庭的にも恵まれず、あまり幸せなものでなかったことが知られています。でも、当時はポピュラーな職業だった、彼を支えた写譜師3人のうち、晩年の1人だけはいまだに謎に包まれているということは知られていないかもしれません。本作は、史実に基づいたベートーヴェンの晩年に、3人目の写譜師が女性であったというフィクションを絡めた展開になっています。

溺愛する甥と自分以外の者を見下し、扱き下ろすベートーヴェンと、人柄はさておき、彼の曲を信じ敬愛するアンナ。2人の気持ちが通い合うことは到底あり得ないはずでした。でも、女性が作曲家を目指すなんて誰も信じない時代に、自分の才能を信じ、ベートーヴェンから何かを得ようと必死に食らいつくアンナは、やがてベートーヴェンの信頼を得るまでになります。

圧巻は、『第九』の演奏シーン。甥の裏切りと、不自由な耳に初めて弱音を吐いたベートーヴェンを、アンナが心身ともに支えるのです。舞台に立って指揮をするベートーヴェンへ、物陰から指揮の指示を送る彼女の姿は、指一本触れ合っていないのに、まるでラブ・シーンのよう。23歳と54歳という年齢差をものともしない、2人の信頼や愛情を込めた眼差しが艶やかで色っぽく、ドキドキしてしまいます。

演奏シーンの撮影の合間、助監督と打ち合わせるエド・ハリスの手にあったのは台本ではなく、何と『第九』のスコア(全パートが載っている指揮者用楽譜)でした。1曲丸々指揮できるほどに楽譜を読み込んだ彼の熱演に、本物の楽員たちは本物の演奏で応え、撮影終了後、エドとコンサート・マスターが握手を交わすと、全楽団員が拍手を送ったそうです。かの有名な合唱のシーンは、本当に鳥肌が立つほどの迫力でした。

なぜか年末になると、あちこちで『第九』が響き渡る世界で唯一の国・日本ですが、そういう意味でも今の季節にピッタリかも(笑)。ちょっとコンサート気分でオシャレして映画館へ行くのも、楽しいかもしれませんよ。

「敬愛なるベートーヴェン」 12月9日~、シャンテ シネ他、全国公開
オフィシャルサイト 
http://daiku-movie.com
(c)2006 Film & Entertainment VIP Medienfonds 2 GmbH & Co. KG

Movie1201_2

1937年ロンドン。夫に先立たれ莫大な遺産を手にしたヘンダーソン夫人(ジュディ・デンチ)は、ソーホー地区のウィンドミル劇場を買い、修復する。支配人として雇ったショービズ界のプロ、ユダヤ人のヴァンダム(ボブ・ホスキンス)が提案した上演方法は大成功。しかし、周囲の劇場が真似を始め、あっという間に大赤字になってしまう。めげないヘンダーソン夫人が次に思いついたのは、「洋服を脱いでしまおう!」ということだった。第二次世界大戦の最中、戦場へ赴く若い兵士にとって、「ヘンダーソン夫人の贈り物」とはどんなものだったのか。そして、女性である夫人がそれを始めた理由とは?

まだ、古式ゆかしいビクトリア朝時代の慣習が残るイギリスで、女だてらに劇場を手に入れてオーナーになるなんて、考えられないことでした。それを、軽々とやってのけたのがこの、ローラ・ヘンダーソンという実在した女性です。

最初のうちは気が合わなかったヴァンダムから、口の出しすぎで劇場の出入り禁止を申し渡された彼女が考えた劇場潜入方法は、もう爆笑モノ(詳しくは、見てのお楽しみ)です。これが、映画化の際の作り事だと思ったら、大間違い。本当に夫人が実行したことなのですから、驚かずにはいられません。

上流階級の人間ならではの大らかさなのか。それとも、彼女特有のものなのか。当時、すでに70歳。でも、年齢による分別なんて微塵も感じさせず(笑)、天真爛漫で無邪気な彼女が、舞台に立つウィンドミル・ガールズたちから母親のように慕われていたのも、なんだかわかる気がします。

女性が女性のヌードを売り物にしようだなんて、ちょっと抵抗がある人もいるかもしれません。でも、それには、ある事情がありました。それがわかったとき、あなたもきっと、ヘンダーソン夫人の気持ちがわかるのではないでしょうか。

演じるジュディ・デンチがなにより生き生きして、かわいくて、見ていて楽しくなります。衝突もあったけど、何者にも変えがたいパートナーとなったヴァンダムとのダンス・シーンがとてもステキ。イギリス女王からナイトの女性版称号デイムを与えられた大物に恐れ多いですが、あんな風に年をとりたい、なんて思ってしまいました。

「ヘンダーソン夫人の贈り物」 12月23日~、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
オフィシャルサイト 
http://www.mrshenderson.jp

 
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2006-12-01 【映画】 | 固定リンク

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