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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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あなたの心に“闇”はありますか? 「キング 罪の王」&「暗いところで待ち合わせ」

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2ヶ月前と同じ時間に帰宅しても、すっかり日が沈み暗くなっているこの頃、冬の到来を感じます。でも、同じ日暮れでも夏の闇と冬の闇は、なんだかまったく違うもののような気がしませんか? 今週は、心の中の“闇”の物語。多かれ少なかれ誰でも持っていると思うのですが、あなたの心にはどんな”闇”がありますか? 

「キング 罪の王」--海軍を退役したエルビス(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、深夜バスでテキサス南部の町にやって来た。亡き母から、そこに実の父が暮らしていると聞かされていたのだ。まだ見ぬ父との再会に胸を膨らませ、なけなしの金で中古車を買ったエルビスは、ピザ屋に就職し町外れに小さな部屋を借りると、日曜日、教会へ向かう。しかし、そこの牧師である父デビッド(ウィリアム・ハート)は、突然の“息子”の登場に困惑。美しい妻トゥワイラ(ローラ・ハーリング)と神学を志す優秀な息子ポール(ポール・ダノ)、純真な娘マレリー(ペル・ジェームズ)という素晴らしい家族に囲まれ、“皆に信頼される敬虔な牧師”である彼にとって、エルビスの存在は過去の汚点でしかなかったのだ。曖昧な態度で追い払われたエルビスは、異母兄妹であることを隠したまま、マレリーに近づく。深まる2人の関係に気づいたポールは、妹を心配しエルビスの元を訪ねるが……。

オープニングから悲劇的な結末が見え隠れする、不安な展開。それがわかっていても、最後まで見ずにはいられない不思議な力を持っています。それはやはりこの人、G・G・ベルナルの存在にあるのでしょう。

笑うと口から覗く不ぞろいな歯並びのせいか、どこかあどけなく、かわいらしく見える彼。ところが今回は、そのあどけなさが余計に背筋をゾッとさせるのです。父に体よくあしらわれた時も、激しい感情をあらわにすることはありません。でも、逆に噴火直前のマグマのような不気味さが立ち込めます。

異母兄妹であることを知りつつ、マレリーに近づくエルビス。無邪気で穢れを知らないマレリーは、優しい彼にあっという間に魅かれていきます。でも、いつもにこやかに彼女に接するエルビスの顔に感情は一切見えず、その笑顔もまるで顔に張り付いた仮面のよう。余計に彼の抱える心の“闇”の深さ、大きさが迫ってきます。

いったい、彼は何をしようとしているのか。父への復讐であることは容易に解るのですが、その手段は、自分をも傷つけるだろうに。彼の本心が見えない不安は、デビッドの家族を崩壊させていくと同時に、見ている私たちの不安をさらにかきたてていきます。

“すべて”をやり遂げ、父に語りかけるラスト・シーンのエルビスの笑顔。彼がその時に何を思っているのか、その判断は見る者に委ねられているのです。あなたは、彼の表情に何を感じるでしょうか?

「キング 罪の王」 11月18日~、アミューズCQN他、全国順次公開
オフィシャルサイト 
http://www.king-movie.jp
(c)2005 Corpus, LLC All rights reserved

Movie1117_2
「暗いところで待ち合わせ」--3年前、交通事故が原因で失明したミチル(田中麗奈)は、父(岸部一徳)と2人静かに暮らしている。時々、昔からの親友カズエ(宮地真緒)と外出する他は、身の回りの家事など家の中では何の不自由もない。しかし、父の突然の死で彼女は1人に。気丈に変わらない毎日を送っていたある朝、家の向かいの小さな駅で転落事故が起きる。死亡したのは印刷会社勤務の松永(佐藤浩市)という男で、現場を走り去る若い男アキヒロ(チェン・ボーリン)が目撃されていた。松永と同じ会社に勤める日中ハーフのアキヒロを重要参考人として捜索していた警察の聞き込みに、何も変わったことはないと答えたミチル。しかし、実は事件直後、彼女がチャイムの音でドアを開けた隙に、アキヒロが家に入り込んでいたのだ。こうして、奇妙な共同生活が始まった――。

見知らぬ他人がこっそり家の中に入り込んで生活しているだなんて、気持ちが悪いと思いますよね。でも、大丈夫(?)。そんなイヤーな展開にはなりません。

突然、視力を失って“闇”の世界の住人となったミチル。一見、穏やかで落ち着いた生活を送っているように見えますが、実は1人では外出できないなど、“闇”への怯えを持っていました。追い討ちをかけるような父の死に気丈に対応しますが、ひっそりと抱えていた寂しさや絶望が、時間が経つに連れて少しずつ見えてきて、切なくなります。

演じるのは、実際に視覚障害者のリハビリ施設にも通ったという田中麗奈。スクリーンを通して見る観客が“見えていない”ように“見えなければいけない”ため、執拗なテストと撮り直しが重ねられました。ある食事シーンでは、何回ものテストで茶碗の中がすっかり空になっていたのにも気づかなかったとか。そこまで“見えていない”状態になって役に入り込み、撮影に臨んでいたそうです。そうして生まれたミチルはとても自然で、泣いたり叫んだりしなくても、彼女の感情が切々と伝わってきます。

一方、殺人の嫌疑をかけられたアキヒロも、“闇”を抱えていました。日本語が不自由で生真面目なために自然とつき合いが悪くなり、仕事を押しつけられたり、いやがらせを受けていた(その中心人物となる松永を演じる佐藤浩市が、まあホントにイヤラシイ人間で、お見事!)彼が、心にふと抱いた殺意。まるで“闇”が“闇”を呼び込んでいるようです。

形は違っても“闇”を抱える者同士が、期せずして始めた共同生活。ミチルは彼の存在にいつ、どうやって気づくのか。転落死亡事件の真相を追うというサスペンスの要素もはらみながら、話は展開していきます。

異常な状況ではありますが、ミチルがアキヒロの存在に気づいたとき、孤独だった2人の世界はほんの少し広がり始めます。きっと2人の抱える“闇”は冷たく寂しいものではなく、ほんの少し温かく優しいものに変わっていくに違いない。そんな希望のもてるラストにホッとしました。

「暗いところで待ち合わせ」 11月25日~、シネスイッチ銀座他、全国公開
オフィシャルサイト
http://www.kuraitokorode.com
(c)2006 “Waiting in the Dark” production comittee

 
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2006-11-17 【映画】 | 固定リンク

コメント

「暗いところで待ち合わせ」は、小説で出たときからストーリーの奇抜が気になっていたんですが、まだ未読でした。メレンゲが歌う主題歌もいい感じだし、かなり興味あります。見たい。

投稿: さと | 2006/11/21 23:33:56

さとさま
コメントありがとうございます。
見知らぬ他人が家の中に入り込んで生活するなんて、一見ゾッとしますが、おもしろく出来ています。サスペンス色もたっぷりで楽しめると思いますので、ぜひ。

投稿: 加藤アカネ | 2006/11/26 14:01:11

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