人生やっぱり、愛でしょ、愛! じんわり沁みてくる「幸せのポートレート」&「美しい人」
今週は、テイストはまったく違うけれど、複数のヒロインが登場する「愛」の物語です。見た後は、温かいものが、心にじんわり沁みてくる。ちょっと切ないけれど、幸せな気分になれるはず。
あなたも、経験ありませんか? できたら飛ばして次に行ってしまいたい(笑)、と願うくらい緊張する、初めての彼のご両親との対面。「幸せのポートレート」は、それが始まりです。クリスマスに恋人エヴェレット(ダーモット・マローニー)の実家を訪れた、バリバリのキャリア・ウーマン、メレディス(サラ・ジェシカ・パーカー)。しかし、開けっぴろげで冗談好きなストーン家の人々(母シビル=ダイアン・キートン、父ケリー、4人の弟妹)にとって、マジメで堅物で神経質な彼女はまるで異世界の人間だった。完全に浮いてしまったメレディスは、助けを求めて妹ジュリー(クレア・デインズ)を招くが、ストーン一族はジュリーとは意気投合。疎外感を強めたメレディスは、無神経な会話で家族を傷つけてしまう。たまらず家を飛び出すが……。
メレディスの置かれた状況に、共感しちゃう人も多いのでは。両親ばかりか、にぎやかで個性的な弟妹と、その恋人&子供というおなじみのメンバーの中に、恋人が一緒とはいえ、たった一人の新参者として参加するのです。緊張しない人は、そうそういないでしょう。
彼女に嘘はなく、誰かを陥れようという作為もなく、ただ、彼の家族に気に入られたいと願うばかり。でも、家庭的な集まりにビシッとスーツにピンヒールで決め、一筋の乱れもないひっつめ髪というスタイルは、すでに壁。おまけに場の空気がまったく読めない発言の数々は、彼女がマジメなだけにハラハラするやら、おかしいやら。見ているうちに、彼女と一緒に居たたまれない気分になってしまいます(笑)。
そんな彼女をエヴェレットは必死にかばいますが、歯車は噛みあわなくなる一方。互いに“理想的”だと思っていた結婚なのに。2人の時は気にならなかったことが、こんなにクローズアップされてしまうなんて。でも、これって実は他人事じゃないのかも。自分でこうだ、と信じていることは、ホントに大丈夫なのでしょうか? もしかしたら、ただの思い込みかも…そんな不安がチラリとよぎります。
飛び出したメレディスを捜すうち、彼らはそれぞれの「真実」に気づき始めます。自分の本当の気持ちはどこにあるのか。本当は、どうしたいのか。それぞれが、自分を見つめ直すのです。
ストーリーだけ追うと、ドタバタ喜劇のようですが、そうならないのは母役D・キートンの存在があるから。ストーン家の要である彼女は、物語の要でもあるのです。夫を愛し、子供たちを心から慈しむ彼女の存在が、ちょっと出来過ぎのエンディングを素直な気持ちで受け止めさせてくれます。やっぱり、人生で一番大切なものは、愛。そう、言いたくなる物語です。
「幸せのポートレート」7月15日~、シャンテシネ他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.foxjapan.com/movies/familystone
(c)2005 TWENTIETH CENTURY FOX
「美しい人」は、9話のエピソードからなります。一日も早く出所するため、模範囚を目指すサンドラ(エルピディア・カリーロ)。夜のスーパーで、偶然昔の恋人と再会したダイアナ(ロビン・ライト・ペン)。父との確執から飛び出した家に、不意に戻ってきたホリー(リサ・ゲイ・ハミルトン)。訪問した友人宅で、思いがけない夫の本音を聞かされたソニア(ホリー・ハンター)。車椅子の父と、その介護に疲れ切った母(シシー・スペイセク)と暮すサマンサ(アマンダ・セイフライド)。葬儀で元夫と久しぶりの再会を果たしたローナ(エイミー・ブレナマン)……。9名の女性たちそれぞれの、人生。彼女たちは何を思い、何を感じ、どこへ行こうとしているのか。
9人のヒロインの物語は、一部の登場人物を除いては何の繋がりもなく、独立しています。彼女たちにどんな過去があって、今に至っているのか。そして、この後はどうなっていくのか。説明はありません。
例えば、サンドラはなぜ刑務所にいるのか。「今でも、一番愛している」と言う元恋人とダイアナは、なぜ別れてしまったのか。そして、この再会は2人に転機をもたらすのか。そんな数々の疑問が、答えの出されないまま、ただ提示されるだけ。唯一わかるのは、彼女たちが生きてきて、そして、これからも生きていくのだろう、ということ。そう、この映画は、切り取られた人生の、ほんの一瞬が描かれているのです。
その一瞬に、私たちは何を感じるのか。あるいは、何も感じないのかもしれません。それは、すべてあなた次第。よくある、うるさいくらいに説明された映画に馴染んでしまっていると、「だから、何なの?」と、文句の一つも言いたくなるかも。
私の印象に残ったのは、最終章でした。墓参りにやって来たマギー(グレン・クローズ)と娘マリア(ダコタ・ファニング)。たわいのない会話をしながら、小さな墓の前にシートを広げ、マリアの大好きな葡萄を食べる2人。その思いがけないラストに胸を衝かれました。
1話あたり僅か10数分のエピソードですが、語られていない部分までも感じさせるのは、さすがの女優陣。1話あたり2日間、計18日間という驚くほど短い撮影期間が、さらに濃密な時間を産み出したのかもしれません。人生はままならない。でも、小さくても希望もある。彼女たちの人生に、あなたの思いを自由に馳せることのできる、大人の物語です。
「美しい人」7月1日~、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.elephant-picture.jp/utsukusii
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2006-06-23 【映画】 | 固定リンク
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