最新のCGが、さらに物語を盛り上げる 「カーズ」&DVD「ALWAYS 三丁目の夕日」
年々、驚くほどの進歩を遂げているCG技術。かつては、「どうだ、すごいだろー」的な使い方が目立ちましたが、最近は、「え? これCGだったの?」と、実写と区別がつかないことも。今週は、最先端CGが楽しめる2作品をご紹介します。
「カーズ」の主人公は、レーシング界の最高峰ピストン・カップの優勝を狙うライトニング・マックィーン。自他共に認める天才ルーキーだが、傲慢でスタッフたちとたびたび衝突を繰り返し、すでに3人ものクルー・チーフを解雇していた。シーズン最後を飾る、カリフォルニアでの優勝決定戦出場のために移動中だったマックィーンは、トラブルに遭い、たった1人でルート66沿いの町ラジエーター・スプリングスに迷い込む。高速道路の建設ですっかり寂れてしまった町には、個性豊かで優しい住人たちがいた……。
今までにも、“おもちゃの世界(「トイ・ストーリー」)”、“モンスターの世界(「モンスターズ・インク」)”、“サカナの世界(「ファインディング・ニモ」)”と豊かな発想で感動的な物語を生み出してきたディズニー/ピクサーが、この夏贈るのは、“クルマの世界”です。
正直言うと、最初に“車”と聞いた時に「あらら」(笑)と思った私。だって、車のキャラクターなんて、どう考えてもかわいくない。同じくそう考えた人は、大勢いたのではないでしょうか。でも、そんな心配は無用でした。さすが、世界的な安心ブランド(笑)。クルマという無機的なモノでも、こんなに個性的で、魅力的に描くことができたのです。
ちょっと動いただけで、豊かに感情を表すボディや顔(=フロントガラス)。その表情や仕草は、ちゃんと男女の性別(?)まで見分けられるのです。それでいて、メタリックなボディは本物そのまま。見ているうちに、実写なのかCGなのか、わからなくなってくるほど、リアルなのです。
その感覚はキャラクターだけでなく、スピード感溢れるレース・シーンや、背景を飾る自然描写にもありました。これこそ、“驚異的”という言葉がぴったり。でも、一番スゴイのは、そんなことを考えていたのはほんのちょっとの間だけ、ということかもしれません。
監督ジョン・ラセターが、「私たち自身が見つけたことをベースにすることが大切」と語る、誰もが共感できるストーリーは、大人から子供まで楽しめるはず。明るくお茶目な町の住人たちや、F1グランプリの現役チャンピオン、ミハエル・シューマッハを始めとする実在レーサーたちのカメオ出演(もちろん声)、小道具(なんと昆虫までクルマ型!)などなど、あちこちに遊び心もいっぱいです。ストーリーにちょっぴり説教臭さを感じる人もいるでしょうが、それでも、ディズニー/ピクサー作品は魅せてくれます。もちろんCGだけではなく。一見の価値は十分アリ。ぜひ、劇場で。
「カーズ」7月1日~、日比谷スカラ座他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.cars-j.com/
(c)2006 Disney Enterprises, Inc./Pixar Animation Studios.
「ALWAYS 三丁目の夕日」の舞台は、昭和33年。自動車修理工場を営む鈴木一家(堤真一、薬師丸ひろ子、小清水一揮)と向かいの作家くずれの駄菓子屋主人・茶川(吉岡秀隆)を中心に、集団就職で青森からやって来た六子(堀北真希)や、母に捨てられた少年・淳之介(須賀健太)、飲み屋のマドンナ・ヒロミ(小雪)、町医者・宅間(三浦友和)、煙草屋のおばちゃん(もたいまさこ)など、個性的な住人たちが繰り広げる、ほのぼのと優しい物語です。
昨年の公開時に260万人を動員し、興収32億円を突破、日本アカデミー賞12部門を独占した大ヒット作の主人公は、実は人間だけではありません。建設中の東京タワーの周囲にはまだ高層建築物は1つもなく、TVを購入すれば近所の住民がお祝いを持って見に来る時代。主婦は三種の神器(TV、冷蔵庫、洗濯機)をそろえることを夢見て、力道山の活躍に日本中が熱狂した時代。日本が敗戦からたくましく立ち上がりつつある昭和33年、その時代こそが、もう1人の主人公なのです。
当時を再現するため、車や小道具、商店の商品に至るまで、細部にわたってこだわり抜いたのも本作の見所の1つ。ただ、どうしてもセットによる街並みには限界がありました。その限界を取っ払ってしまったのが、CGです。
実際にスタジオに作ったセットとCGを合成した架空の町「夕日町三丁目」は、どこまでがセットでどこからがCGなのか、見ているだけではわからないほど。その種明かしをしてくれたのが、DVD豪華版に入っている特典映像ディスク。CG合成前後のビフォー・アフターを、画面を二分割して見せているので、わかりやすく、同時に驚かされます。
CGはここまで来た、と実感しましたが、実は映画を見ている間にそんなことはほとんど考えていませんでした。心が揺さぶられたのは、貧しいけれど、泣いたり、笑ったり、自然に、素直に、一生懸命に生きている彼らの物語に、でした。まるで、心が深呼吸しているみたいな感覚。そして、我に返るのです。ずっと豊かで快適な現代を生きる自分が、なぜ、こんなに羨ましいような気持ちになってしまうのか。当時を知らないのに、なぜ懐かしく感じるのか。それは、何かが失われてしまったからなのでしょうか? ほのぼのしながらも、ドキリとした瞬間でした。
2作ともCGが大きな役割を果たしていますが、やっぱり良い映画は、良い脚本とスタッフ、キャストから出来ているもの。CGなど最先端の技術は、あくまで物語を語るための道具なのです。そんな当り前のことを、再認識。でも、そうは言っても、技術が進歩すれば、見たことのない世界を見られるかもしれない。それもやっぱり、楽しみなのです。こんなふうに両方を楽しめるのは、映画だけかも。これからも、ワクワク、ドキドキしたい。あなたも、ぜひ。
DVD「ALWAYS 三丁目の夕日」
豪華版 7,140円(税込)/通常版 3,990円(税込)で発売中
オフィシャルサイト http://www.always3.jp
(c)2005「ALWAYS 三丁目の夕日」製作委員会
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