疾風怒濤の劇的人生! 精一杯愛した彼女たちの姿はひたすら哀しく、そしてカッコいい 「ナイロビの蜂」&「嫌われ松子の一生」
2週間のご無沙汰です。気持ちも新たに、リニューアル第1回目は劇的な人生を送ったヒロインの物語。彼女たちが迎えた結末は、「悲劇」かもしれません。でも、ちょっとうらやましくも思うのです。だって、これほど精一杯生きて、愛した彼女たちに、後悔はないでしょうから。
「ナイロビの蜂」は、突然の妻の死から始まります。ジャスティン(レイフ・ファインズ)は、ケニアに勤務する英国外務省一等書記官。妻テッサ(レイチェル・ワイズ)は、現地の医療施設改善のための救援活動を精力的に行っている。その彼女が出張先で殺害された。警察は、同僚医師による不倫の末の犯行と断定。だが、ジャスティンには疑問が残る。なぜ、妻は殺されなければならなかったのか? 彼女が本当に愛したのは、誰なのか? 生前のテッサの行動を追ううち、彼は大手製薬会社の薬物実験の噂を耳にする。そこには大きな陰謀が隠されていた――。
実は、最初メロドラマかと思った私。でも、そんな単純な話ではないのです。大手企業の陰謀や政府との癒着、情報部員に暗殺者まで登場し、途方もない広がりを見せます。
事なかれ主義で他人との間に波風を立てないよう行動し、趣味は庭いじりという穏やかな日々を過ごしてきたジャスティン。でも、テッサの死で日常は一変します。彼女の不倫を信じられないジャスティンにとって、死の真相は2人の愛を確かめる唯一の道。彼は、生前の妻がどんな活動をしていたのか、調べ始めるのです。
夫とは対照的に、アグレッシブな性格で他人とぶつかることを厭わず、何事にも正面から向かっていくテッサがとても魅力的。物語の展開上、彼女はもうこの世に存在していないのですが、ジャスティンが彼女の人生をなぞるように追体験していくことで、彼女は単なる回想を超え、生き生きと甦ります。演じたR・ワイズが、アカデミー助演女優賞を受賞したのも納得の存在感です。
いったいテッサは何をしていたのか。なぜ、夫に何も打ち明けなかったのか。全てが明らかになったとき、彼女がいかに大きな愛を抱く女性だったかがわかり、心が震えます。同時に、夫に全てを伏せて行動せずにはいられなかった彼女の強さと優しさが、切なく哀しい。でも、この世を去ってから、改めて夫に自分を理解させ、惚れ直させた女性なんて、そうはいないでしょう。ジャスティンは、彼女によっていかに生きるべきかを悟ります。彼が幻のテッサと過ごす穏やかな表情が、とても印象的でした。
「ナイロビの蜂」5月13日~、丸の内プラゼール他、全国松竹・東急系にて公開
オフィシャルサイトhttp://www.nairobi.jp
(c)2005 Focus Features, LLC
◆原作「ナイロビの蜂」(集英社刊・全2巻)のご購入はこちらから。
http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=4087604500
http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=4087604519
「ナイロビの蜂」のシリアスな語り口とは対照的に、まるで雪だるまのようにドン底へ転げ落ちていく人生を、コミカルにテンポ良く描いた、「嫌われ松子の一生」。主人公は、昭和22年、福岡県に生まれた川尻松子(中谷美紀)。父(柄本明)の望み通り、小学校教師となった彼女は、生徒たちの人気も高く順風満帆な日々を送っていた。しかし、問題児・龍洋一の起こした窃盗事件をきっかけに辞職する羽目に。家を飛び出した松子は、作家の卵・八女川(宮藤官九郎)と同棲を始めるが…。
教師を辞め、家を飛び出してから、松子の人生は転落の一途をたどります。どうしようもない、ダメ男にのめり込んでは裏切られ、何度も何度も「これで人生が終わった」と思う松子。でも、彼女は懲りずに、また次の恋に落ちるのです。
そのメゲなさぶりにはあきれるやら、笑ってしまうやら。彼女の人生を羨む人は、おそらく1人もいないでしょう。私だって、そう。でも、その反面、ちょっと考えるのです。松子は、不幸なのだろうか? 彼女は毎回毎回一途で真剣で、心底幸せな気持ちで人を愛しています。それほど想える相手に(しかも、何度も何度も)出会えた彼女は、もしかしたら、幸せだったんじゃないか?
暴力を振るわれ、裏切られ、捨てられ、挙句の果てに殺人を犯し、刑務所に入った松子。それでも、彼女は新しい愛を信じて立ち直ります。周囲に、「あんな男はダメ」「別れたほうがいい」と言われても、心のままに生きる松子。そう、「彼についていくことが私の幸せなの!」という言葉は、嘘偽りのない、彼女の本心なのです。
もうちょっと、要領よく、利口になればいいのに。私だったら、こんな選択しない。そう言いたくなるほど、切なく哀しい松子の一生。でも、同時に、どこか潔くカッコよくも思えてきます。
もし、これがシリアス物だったら、とんでもなくヘビーでつらくて、見ていられないかも。でも、お笑い芸人やミュージシャンなどの意外なキャスティングと、ミュージッククリップのような映像と音楽に味付けされたコミカルな展開に、笑わずにはいられません。演じる中谷美紀の突き抜け感も、あまりに松子にマッチしていて感動的なのです。
2作品とも結末は哀しいかもしれません。でも、後味は意外なほどに悪くない。それは、ヒロインが自分を信じ、精一杯生きているから。そして、最後に真実の愛を得るから。見終わった後は、きっと元気が出るはず。ぜひ、劇場で! また、どちらとも原作アリです。これは、読み応えありそう。こちらもあわせて、どうぞ。
「嫌われ松子の一生」5月27日~、全国東宝洋画系にて公開
オフィシャルサイトhttp://kiraware.goo.ne.jp
(c)2006 「嫌われ松子の一生」製作委員会
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2006-05-12 | 固定リンク
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