ある日突然、封印していた過去をつきつけられたら…?「ブロークン・フラワーズ」&「隠された記憶」
数年ぶりに再会した懐かしい友人に、「実はあの時、こうだった」と、思いも寄らぬ“事実”を告げられたこと、ありませんか? 子供の頃、悪意もなくやってしまった、忘れられない“悪事”の記憶は、ありませんか? 今週は、遠い過去にまつわる物語。ある日突然、封印していた過去を突きつけられたら、あなたはどうしますか?
「ブロークン・フラワーズ」の主人公は独身の中年男ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)。コンピュータで大成功を収め、悠々自適な毎日を送っていたが、同棲中の恋人シェリー(ジュリー・デルピー)は彼の気ままな性格に愛想を尽かし、出て行ってしまう。そこへ届いた差出人不明の手紙には、彼に19歳の息子がいることが告げられていた。手がかりは、ピンクの封筒と便せんに赤いタイプ文字、相手が20年前につき合っていた女性だということ。おせっかいな隣人ウィンストン(ジェフリー・ライト)の強引な勧めで、真実を確かめるために、ドンは過去の5人の女性を訪ねて全米を横断する。果たして、誰が手紙を書いたのか? 本当に息子は存在するのか?
「今さら、そんなこと言われても…」と、まったく気のないドンと、彼を強引に母&息子探しの旅に送り出す隣人ウィンストンのやりとりが傑作。「好奇心8親切心2」状態のウィンストンは、ドンにリストアップさせた5人の女性の現在を、インターネットを駆使して2日間で調べ上げ、旅行会社よろしく、飛行機、レンタカー、宿泊先の手配に加え、ドライブ中のBGMまで用意しての全行程をお膳立てするのです。インターネットでそこまでわかるの?とビックリ。このネット時代、やはり個人情報は流出しまくっているのでしょうか(笑)。
当然、ピンクの花束を携えての昔の男の突然の訪問に、「どうしてここがわかったの?」と、最初は誰もが不審顔。その後、すぐ打ち解けたり、最後まで微妙なムードだったり、またはいきなり怒り出したりと、それぞれの対応からどんな別れ方をしたのかも伺えて、それがまた笑いを誘います。その妙に居心地の悪い間は、なんだかクセになりそう。演じる女優陣はシャロン・ストーンにジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントンなど個性的実力派女優がズラリ勢ぞろいで、見応え十分です。
そこにただ立っているだけで、おかしさが漂うB・マーレイなくしては、成り立たなかった作品と言いきりたいほど、ハマリ役。ジム・ジャームッシュ監督の6年ぶりの長編は、彼をキャスティングした時点でほぼ完成していたのかもしれません。手紙の差出人は誰なのか? 息子は本当に存在するのか? でも、その結末はどうだって良いのかも。ドンの道中を一緒に楽しんでしまえば、それが全てなのです。
「ブロークン・フラワーズ」4月29日~、シネマライズ、シャンテシネ他、全国公開
オフィシャルサイト http://www.brokenflowers.jp
(c)2005 Dead Flowers Inc
「ブロークン・フラワーズ」の過去はおかしさの入り混じるものですが、「隠された記憶」は、かなりコワイ物語です。
人気TVキャスターのジョルジュ(ダニエル・オートゥイュ)は編集者の妻アン(ジュリエット・ビノシュ)と1人息子ピエロと幸せで豊かな暮らしをしている。そこに、突然届いたビデオテープと子供の落書きのような不気味な絵。ビデオには、彼らの家の玄関と人の出入りが延々と映されていた。それ以降、ビデオと絵は何度も届き、やがては勤務先や、学校にまで送られてくるように。不安は恐怖へと変わり、家族の間にも溝が生じ始めた頃、ジョルジュは封印していた遠い記憶をようやく思い起こしていた……。
美しい妻と可愛い子供。仕事も順調で、時折、友人を招いて楽しむにぎやかな食卓。まさしく順風満帆な人生。そこに突然割り込んできた、白いビニール袋に入ったビデオとワケのわからない絵。それが連日、玄関に置かれているのです。イタズラにしてはあまりに執拗。誰が、何の目的で? 何の要求もないメッセージは、家族の苛立ちを募らせます。
目的がわからないだけに、見ている私たちにもジワジワ不安が迫ります。何か恐ろしいことが起こるのではないか? その不安をさらに煽るように、時折、フラッシュバックする誰かの記憶のような映像。それは、誰のものなのか?
ビデオに導かれるように、映像の場所を探し当て、訪れたジョルジュには、ある心当たりがありました。それは、まだ子供の頃の遠い記憶。 両親すら知らない、自分と相手だけが知っている過去。それは、ジョルジュにとって、人生の唯一の汚点なのかもしれません。
種明かしになってしまうので、あまり詳しくは言えませんが、ビデオの送り主が誰かということと、その目的は、最後まで見る者に委ねられています。もちろんある推察はできますが、敢えてはっきりとは示されません。その曖昧さが余計に後々まで尾を引いて、いやらしいほど。深く考えずにやったことが、もし誰かに大きな影響を与えていたら? そう考えると、これは決して他人事ではないのです。見終わった後、きっと誰かと話したくなるはず。ぜひ、親しい人とご覧ください。
「隠された記憶」 4月29日~、ユーロスペース他、全国順次公開
オフィシャルサイト http://www.kioku-jp.com
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2006-04-04 【映画】 | 固定リンク
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