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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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だって、好きなんです! 佐藤浩市2本立て 「陽気なギャングが地球を回す」&「雪に願うこと」

Movie0425_1
今週は、個人的趣味に走ります(笑)。だって、佐藤浩市サマ出演作が続けて公開になるんです。全然毛色の違う作品で、全然タイプの違う人物を生き生きとスクリーンに息づかせる彼に、あなたもハマること、間違いなし?!

「陽気なギャングが地球を回す」は、ひたすらエンタメに徹した作品。銀行で強盗に遭遇した4人が、互いの超個性的な特技に気づき、銀行強盗チームを結成した。求めるのは、お金よりもロマン。"仕事"は順調、今回も見事に成功させるが、逃走途中、待ち伏せていた4人組に戦利品を強奪されてしまう。情報が漏れていた? 裏切り者がいる? 横取りされた現金を奪還するため、彼らは奇抜な計画を実行するが……。

この4人の特技が、おもしろい。人の嘘が100%見抜ける、人間嘘発見器の成瀬(大沢たかお)。常に正確な体内時計で物事を計測し、脅威のドライビング・テクニックを誇る雪子(鈴木京香)。スリの腕前は超一流、動物をこよなく愛する大学生、久遠(松田翔太)。そして、「夢の中でもしゃべってる」(笑)という、人を煙に巻く演説の天才、響野(佐藤浩市)。実際の"仕事"に彼らの特技をどう役立てるかは、見てのお楽しみです。

響野の口グセは、「ロマンはどこだ!」。本職は喫茶店経営ですが、その店名も「ロマン」。金髪をツンツン立たせ、口説き落とした若妻(加藤ローサ)とラブラブな日々を送りながら、進展しない成瀬と雪子の仲を取り持とうと余計なことをしては、久遠に冷たーく突っ込まれる。でも、メゲずに「俺のポリシーは、大人げなく生きることなんだ!」と言い切るカワイイ彼。ともかくしゃべりまくりで、「無口でシブい俳優」というイメージは、大転換。ひっくり返り過ぎて、1回転半しちゃったような勢いです。

私が彼にハマッたのは、かれこれ十数年前。映画「トカレフ」を見て、でした。恋した人妻を我が手にするため、彼女の1人息子を誘拐し殺害するという、とんでもない男。もちろん以前から知っていましたが、特にどうということもありませんでした。それが、ほとんどセリフの無い、極悪非道で同情の余地ナシの不気味な男に、なぜかヤラレてしまったのです。ちょっと斜め下から見上げる目つきが、強烈に印象に残っています。

映画にテレビに出演作が多数ある中でも、本作はかなり異色。こんなにしゃべりまくって、お節介で、陽性のオトコは初めてじゃないでしょうか? 金髪にド派手なシャツや真っ赤なロングコート、いかにもギャングなピンストライプのスーツ等々、銀行強盗用衣装も意外なほど似合って、目に鮮やかです。

Skoop On Somebodyの主題歌のようにテンポ良く展開するノリの良いストーリーに、脇を固める一癖も二癖もある共演陣(大倉孝二、大杉漣、篠井英介、松尾スズキ、古田新太)。佐藤浩市好きじゃなくても、まったく問題ナシの超豪華エンタテインメントです。まずは、見て!

「陽気なギャングが地球を回す」5月13日~、池袋シネマサンシャイン、渋谷アミューズCQN他、全国公開
オフィシャルサイトhttp://yo-gang.com
(c)2006 「陽気なギャングが地球を回す」製作委員会

Movie0425_2
“ギャング”とは対極の佐藤浩市を楽しむ(笑)「雪に願うこと」は、北海道のばんえい競馬が舞台。ばんえい競馬とは、いわゆるサラブレッドではない農耕馬が人を乗せたソリを引くレースで、農民の祭りをルーツとする、世界でも唯一のレースです。元騎手で、今は調教師として厩舎を経営する年の離れた兄、威夫(佐藤浩市)と母(草笛光子)を捨てて東京に行き、IT産業で成功を収めた学(伊勢谷友介)。ある事情から、13年ぶりに故郷に帰ってきた学は、ひょんなことから厩舎を手伝うことに。ギクシャクした関係の兄や厩務員たちと馬の世話をするうち、彼は自分自身を見つめ直していく――。

スマートで頭が良く、一見洗練された学に対し、生意気な弟を本気で蹴り倒すほど、すぐに手が出る短気で無骨な威夫。対照的な兄弟が馬を挟んで、少しずつ互いを認めていくストーリーは、目新しいものではないでしょう。でも、ちょっとした1シーン、例えば、威夫が学に語りかける「馬を見てっと、気持ちやわくなってこねえか?」という一言など、弟への愛情と自分への自信が胸に沁みます。

学や、騎手として伸び悩む牧絵(吹石一恵)など、甘ったれた人間に対しては容赦なく鉄拳を振るう威夫が、必死に生きる晴子(小泉今日子)に対しては限りなく優しくて、羨望のため息。言葉より態度で示す威夫に、やっぱり、男はこうでなくちゃと再確認です(笑)。

移動しながら開催される実際のレースを追いかけて撮影しただけあって、ドキュメンタリーのようなシーンも、物語の骨組みをたくましくします。中でも、厳寒の朝靄の中、調教する馬から湯気が立ち昇るシーンは息を呑むほどに美しく、迫力満点。速さより力強さを競うばんえい競馬が、兄弟の人生にも重なっていくようです。

これほど対照的な人物を、過剰でなく、きちんと息づかせる佐藤浩市という人は、年々どんどん輝いていくよう。彼が出演するだけで、物語が幾重にも厚みを増していくみたい。そう言えば、某大河ドラマも、彼の役が死ぬ回まではちゃんと見てた私。きっと、これからもカッコよく年を重ねてくれるんだろうなあ。ああ、楽しみ(笑)。

さて、突然ですが、リニューアルのため、しばらくの間お休みをいただきます。また、戻ってまいりますので、懲りずにお付き合いくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。

「雪に願うこと」5月20日~、テアトル タイムズスクエア、銀座テアトルシネマ他、全国公開
オフィシャルサイトhttp://www.yukinega.com

 
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2006-04-25 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

笑って笑って、ドキドキしたら、次はじーん…と、盛りだくさん! 「寝ずの番」&「チェケラッチョ!!」

Movie0418_1今週の主人公たちは、文字通り老若男女よりどりみどり。舞台は、かたや人生の最終章を終えた人を偲ぶ、“寝ずの番(お通夜)”。こなた、4人の高校3年生がめいっぱいセイシュンする沖縄。どちらも、笑って、泣いて、ドキドキして、また笑って、と楽しめること間違いなし。絶対に“チェケラッチョ!”です!

「寝ずの番」は、上方落語界の重鎮、笑満亭橋鶴(長門裕之)の臨終から始まる。妻・志津子(富司純子)と弟子(中井貴一、笹野高史、岸部一徳、木下ほうか、田中章)たちに囲まれた橋鶴は、最期の願いも叶い(?)、穏やかに息を引き取った。通夜では、弟子たちの妻(木村佳乃、土屋久美子、真由子)も交え、親しい者ばかりで生前の師匠にまつわるいい話、笑える話、ジーンとする話が次々に語られていく。しかし、そこは噺家一家、事態は次第にとんでもない方向に……。

とにかく、初めから笑わせてくれます。まず、師匠の最期の願い。それは、「そ○が見たい」。「“そ○”ってなあに?」と、無邪気に聞いたアナタ。スミマセン。ハッキリお答えするには、ちょっとためらいが…。そうなんです、いきなり下ネタなんです。だから、師匠に誰の“そ○”を見せるかで、早速一騒動が持ち上がるのです。

下ネタ、と聞いただけで眉をしかめたアナタ。まあ、待って。私もそっち系の話は苦手ですが、これが不思議に下品じゃない。次から次へ、溢れだすように下ネタ話が出てきますが、どれもこれも、明るくて、楽しくて、生命力に溢れていて。語る人たちの度量の大きさなのか、これぞ大人の「粋」なのか。笑いながら楽しく見られちゃうのです。

演じるキャストたちが素晴しい。中井貴一のあまりの声の良さにビックリし、気風のいい木村佳乃に気持ちは晴れ晴れ。そしてとっても可愛い富司純子には、「いったい、何歳!?」と確認したくなります。監督はマキノ雅彦こと、日本映画史に残る名監督の叔父、マキノ雅弘の名を継いだ俳優、津川雅彦。彼の監督デビューを応援し、幅広い交遊録を証明せんとばかりに、堺正章、高岡早紀に加え、桂三枝、笑福亭鶴瓶、浅丘ルリ子、米倉涼子、中村勘三郎と錚々たる顔ぶれの登場も、楽しいのです(ちなみにタイトル字は緒形拳)。

久しぶりに映画館で見たのですが、予想通り年齢層はかなり高め。意外だったのはオバサマばかりでなく、もうすぐ“寝ずの番”をされちゃいそうな年齢(失礼!)の男性も多いことでした。笑いの中に感じられる、生きるということ、死ぬということをより深く味わえるのは、酸いも甘いも噛み分けたオトナならでは、だからでしょうか。でも、見逃してはもったいないくらいおもしろい。アタマの固くない、大らかなお相手とぜひ、劇場へ!

「寝ずの番」、シネスイッチ銀座他にて公開中
オフィシャルサイト
http://nezunoban.com

Movie0418_2うって変わって、「チェケラッチョ!!」は青春モノ。透(市原隼人)、哲雄(平岡祐太)、暁(柄本佑)、そして唯(井上真央)はごくフツーの沖縄の高校3年生。卒業を間近に控え、進学、就職とそれぞれの道は何となく決まりつつも、退屈な毎日を送っている。ところが、透は偶然知り合った年上の美女、渚(伊藤歩)に一目惚れ。地元で大人気のヒップホップバンド、ワーカホリックのライブで再会するや、ラップ音楽の楽しさと、女の子にモテたいという不純な動機から、哲雄と暁の3人でバンドを組むことに。バンド名は、沖縄の市外局番「098」。唯の心配をよそに、ワーカホリックの前座を務めることになるが……。

バックに流れるのはオレンジレンジの名曲の数々――とくれば、もうそのノリはしっかり伝わってくるでしょう。沖縄の真っ青な海と空にふさわしく、とにかく楽しくテンポがいい物語なのです。

透たち4人の関係が、うらやましいほどイイ感じ。透の片想いを軸に、それぞれの気持ちが重なりあい、ぶつかりあい展開します。でも不思議に、見ていても青春物にありがちな気恥ずかしさはなく、とても素直に受け止められて、なんだか嬉しくなってきます。

透にカツを入れながらも一番の理解者で、みんなからは「男前!」とからかわれるほど潔い唯は、お察しの通り、一途に透を想っています。そして、そんな彼女を静かに見つめている哲雄。この哲雄が、またイイんです。彼の笑顔がスクリーンに広がると、胸がキュンキュン、気持ちは20年前(笑)。もちろん、天然的ニブさと純情一直線な透もカワイイんですが、このちょっと冷静な哲雄がどんなふうに思い、考え、結論を出したのか。私の中では、もう一つの物語が出来上がってしまったほどです(笑)。

実際の撮影でも、この4人はかなり仲が良かったとか。そのムードはしっかり映画に反映され、楽しさがスクリーンから溢れかえります。その青春小僧たちを支える陣内孝則、平田満、柳沢慎吾、松重豊、樹木希林、大島さと子、KONISHIKI、ゴリ&川田(ガレッジセール)等々のベテラン&実力派&個性派の面々も奮闘して、楽しさは倍増です。

音楽や踊り、エキストラのおじいやおばあたちの存在が、沖縄独特の香りをさらに盛り込んで、気分はすっかり沖縄。歌って、踊って、しゃべって、精一杯生きなくっちゃ。そしたら、何も思い残すことなく、“寝ずの番”をしてもらう日を迎えられるに違いない。そんなふうに思ったのでした。

「チェケラッチョ!!」 4月22日~、全国東宝洋画系にて公開
オフィシャルサイト
http://www.ch-098.com
(c)2006 フジテレビジョン/東宝/S・D・P

 
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2006-04-18 | 固定リンク | コメント (0)

どんな困難にも負けない、しなやかで美しい女たち 「戦場のアリア」&「美しき運命の傷痕」

Movie0411_1 美しく、華奢で、今にも折れてしまいそう――もちろん、イマドキそんな表現にピタリと当てはまる女性は少ないですが(笑)、男性と比べて、女性はとかく周囲に翻弄されやすいような気がしませんか。今週は、どんな困難にあっても、つらいことがあっても、再び立ち上がり歩き出す、強くしなやかな女性たちの物語。彼女たちの姿は、きっとあなたに勇気をくれるはずです。

「戦場のアリア」の舞台は1914年、第一次世界大戦勃発後に初めてのクリスマス・イブを迎えつつも、フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍がにらみ合う“ノーマンズ・ランド”(敵対する両陣営の中間にある無人地帯)。一時帰宅を心の支えにしていた兵士や家族たちの願いは、戦況の泥沼化に打ち砕かれる。しかし、ソプラノ歌手アナ(ダイアン・クルーガー)は、ただ待つだけではなかった。職業を利用し、あちこち働きかけた結果、ドイツ軍兵士として招集された、テノール歌手の夫シュプリンク(ベンノ・フュルマン)がいるフランス前線への慰問許可を得たのだ。ようやく再会した夫との共演は、戦場に思いも寄らぬ奇跡をもたらした――。

イブの晩、わずか数メートル離れたスコットランド軍から聞こえてきたバグパイプの音色とコーラスの響きは、シュプリンクの歌声を誘い出します。そして、これをきっかけに、なんと「クリスマス一時休戦」が実現するのです。

そんなお伽話は映画の中だけ――と思うでしょう。ところが、これは実話がベース。司令部の許可を取らず、各軍の現場指揮官の判断によるものだったため、公的資料は一切存在しない、驚くべき事実なのです。実際に体験した各軍の兵士が、家族へ宛てた手紙数千通の中に記されていました。そういった資料を丹念に集め、映画化したのが本作です。

言葉が通じなくとも、音楽という世界共通の言葉は、彼らが同じ人間だということを気づかせてくれました。遥か彼方の遠い国から、宇宙衛星を使ってボタン一つで攻撃しあう、まるでゲームのような現代の戦争では、決して起こりえない奇跡。100年近くを経た今、私たちは本当に進歩し、少しは賢くなったのでしょうか? 心のゆとりすら感じられる、一時休戦の決断をした若き指揮官たちの勇気(後で事実が知れて、それぞれ厳重な処罰を受けることになるのですが)を見ていると、そんな疑問すらわいてきます。

キーとなるアナの存在はフィクションですが、実際に彼女同様、心から無事を祈り、命の危険を冒してでも、恋人や夫、息子と共にあることを願った女性たちがどれほどいたことか。「感動的」とただ涙するだけではなく、様々なことを考えさせてくれる映画です。

「戦場のアリア」4月29日~、シネスイッチ銀座、恵比寿ガーデン・シネマ他、全国公開
オフィシャルサイトhttp://www.herald.co.jp/official/aria

Movie0411_2
「美しき運命の傷痕」は、パリに住む3姉妹とその母が主人公です。2人の子供を抱えながら夫の浮気を知った長女ソフィ(エマニュエル・ベアール)。施設で暮す体の不自由な母(キャロル・ブーケ)の元に通いながら、孤独な日々を送る次女セリーヌ(カリン・ヴィアール)。妻子ある大学教授と不倫関係にある三女アンヌ(マリー・ジラン)。嫉妬に苦しむソフィは夫と愛人をホテルまで尾行し、アンヌは教授に突然の別れを告げられる。一方、セリーヌの前には1人の男性が現れたが――。

とっても泥沼状態の姉妹。ギリギリまで追い詰められた彼女たちが、どんな結末を選ぶのか。それも気になるところですが、さらに気になるのが、断片的な映像で現れる、子供時代の記憶。22年前の、彼女たちの父の死についてです。

見ている私たちにはなかなか明かされない、父の死の真相。謎をはらんだ過去が、物語をただのメロドラマにせず、ミステリアスに見せます。そして、夫の浮気に過剰な反応を示すソフィが、男性に対して異常なほど慎重なセリーヌが、父親ほどの年齢の教授を愛したアンヌが、消えることのない傷を抱えて成長してきたこともわかって、ちょっと切ないのです。

演じる女優陣が圧巻。E・ベアールを中心に、登場する男優の影が薄く感じるほど、エキセントリックで強烈です。物語は姉妹を中心に展開していくのですが、ラストシーンでそれを一気にひっくり返したのが、母親役C・ブーケでした。

あの「007」シリーズでボンド・ガールを演じたこともある華やかな女優さんですが、今回は車椅子姿で、話すこともできない白髪頭の老け役。でも、その“眼力”たるや、「!!!!!」。実は、父の死にはもう一つ、家族の誰も知らない真相が隠されていました。それを知った母が、「それでも私は何も後悔していない」と、書いた時(声が出ないので筆談)の表情といったら……。脳裏に焼きついて離れません。

ああ、この母の娘たちならば、大丈夫。何があっても、どんなに傷ついても、生き抜いていける。ああ、オンナって強い(笑)。そんな1本でした。

「美しき運命の傷痕」 Bunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ他で公開中。全国順次公開。
オフィシャルサイトhttp://www.utsukushiki.jp

 
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2006-04-11 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

ある日突然、封印していた過去をつきつけられたら…?「ブロークン・フラワーズ」&「隠された記憶」

Movie0404_1数年ぶりに再会した懐かしい友人に、「実はあの時、こうだった」と、思いも寄らぬ“事実”を告げられたこと、ありませんか? 子供の頃、悪意もなくやってしまった、忘れられない“悪事”の記憶は、ありませんか? 今週は、遠い過去にまつわる物語。ある日突然、封印していた過去を突きつけられたら、あなたはどうしますか?

「ブロークン・フラワーズ」の主人公は独身の中年男ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)。コンピュータで大成功を収め、悠々自適な毎日を送っていたが、同棲中の恋人シェリー(ジュリー・デルピー)は彼の気ままな性格に愛想を尽かし、出て行ってしまう。そこへ届いた差出人不明の手紙には、彼に19歳の息子がいることが告げられていた。手がかりは、ピンクの封筒と便せんに赤いタイプ文字、相手が20年前につき合っていた女性だということ。おせっかいな隣人ウィンストン(ジェフリー・ライト)の強引な勧めで、真実を確かめるために、ドンは過去の5人の女性を訪ねて全米を横断する。果たして、誰が手紙を書いたのか? 本当に息子は存在するのか?

「今さら、そんなこと言われても…」と、まったく気のないドンと、彼を強引に母&息子探しの旅に送り出す隣人ウィンストンのやりとりが傑作。「好奇心8親切心2」状態のウィンストンは、ドンにリストアップさせた5人の女性の現在を、インターネットを駆使して2日間で調べ上げ、旅行会社よろしく、飛行機、レンタカー、宿泊先の手配に加え、ドライブ中のBGMまで用意しての全行程をお膳立てするのです。インターネットでそこまでわかるの?とビックリ。このネット時代、やはり個人情報は流出しまくっているのでしょうか(笑)。

当然、ピンクの花束を携えての昔の男の突然の訪問に、「どうしてここがわかったの?」と、最初は誰もが不審顔。その後、すぐ打ち解けたり、最後まで微妙なムードだったり、またはいきなり怒り出したりと、それぞれの対応からどんな別れ方をしたのかも伺えて、それがまた笑いを誘います。その妙に居心地の悪い間は、なんだかクセになりそう。演じる女優陣はシャロン・ストーンにジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントンなど個性的実力派女優がズラリ勢ぞろいで、見応え十分です。

そこにただ立っているだけで、おかしさが漂うB・マーレイなくしては、成り立たなかった作品と言いきりたいほど、ハマリ役。ジム・ジャームッシュ監督の6年ぶりの長編は、彼をキャスティングした時点でほぼ完成していたのかもしれません。手紙の差出人は誰なのか? 息子は本当に存在するのか? でも、その結末はどうだって良いのかも。ドンの道中を一緒に楽しんでしまえば、それが全てなのです。

「ブロークン・フラワーズ」4月29日~、シネマライズ、シャンテシネ他、全国公開
オフィシャルサイト
http://www.brokenflowers.jp
(c)2005 Dead Flowers Inc

Movie0404_2「ブロークン・フラワーズ」の過去はおかしさの入り混じるものですが、「隠された記憶」は、かなりコワイ物語です。
人気TVキャスターのジョルジュ(ダニエル・オートゥイュ)は編集者の妻アン(ジュリエット・ビノシュ)と1人息子ピエロと幸せで豊かな暮らしをしている。そこに、突然届いたビデオテープと子供の落書きのような不気味な絵。ビデオには、彼らの家の玄関と人の出入りが延々と映されていた。それ以降、ビデオと絵は何度も届き、やがては勤務先や、学校にまで送られてくるように。不安は恐怖へと変わり、家族の間にも溝が生じ始めた頃、ジョルジュは封印していた遠い記憶をようやく思い起こしていた……。

美しい妻と可愛い子供。仕事も順調で、時折、友人を招いて楽しむにぎやかな食卓。まさしく順風満帆な人生。そこに突然割り込んできた、白いビニール袋に入ったビデオとワケのわからない絵。それが連日、玄関に置かれているのです。イタズラにしてはあまりに執拗。誰が、何の目的で? 何の要求もないメッセージは、家族の苛立ちを募らせます。

目的がわからないだけに、見ている私たちにもジワジワ不安が迫ります。何か恐ろしいことが起こるのではないか? その不安をさらに煽るように、時折、フラッシュバックする誰かの記憶のような映像。それは、誰のものなのか?

ビデオに導かれるように、映像の場所を探し当て、訪れたジョルジュには、ある心当たりがありました。それは、まだ子供の頃の遠い記憶。 両親すら知らない、自分と相手だけが知っている過去。それは、ジョルジュにとって、人生の唯一の汚点なのかもしれません。

種明かしになってしまうので、あまり詳しくは言えませんが、ビデオの送り主が誰かということと、その目的は、最後まで見る者に委ねられています。もちろんある推察はできますが、敢えてはっきりとは示されません。その曖昧さが余計に後々まで尾を引いて、いやらしいほど。深く考えずにやったことが、もし誰かに大きな影響を与えていたら? そう考えると、これは決して他人事ではないのです。見終わった後、きっと誰かと話したくなるはず。ぜひ、親しい人とご覧ください。

「隠された記憶」 4月29日~、ユーロスペース他、全国順次公開
オフィシャルサイト
http://www.kioku-jp.com

 
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2006-04-04 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

 
 
 
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