あなたの一番大切なものは何ですか?「ファイヤーウォール」&「僕の大事なコレクション」
「あなたの一番大切なものを、一つあげてください。」と聞かれたら、何をあげますか? 恋人? 友人? 家族? 仕事? 趣味? お金? 今週は、大切なもののために奮闘する男たちが主人公。世代も、環境も、守りたいものもまったく異なる彼らですが、見逃したらもったいない。ちょっと先の4月公開ですが、忘れずにチェックして。
『ファイヤーウォール』は、銀行のコンピュータ・セキュリティのスペシャリスト、ジャック(ハリソン・フォード)が主人公。彼のシステムは業界屈指と評判だが、実は唯一の“抜け穴”があった。それは、システム設計者である彼自身。そこに目をつけたのが、強盗グループのリーダー、コックス(ポール・ベタニー)だった。ジャックの身辺を調べ上げた挙句に妻子を人質に取り、コックスは、銀行資産1億ドルをジャックに要求する。彼らの要求通り1億ドルを盗み、証拠のデータを消去すれば妻子は救えるが、ジャックは単独犯になってしまう。大切な家族を守り、自分を守るにはどうすればいいのか。ジャックの孤独な戦いが始まった――。
H・フォードと言えば、宇宙船船長、考古学者、大統領、刑事、検事、弁護士、医者、CIAアナリストと華麗な職種で、常に逆境と闘う男。今回も、闘います。あらゆる監視と罠を張り巡らせた相手を出し抜くため、頭脳だけでなく肉体的にも、死力の限りを尽くすのです。
とは言っても、彼もすでに60代半ば。スマートなアクションは無理があるだろう、と心配していたら、全力疾走してはゼエゼエし、殴りかかろうとしたら空振って、走り出したら尻もちまでつき……と、とっても年相応。でも、逆にそのカッコ悪さに潔さを感じたのです。その潔さこそが、“ハリソン・フォード”なんだと。
向う敵が、地団太踏みたくなるくらい(笑)、イヤな奴。ジャックを思い通りに動かすため、あらゆる事を調べつくし――盗聴し、盗撮し、ゴミを漁り――いやらしいほど綿密に罠を仕掛ける。息子のピーナツ・アレルギーまで調査済みなのだから、恐れ入ります。感情的にならず、常に冷静な表情が苛立ちと恐怖をかき立てて、演じるP・ベタニーがあまりにも適役で拍手(もちろん、見ているときはそんな気分になりませんが)。
IT社会の現代、銀行ネットワークは4分に1回の割合でハッカーの攻撃にさらされているそうです。そういえば、大した情報のない私のパソコンも、「攻撃にさらされています」とちょくちょくセキュリティ・ソフトが反応してたっけ。狙われるほどのプライバシーは持ちあわせませんが、もし何かの目的で、ジャックのように調べつくされ、罠を張り巡らされたら。そう、もうこれは他人事じゃないのです。
こんな簡単に1億ドル送金できちゃうの?と突っ込みたい部分もありますが、見応えは十分。家族のために命を張ったハリソンの大活躍、ご堪能ください。
「ファイヤーウォール」4月1日~、渋谷東急他、全国松竹・東急系にて公開
オフィシャルサイト http://www.firewall-movie.net
(c)2006 Warner Bros. Entertainment Inc. – U.S., Canada, Bahama & Bermuda
(c)2006 Village Roadshow Films (BVI) Limited – All Other Territories
「ファイヤーウォール」が王道を行くハリウッド映画なら、こちらは予算的にも内容的にもある意味、対極にある作品かも。 『僕の大事なコレクション』の主人公は、ユダヤ人ジョナサン(イライジャ・ウッド)。彼の大切な趣味は、家族にまつわる様々な思い出の品を壁に飾って“コレクション”すること。でも、幼い頃に亡くなった祖父に関するものはほとんどなく、一枚の写真を手がかりに祖国ウクライナを訪ねることにする。現地ガイドは、英語のできるアメリカかぶれの青年アレックス(ユージーン・ハッツ)と運転手代わりの彼の祖父(ボリス・レスキン)にその飼い犬。彼らは地図にはないトラキムブロド村を探し、旅するが。
印象的なのが、全編を通してのユーモラスな語り口。クスクス、笑いが絶えないのは、まずは主人公の存在にありました。黒づくめのスーツに、顔の輪郭が変わっちゃうほど、度の強いメガネをかけるジョナサンは、冗談一つ言わないように見える、カタブツ。やっと冗談を言っても、「それ、冗談だよね?」と、アレックスが確認しちゃうほどなのです。
もう一方の主人公アレックスも個性的。イマドキの若者(それがまた、妙なのですが)は、とにかくアメリカ好き。ラップ・ミュージック、ブレイクダンス、ファッションと父親が顔をしかめてもどこ吹く風。心底、黒人文化を尊敬する彼は、「ニガー」と連発し、たまりかねたジョナサンが、「アフリカ系アメリカ人」と言い直しても、「何が悪いの?」と理解できないのです。
そんな噛みあわない2人が、英語のわからない短気な祖父とその犬と共に、今はない村トラキムブロドを探します。言葉の違い、環境の違い、文化の違い、世代の違い、あらゆる違いを抱えた彼らが繰り広げる珍道中に、クスクス笑いっぱなし。でも、そんな中にドキッとする現実が垣間見えてきます。
トラキムブロドと聞いて、一瞬、動揺した祖父。なぜ、村は消えたのか。村と住人を見つけられるのか。ジョナサンの旅は、いつしかただのガイドだったアレックス自身の旅にもなり、見ている私たちの旅にもなっていくのです。
実は、描かれているテーマは重いのですが、語り口は最後まで優しくやわらか。バックに流れる音楽がまたぴったりで、久々にサントラも欲しくなってしまいました。「いいモノ見たー!」と誰かに話したくなるような1本です。
「僕の大事なコレクション」 ゴールデンウィーク、シネマスクエアとうきゅう、渋谷アミューズCQNにて公開
オフィシャルサイト http://www.bokukore.com
(c)2005 Warner Bros. Entertainment Inc.
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2006-03-21 【映画】 | 固定リンク
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