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[映画]-2時間1800円の至福- 映画を観よう、幸せになろう

加藤アカネ
“独身の新人ライター”としてスタートしてから5年以上が過ぎ、今ではなんと2人の子供がいる身の上。いまだにそんな自分が時々不思議に思えるほどの自覚のなさですが、元映画宣伝マンの経験を生かして、ジャンルを問わず、いろんな映画を楽しく、わかりやすくご紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

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ブロードウェイの大ヒット・ミュージカルをスクリーンで楽しもう!「プロデューサーズ」&「レント」

Movie0328_1「シカゴ」「オペラ座の怪人」など、このところ毎年のように映画化されるのが、見ていない人でもタイトルだけは知っているという、ブロードウェイの大ヒット・ミュージカル。日本ではこの4月に、ちょうど2本が公開されます。リメイク、続編ばやりのハリウッドのネタ切れを証明しているかのようですが、これは要チェック。と言うのも、共に舞台のオリジナル・キャストが出演しているから。N.Y.に行ってもなかなかチケットが取れない人気作が、日本にいながらにして見られるなんて。とってもお得だと思いませんか?

「プロデューサーズ」は1959年のN.Y.が舞台。かつては“ブロードウェイの王様”と呼ばれた大物プロデューサー、マックス(ネイサン・レイン)。でも、今は啼かず飛ばずで、初日が楽日(=すぐに打ち切り)という体たらくだ。そんな彼のオフィスに、帳簿付けにやって来た会計士レオ(マシュー・ブロデリック)は、あることに気づく。「ショウ・ビジネスはヒットしなくても儲かる」。それを聞いたマックスは、すぐに計画を立てた。即打ち切りの失敗確実なショウを上演し、出資金200万ドルをそのままいただいちゃおうというのだ。マックスと、“演劇プロデューサーになるのが子供の頃からの夢だった”レオの2人による、史上最低のショウを上演する企みが始まった!

「ヒットしないのに儲かる?? ウソでしょ」と思うでしょうが、ブロードウェイにはそんな秘密のからくりがないこともないようで(それが真実かどうかはさておいて)。こんなふうに全編を通しての皮肉な視点と、業界裏話的な内容がおもしろいのです。

出資金の集め方といい、脚本やスタッフ・キャストの選び方といい、もしかしたら現実にあったこと? と思わせニヤリ。実は本作のオリジナルは、1968年公開の映画。それが、2001年に舞台化され大ヒットし、そのキャストたちが今回の再映画化に出演という、珍しい経歴を持つ作品なのです。40年を経た今も人々を楽しませることができるのは、いつの時代も、みんなミーハーで芸能ネタが好きなせいかも(笑)。

ケッサクなのは、“失敗確実なショウ”の内容。「そりゃ、コケるわ!」と誰もが納得するはずなのですが、事態は2人のプロデューサーの思う通りにはいきません。その意外な展開を招いた原因が、またまた現実を皮肉っていて、笑わずにはいられません。

今回の映画化に当たり、新たに作られたオリジナル曲もあって、お得感はさらにアップ。クールな美女役が多いユマ・サーマンが、ちょっとスロー・テンポな女優志望のスウェーデン人を演じていて愉快。音楽はもちろん、オシャレな衣装や小道具もたっぷり楽しんでください。

「プロデューサーズ」4月8日~、日劇他、全国東宝洋画系にて公開
オフィシャルサイト
http://www.SonyPictures.jp

Movie0328_2「プロデューサーズ」が業界内幕話なら、「レント」は1989年12月24日から始まる、アメリカのごく普通の若者たちの1年間を描いた物語です。ロジャー(アダム・パスカル)は、かつて人気ロックバンドの一員として活躍していたが、恋人の自殺と自らの病気に打ちのめされ、今は部屋にこもりがち。再開発で立ち退きを迫られているN.Y.のイーストビレッジのアパートに、映像作家を目指すマーク(アンソニー・ラップ)と同居中だ。その一角には、夢と希望を持ちながら、厳しい現実を抱える若きアーティストたちがいた。

「ごく普通の若者」と言いましたが、エイズ、ドラッグ、ゲイのカップルにゲイ・バッシングと、日本に住む私たちにはかなりハードな環境。そんな現実をごく普通に受け入れている彼らの姿が当時のアメリカだったのだと思うと、何だか言葉に詰ります。

1996年に小劇場からスタートした本作は、わずか3ヶ月でブロードウェイの大劇場に進出。ミュージカルとしては異例のピュリッツアー賞まで受賞した“伝説”の作品です。実は私も、ブロードウェイに移って間もない頃に舞台を見たことが。完売状態の中、たまたまキャンセルが出て手に入れた当日券で見たのですが、客席の熱気に当てられてフラフラになったのを覚えています(英語が苦手で100%内容が理解できなかったのが、残念でしたが)。

照れくさいのを承知で言葉にすれば、人を愛するということ、夢を持つということ、そして、死ぬということをストレートに描いた青春群像が、眩しいほど。それも、当時20代の自分が30代になったせいかもしれませんが……。

もちろん10年を経た21世紀の現在からすると、ちょっと古臭いと感じる部分もあるでしょう。でも、未だにブロードウェイでロングランを続けているのは、変わらない普遍のパワーを持つからこそ。そのパワーを音楽がさらに盛り上げます。

舞台のテイストをかなり忠実に残しての映画化が、お見事。もちろん、舞台ならではのナマの臨場感をそのままスクリーンで味わうことは難しいでしょう。でも、舞台にはない映像や視点で見られるのが、映画の大きな持ち味。舞台を見ている人も、いない人も、十分楽しめると思います。

今回は2本ともトニー賞(舞台のアカデミー賞)受賞の品質保証付き。ぜひ、この機会に大きなスクリーンでご覧ください。

「レント」 4月29日~、Bunkamuraル・シネマ、東劇他にて公開
オフィシャルサイト
http://www.movies.co.jp/rent
(c)2005 Sony Pictures Entertainment, Inc.

 
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2006-03-28 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

あなたの一番大切なものは何ですか?「ファイヤーウォール」&「僕の大事なコレクション」

Movie0321_1「あなたの一番大切なものを、一つあげてください。」と聞かれたら、何をあげますか? 恋人? 友人? 家族? 仕事? 趣味? お金? 今週は、大切なもののために奮闘する男たちが主人公。世代も、環境も、守りたいものもまったく異なる彼らですが、見逃したらもったいない。ちょっと先の4月公開ですが、忘れずにチェックして。

『ファイヤーウォール』は、銀行のコンピュータ・セキュリティのスペシャリスト、ジャック(ハリソン・フォード)が主人公。彼のシステムは業界屈指と評判だが、実は唯一の“抜け穴”があった。それは、システム設計者である彼自身。そこに目をつけたのが、強盗グループのリーダー、コックス(ポール・ベタニー)だった。ジャックの身辺を調べ上げた挙句に妻子を人質に取り、コックスは、銀行資産1億ドルをジャックに要求する。彼らの要求通り1億ドルを盗み、証拠のデータを消去すれば妻子は救えるが、ジャックは単独犯になってしまう。大切な家族を守り、自分を守るにはどうすればいいのか。ジャックの孤独な戦いが始まった――。

H・フォードと言えば、宇宙船船長、考古学者、大統領、刑事、検事、弁護士、医者、CIAアナリストと華麗な職種で、常に逆境と闘う男。今回も、闘います。あらゆる監視と罠を張り巡らせた相手を出し抜くため、頭脳だけでなく肉体的にも、死力の限りを尽くすのです。

とは言っても、彼もすでに60代半ば。スマートなアクションは無理があるだろう、と心配していたら、全力疾走してはゼエゼエし、殴りかかろうとしたら空振って、走り出したら尻もちまでつき……と、とっても年相応。でも、逆にそのカッコ悪さに潔さを感じたのです。その潔さこそが、“ハリソン・フォード”なんだと。

向う敵が、地団太踏みたくなるくらい(笑)、イヤな奴。ジャックを思い通りに動かすため、あらゆる事を調べつくし――盗聴し、盗撮し、ゴミを漁り――いやらしいほど綿密に罠を仕掛ける。息子のピーナツ・アレルギーまで調査済みなのだから、恐れ入ります。感情的にならず、常に冷静な表情が苛立ちと恐怖をかき立てて、演じるP・ベタニーがあまりにも適役で拍手(もちろん、見ているときはそんな気分になりませんが)。

IT社会の現代、銀行ネットワークは4分に1回の割合でハッカーの攻撃にさらされているそうです。そういえば、大した情報のない私のパソコンも、「攻撃にさらされています」とちょくちょくセキュリティ・ソフトが反応してたっけ。狙われるほどのプライバシーは持ちあわせませんが、もし何かの目的で、ジャックのように調べつくされ、罠を張り巡らされたら。そう、もうこれは他人事じゃないのです。

こんな簡単に1億ドル送金できちゃうの?と突っ込みたい部分もありますが、見応えは十分。家族のために命を張ったハリソンの大活躍、ご堪能ください。

「ファイヤーウォール」4月1日~、渋谷東急他、全国松竹・東急系にて公開
オフィシャルサイト
http://www.firewall-movie.net
(c)2006 Warner Bros. Entertainment Inc. – U.S., Canada, Bahama & Bermuda
(c)2006 Village Roadshow Films (BVI) Limited – All Other Territories

Movie0321_2「ファイヤーウォール」が王道を行くハリウッド映画なら、こちらは予算的にも内容的にもある意味、対極にある作品かも。 『僕の大事なコレクション』の主人公は、ユダヤ人ジョナサン(イライジャ・ウッド)。彼の大切な趣味は、家族にまつわる様々な思い出の品を壁に飾って“コレクション”すること。でも、幼い頃に亡くなった祖父に関するものはほとんどなく、一枚の写真を手がかりに祖国ウクライナを訪ねることにする。現地ガイドは、英語のできるアメリカかぶれの青年アレックス(ユージーン・ハッツ)と運転手代わりの彼の祖父(ボリス・レスキン)にその飼い犬。彼らは地図にはないトラキムブロド村を探し、旅するが。

印象的なのが、全編を通してのユーモラスな語り口。クスクス、笑いが絶えないのは、まずは主人公の存在にありました。黒づくめのスーツに、顔の輪郭が変わっちゃうほど、度の強いメガネをかけるジョナサンは、冗談一つ言わないように見える、カタブツ。やっと冗談を言っても、「それ、冗談だよね?」と、アレックスが確認しちゃうほどなのです。

もう一方の主人公アレックスも個性的。イマドキの若者(それがまた、妙なのですが)は、とにかくアメリカ好き。ラップ・ミュージック、ブレイクダンス、ファッションと父親が顔をしかめてもどこ吹く風。心底、黒人文化を尊敬する彼は、「ニガー」と連発し、たまりかねたジョナサンが、「アフリカ系アメリカ人」と言い直しても、「何が悪いの?」と理解できないのです。

そんな噛みあわない2人が、英語のわからない短気な祖父とその犬と共に、今はない村トラキムブロドを探します。言葉の違い、環境の違い、文化の違い、世代の違い、あらゆる違いを抱えた彼らが繰り広げる珍道中に、クスクス笑いっぱなし。でも、そんな中にドキッとする現実が垣間見えてきます。

トラキムブロドと聞いて、一瞬、動揺した祖父。なぜ、村は消えたのか。村と住人を見つけられるのか。ジョナサンの旅は、いつしかただのガイドだったアレックス自身の旅にもなり、見ている私たちの旅にもなっていくのです。

実は、描かれているテーマは重いのですが、語り口は最後まで優しくやわらか。バックに流れる音楽がまたぴったりで、久々にサントラも欲しくなってしまいました。「いいモノ見たー!」と誰かに話したくなるような1本です。

「僕の大事なコレクション」 ゴールデンウィーク、シネマスクエアとうきゅう、渋谷アミューズCQNにて公開
オフィシャルサイト
http://www.bokukore.com
(c)2005 Warner Bros. Entertainment Inc.

 
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2006-03-21 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

運命は変えられるのか?「ヒストリー・オブ・バイオレンス」&「エミリー・ローズ」

Movie0314_1「運命」は、あらかじめ決まっているものなのでしょうか? それとも、その人次第で変えることができるのでしょうか? 今週は、とんでもない「運命」を背負った人のお話です。

トム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)は、アメリカの小さな田舎町でダイナーを経営するごく普通の男。弁護士の妻エディ(マリア・ベロ)と2人の子供に囲まれ、平凡で幸せな日々を送っていた。しかしある晩、強盗が店を襲う。銃を突きつけられたトムは、隙を突いて犯人たちを射殺。従業員と客を守った男として、一躍ヒーローになり注目を浴びることに。数日後、店に現れた片目の男(エド・ハリス)が、トムに「ジョーイ」と呼びかける。彼は人違いだと否定するが、男の態度にエディは不安を抱く――。

20年間一緒に暮してきた夫の過去が、全部ウソだったら――しかも、何人もの殺人を犯してきたという、想像を絶するような過去だったとしたら。穏やかで幸せだった20年までもが、一瞬にして崩れ去ってしまいそうなエディの不安は、決して他人事とは言い切れません。だって相手の過去すべてを知ることなんて、不可能なのですから。

小さな不安を抱えながらも夫を信じていたエディですが、少しずつ、まるで薄皮がはがれていくように、彼の過去が浮び上がります。身のこなし一つとっても、それまでとは別人に見えてくる夫。本当は、どんな男だったのか。優しい眼差しまでもが、まるで底なし沼を覗き込んでいるように思わせるV・モーテンセンが、スゴイ。『ロード・オブ・ザ・リング』の正義の人アラゴルンとは思えない、妙な虚無感まで漂ってきます。

でも、実はもっと怖い「運命」は、タイトルにありました。直訳すれば、「暴力の歴史」。それは、トムの過去だけではないのです。その「歴史」は未来=息子へと受け継がれていくのかもしれない。そう匂わせるシーンに、慄然。息子として生まれた彼の「運命」もまた、変えられないのでしょうか。そして、過去が明らかになったトムを家族は受け入れることができるのか。見る者に委ねられたラスト・シーン、あなたはどう見るのでしょうか。

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」東劇他、全国公開中
オフィシャルサイト
http://www.HOV.jp

Movie0314_2やり手弁護士エリン(ローラ・リニー)が昇進のために引き受けた仕事は、ムーア神父(トム・ウィルキンソン)の弁護。「悪魔祓い」をするために精神疾患の少女の治療を止めさせ、死に至らしめたという罪を問われている、注目の事件だ。無信仰のエリンだったが、弁護をするうちに強い信念を持った神父を尊敬するようになっていく。しかし、裁判はどんどん不利に。「悪魔祓い」の真相とは。

「法律」で「悪魔の存在(=超常現象)」に関することを裁こうなんてムチャな、と思うかもしれませんが、これは1970年代にドイツで起きた実話だそう。つまり、悪魔の存在が公式に認められた初めての裁判なのです。

と言っても、オカルト・タッチなシーンは少なくて、メインの舞台は法廷。この法廷でのやり取りがとってもスリリングなのです。生活の基盤にキリスト教がある欧米と違い、日本人の私たちにはわかりにくいこともあるのでは、と思っていたのですが、心配ご無用。とても丁寧に作られていて、陪審員の1人であるかのように、じっくり理解することができます。

なぜ、少女は「悪魔憑き」になったのか。その過酷な運命を背負った少女を救うことができなかった神父が語る、真実とは。その神父を信じて、周囲の思惑をよそに孤軍奮闘するエリンが、カッコいいのです。

ところで、回想シーンで描かれる「悪魔祓い」が、あの『エクソシスト』にそっくりでビックリ。オカルトやホラー好きなあなたはもちろん、苦手なあなたも(私も)、きっと大丈夫です。真摯な語り口で、ラストは感動。かつてない異色の作品を、ぜひご覧ください。

「エミリー・ローズ」 日比谷スカラ座他、全国東宝洋画系にて公開中
オフィシャルサイト
http://www.SonyPictures.jp


<アカデミー賞後記>
全米アカデミー賞授賞式も終了。私の予想は7部門中4部門が当たりでした。予想しておいて何ですが、『クラッシュ』の作品賞受賞にはビックリ。監督賞と作品賞が別々ということは、『ブロークバック・マウンテン』とかなり競っていたのでしょう。主演女優賞受賞のリース・ウィザースプーンは日本では知名度が今ひとつですが、先日、次回作のギャラが2900万ドル(推定)となり、ついに長年トップに君臨していたジュリア・ロバーツ(推定2400万ドル)を抜き、名実共にハリウッドNo.1女優に。アカデミー女優となった今後は、さらにギャラがあがること間違いナシです。ノミネート作品の規模や俳優の知名度から、巷で「地味」と囁かれていた今年のアカデミー賞。いわゆる“社会派”と呼ばれる作品が揃ったのは、アメリカの現状を映し出しているからとも言われています。賞がすべてじゃありませんが、どれを見るかの検討材料のひとつにどうぞ。

 
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2006-03-14 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

願いはきっと叶う。そう信じたくなる「リトル・ランナー」&「かもめ食堂」

Photo_7


願いは、真剣に思えばきっと叶う――もちろん、現実はそう甘くはありません。でも、もしかしたら……。今週は、そんなふうに思わせてくれる2本をご紹介します。胸がほんわか温まって、きっと、また明日からがんばれます。

まず『リトル・ランナー』。1953年。カナダのカトリック系私立学校に通うラルフ(アダム・ブッチャー)は、煙草に女の子にと好奇心いっぱいの14歳。校則破りも数知れない問題児の彼には、秘密があった。父が戦死した後、唯一の肉親だった母が入院したことを学校に隠しているのだ。もし施設送りになってしまったら、今の生活も、毎日母を見舞うことも出来なくなってしまう。そんなのまっぴらゴメン。でも、母の病状は悪化し、昏睡状態に。「奇跡でも起らない限り、目覚めることはない。」医者の宣告に、ラルフは「奇跡」を起こそうと決心する。そのために、歴史あるボストン・マラソンで優勝しよう、と――。

なんでマラソンに優勝すると、お母さんが目覚めるの? 彼がそう考えるに至ったのは理由があるのですが、もちろん本当は病気とマラソンが無関係なことを分かってはいるのです。それでも何かせずにはいられない、不安で押しつぶされそうな気持ち。大人のふりをしていても、14歳なのですから。

一見、大人(=学校)から見ると悪ガキですが、見方を変えればとっても素直。だから、興味が向いた方へと突っ走るのです。女の子の着替えるところが見えると聞けば、プールの更衣室を覗きに行くし、マスターベーションが気持ちよければ、実践する。そして、やりすぎはバカになると聞けば、悩む(笑)。騒ぎを起こす、とんでもない行動の数々が、素直で明るく、笑わずにはいられません。

また悪ガキの、ワケのわからない行動が始まった――ラルフの挑戦を、そう見ていた学校の先輩や教師たちも、やがて彼の真剣な気持ちを理解し、応援し始めます。そして、「奇跡」を強く願う彼の姿は、「奇跡」を信じない大人になってしまった教師(キャンベル・スコット)の心をも揺り起こすのです。

そう、これはお伽話。世の中、こんなにうまくいきません。現実は、イヤな事件や聞きたくない出来事で、気持ちがすり減る毎日。でも、だからこそ元気をもらいたくなりますよね。悪ガキ、ラルフのあきらめない真っ直ぐな瞳を見れば、イヤなことがあった今日をポンと小さくたたんで、ちょっと元気に明日を迎えられます。

「リトル・ランナー」3月4日~、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
オフィシャルサイト
http://www.little-runner.jp

Photo_6
『かもめ食堂』は、ガラッと変わって、フィンランドで涼やかに生きる日本人女性のお話です。
夏のある日、サチエ(小林聡美)はヘルシンキの街角に“かもめ食堂”をオープンした。道行く人がふらっと立ち寄り、楽しいひと時を過してもらいたい。だからメニューは、おいしいコーヒーにシナモンロール、鮭の塩焼き、豚肉のしょうが焼きに肉じゃが、そしておにぎりに日本茶などなど、シンプルに。まだ一人も客は来ないけど、毎日マジメにやっていればいつかは、と信じるサチエは、ひょんなことから、観光客のミドリ(片桐はいり)とマサコ(もたいまさこ)と知り合い、手伝ってもらうことになる。客は来るのか?

いざご紹介しようと思うと、実はとっても困ってしまう映画です。大した事件は全然起こらないんです。マサコが旅に出た事情は語られますが、“なぜ、サチエがフィンランドに店を開いたのか”“なぜ、ミドリは海外旅行を思い立ったのか”には、まったく触れられないまま。ただ毎日せっせと店を開け、掃除をし、食器を磨いて、客を待つ。そんな日常の小さな積み重ねが綴られるのです。

じゃ、何がおもしろいのかと言えば、この肩肘張らない3人の女たち。痛みを抱えながらも、それを見せずに背すじを伸ばして生きている女たち――と言っても、これはあくまでこちらの勝手な思い込みで(笑)、彼女たちは、親しくなっても互いの事情に踏み込むような真似はしないのです。潔くカッコよく、時にコミカルに、時に勇ましく、ホクホクした肉じゃがみたいな関係が、とっても素敵。見ているだけで、なんだかホッとします。

特に、毎日グラスを磨くサチエの姿は印象的。小林聡美という女優さんはいわゆる美人じゃないかもしれないけど、立ち姿が美しい人だなあ、と改めてホレボレ。見ているこちらまで背すじが伸びて、なんだか余計なものがすとんと落ちていくような不思議な気分になります。

私もフィンランドに行って、かもめ食堂でおにぎりを食べたい。そうすれば、元気いっぱいに明日を迎えられそうだから。でも、それは難しそうなので、とりあえず家に帰ったらおにぎりを作ってみよう。背すじを伸ばして、キュッキュと握って。そしたら、気分だけは、かもめ食堂の常連になれるかもしれません。

「かもめ食堂」 3月11日~、シネスイッチ銀座他、全国順次公開
オフィシャルサイト
http://www.kamome-movie.com

 
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2006-03-07 【映画】 | 固定リンク | コメント (0)

 
 
 
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