切なく、そして、心満たされる『ランド・オブ・プレンティ』
「突然ひと夏のスケジュールが空いてしまった」ので、「別の映画を撮ろうと思い立った」ヴィム・ヴェンダース監督。それは、なんて幸運なアクシデントだったのでしょう。もし、予定通りに進んでいたら、切ないけれど、驚くほど心を満たしてくれるこの映画は、生まれなかったのですから。
アメリカで生まれ、イスラエルやアフリカで育ったラナ(ミシェル・ウィリアムズ)は、10年ぶりに故郷に帰ってきた。目的は、母の手紙を伯父ポール(ジョン・ディール)に渡すこと。ベトナム戦争の後遺症を抱えるポールは、祖国を“敵”から守ろうと、たった一人で戦っていた。ホームレスが射殺される現場に居合せた2人は、遺体を遺族の元に運ぶことになるが――。
帰還後、友人や家族との連絡をすべて断ってきたポールと、帰国したばかりの20歳のラナ。2人は伯父と姪という関係以外、何の共通点もないように見えます。でも、遠く離れていた彼らを繋いだ出来事が、1つありました。それが、あの日の記憶……。
「ケネディが暗殺されたとき」「人類が月面に立ったとき」「ジョン・レノンが死んだとき」どこで何をしていたのか。アメリカでよく聞かれる問いに、近頃1つ加わったそうです。「9.11にどこで何をしていたのか」
あの日、私は友人と食事をしていました。そして、夜中に帰宅しテレビをつけた時、「何の映画だろう?」と思ったのです。まさか、現実だったなんて。そう思った人は、たくさんいたのではないでしょうか。
ツインビル崩壊は、ポールの薄れていた戦場の記憶を呼び覚ましました。彼の考えていることは、私たちからすれば、ただの妄想。でも、ポールは必死に国を守ろうとしているのです。そんな伯父をそっと見守り、寄り添うラナの聖母のような表情が印象的です。彼女自身、遠い異国で大きな衝撃を受けていたのですが。
「人は、生まれてくる時と死ぬ時は1人きり」と言いますが、生きている間は決して1人ではないのです。誰もが、誰かと支えあって生きている。貧困やテロ、孤独という哀しい現実が消え去ることはないでしょう。でも、そんな中にも、小さいけれど暖かな希望がある。映画はそれを伝えてくれたような気がします。
10月22日~、シネカノン有楽町他、全国順次公開。
オフィシャルサイト http://www.landofplenty.jp
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2005-10-18 【映画】 | 固定リンク
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