シェイクスピアとは、本当は誰だったのか!? 『謎ときシェイクスピア』
「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」といえば、おそらく、世界でもっとも有名かつ偉大な劇作家、シェイクスピアの「四大悲劇」です。その他、彼が残した作品は「ロミオとジュリエット」「ジュリアス・シーザー」「真夏の夜の夢」「リチャード2世」「ヴェニスの商人」「お気に召すまま」「じゃじゃ馬ならし」「テンペスト」などなど……誰もが(少なくともタイトルだけは)知っている作品が目白押しです。28歳で演劇の世界に入り、52歳で没したシェイクスピア。劇作家としての活動期間は、たった24年間なのに、これだけの超大作を次々と生み出したとは……まさに天才、押しも押されもせぬ「劇作家界の超スーパースター」であります。
ところが――というか、やはり、というか。
シェイクスピアには「別人説」が昔から根強く存在したらしい。恥ずかしながら、私、実はシェイクスピア作品を1作も、きちんと読んだことがない(!)ので、ぼんやりと「別人説」の存在は知っていたものの、特に興味をひかれることはありませんでした。でも、イギリス演劇などがご専門の東京大学教養学部准教授、河合祥一郎先生の『謎ときシェイクスピア』という本に書店でバッタリ出会い、パラパラッとページを繰ったとたん、突然、「シェイクスピア別人説」に興味津々に! というのもですね、なんせ、しょっぱなの「はじめに」という文章から、いきなり惹きこまれちゃったんです。
「正統派」のシェイクスピア学者たちは、「別人説」といった異説を軽蔑して一顧だにしない。(10ページより)そうですが、精神分析の大家・フロイトを始め、別人説を支持する著名人は意外に多いといいます。なぜなら、劇作家・シェイクスピアと同一人物とされている、イギリスの片田舎、ストラットフォード・アポン・エイヴォン生まれの「ウィリアム・シェイクスピア」が残した公的記録の間には、納得しがたい大きな溝があるから。「疑うことから学問は始まる、とはよく言われること」(7ページより)だとすれば、こんなに怪しさ満載の「シェイクスピアの人物史」を、「正統派」シェイクスピア学者たちは、なぜ疑わないのか?
専門家でありながら、河合先生は「別人説」を一笑に付すことはせず、シェイクスピアにつきまとう数多い「謎」をもう一度洗いなおし、見つめなおそう、と言うのです。
実際、ストラトフォード生まれのシェイクスピアにまつわる記録から浮かび上がるのは、学校に通ったかどうかは不明だけど、18歳で8歳年上の女性と「出来ちゃった結婚」した後、次々と子どもに恵まれた男であり、仕事上では、やたらと裁判沙汰を起こし、「不動産買収や金貸し業などで齷齪(あくせく)と金儲けに勤しむ田舎のビジネスマンの姿」(24ページより)なのです。それはそれで価値ある人生です。とはいえ、「ハムレット」を著す劇作家の姿とは……あまりにもギャップが大きすぎますよね。
「若き日のウィル」の公式記録は、なぜか21歳でプツンと途切れています。その後、「劇作家・シェイクスピア」としてロンドンに現れるまでの間を「失われた年月」と呼ぶそうですが、つまり、20代のほとんどが「謎」なんですね。しかも、次に記録に現れるのは、伯爵に捧げられた詩集「ヴィーナスとアドーニス」の作者としてなのだから、驚きです。
田舎の子沢山パパだった不動産業などを営む男が、なぜ、8年後、ロンドンで伯爵に詩集を献辞しているのか?
もちろん、8年間の空白期間(河合先生は8年説を唱えていらっしゃいますが、7年説もあり)があったわけです。8年といえば、いろんな変化が起こりうる年月ではあります。しかし、それにしても……ねぇ?
シェイクスピアが活躍した頃、イギリスはエリザベス1世の時代でした。というわけで、シェイクスピアの謎に迫るため、エリザベス朝時代の常識や習慣などにも言及している本書。シェイクスピア作品を読んだことがなくても、大丈夫。いろんな読み方、楽しみ方が出来ると思います。知的好奇心をかきたてられる、とっても面白い「謎とき本」です。私は読んでいる間、ずっとワクワクしっぱなしでした!
『謎ときシェイクスピア』(新潮選書)定価1260円
河合祥一郎 著
お勧め度 ★★★★★
『謎ときシェイクスピア』を発行している新潮社のサイトはこちら。
http://www.shinchosha.co.jp/
●マガジン見どころ、読みどころ
モア
2008年7月号
創刊31周年を迎えた『モア』。今月は記念号です。テレビCMをご覧になった方も多いかな? そうです、今月はなんと、
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2008-06-03 | 固定リンク
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