独特の作風で人気急上昇中。福満しげゆきさんのコミック作品いろいろ。
突然ですが、とってもダウンな気分の時、音楽を聴くとしたら、どんな曲を聴きますか。すごーく前向きな歌詞の歌、アップテンポの陽気なナンバー、あるいは、これでもかっつーほど、しんみりした曲――。性格や原因によっても変わってくると思いますが、私は断然「これでもかっつーほど、しんみりした曲」派です。
ネガティブ気分が過剰に供給(?)されると、需要とのバランスが崩れるのか、案外、ちょっとポジティブになれます。そして、何事も「過剰」になると、そこに「おかしみ」が生まれてくるのか、落ち込んでいる自分が滑稽に思えてくるから不思議。
だから私自身の場合、ダウナー気分の時は、ネガティブにはネガティブを! が信条です。
で、最近、ちょいネガティブ気味の私に、友だちが力強く勧めてくれたコミックが福満しげゆきさんの『僕の小規模な失敗』という作品でした。3年前に発表された作品ですが、続編ともいえる『僕の小規模な生活』『うちの妻ってどうでしょう?』と合わせて、今、静かな「福満ブーム」が起きているんだそう。不勉強ながら、存じ上げなかった漫画家さんですが、心の琴線にビンビン触れまくりで、いっぺんで大ファンになりましたよ。
ほぼ自伝だという三部作。特に、出世作となった『僕の小規模な失敗』は「生きづらさを抱える青年」の孤独と焦燥の描写がリアルで、これはすごく普遍的な作品だなあ、と思いました。
ぼんやりしているうち、すっかり学歴コースから外れていた「僕」。
若者らしいスカッとさわやかな恋愛ゲームに参加できない「僕」。
一念発起してマンガを書いてみたのに、あっさりコンクールで落選した「僕」。
何もうまくいかない。このままじゃダメだと思えば思うほど、体や心が固まって、動くに動けない、頑張れない。こうなってくると、ダメがダメを呼ぶ、ダメ・スパイラルです。そして、主人公の「僕」は先の見えない高校生活を送りながら、こんなふうにつぶやくのです。
「僕は…………どのスタート地点にすら……立ててないわけだから……まだ何もはじまっていないわけだ……なのに……もう……ずいぶん…なんだか…もうずいぶん失敗しちゃったような…まあ」「こんな感じで続くのか………………僕の…(顔を覆って)怖~~~~い…怖~~~~い」(『僕の小規模な失敗』10ページより)
第1話のこの場面で、胸がギューッと締め付けられました。高校生なんだよ? 15、6歳なんだよ? いくらだって、やり直しがきくし、そもそも「僕」が「失敗」と思っていることが、本当に人生において「失敗」なのかもわからない。だけど、彼自身が「もうずいぶん失敗しちゃったような気がする」ことは確かであって、彼がそう感じてしまうことを、誰も止められないわけです。
いろんなことに対して「距離感」がうまくつかめない「僕」。でも、本当に全てが「ダメ」というわけでもなくて、入りなおした定時制高校で柔道部を作ったり、ボクシングを始めたりと、案外、前向きで行動的な一面もあるんです。だけど……その前向きな行動も空回りしがちなんですね。その見事に過剰なダメっぷりがおかしくて愛おしくて、共感してしまうのです。
ナイーブな「僕」の鬱々とした青春時代を鬱々と事細かに描いている『僕の小規模な失敗』ですが、ラストには希望の光が見えて、その光が『僕の小規模な生活』『うちの妻ってどうでしょう?』につながっていきます。
つまり、人生は、やっぱり、やり直しがきくんです。あるいは、気の持ちようでどうにでもなる、というべきか?
「僕」は、売れっ子とは言えないまでも、ついに念願の漫画家になり、女性の前でオドオドしていた「僕」だったのに、時には「妻」を怒鳴ることさえ出来る(!)ようになりました。『~失敗』時代の「僕」からしたら、ものすごい変化です。ま、天真爛漫で包容力のある妻あっての「僕」ですから、怒鳴っちゃったりしても、すぐ謝るんですけどね……。そこはご愛嬌です。
ネガティブで、ちょっと哲学的で、なんだか不思議なおかしさも漂う福満作品。私はその過剰なネガティブとおかしさに、とても励まされました。そう、ネガティブにはネガティブを! であります。福満さんの幸福を願いつつ、これからも、ちょいネガティブ志向の作品を届けて欲しいな、と思っております。
『僕の小規模な失敗』(青林工藝舎)定価1050円
『僕の小規模な生活』(講談社)定価780円(*現在、在庫切れ中)
『うちの妻ってどうでしょう?』(双葉社)定価780円
福満しげゆき 著
お勧め度 ★★★★★
『僕の小規模な失敗』を発行している青林工藝舎のサイトはこちら。
http://www.seirinkogeisha.com/
『うちの妻ってどうでしょう?』を発行している双葉社のサイトはこちら。
http://www.futabasha.co.jp/
●マガジン見どころ、読みどころ
リー
2008年7月号
今月の『LEE』で私が、まず心を奪われた特集はこれです。
料理研究家 松長絵菜さん 南フランスのすみれ祭りを訪れて
「昔からすみれが好きだった」という絵菜さんにとって、1度訪れてみたかったという、フランスの「すみれ祭り」。すみれの栽培で有名な村「トゥレット・シュル・ルー」のちょっと素朴で豊かなお祭りの様子を、本当に楽しそうに伝えてくれています。すみれを使った雑貨やお菓子ばかりのマルシェもあって、すみれ好きにはこたえられない夢のお祭りです。また、今号では、絵菜さんとリネンの洋服屋さん「リゼッタ」が一緒に作った、ふんわり優しげなシャーリングワンピースやエプロン、コサージュなど、素敵なアイテムも「リー マルシェ」で特別販売。欲しい方は急いでね!
おしゃれ達人の 夏服「着倒し」マジック大公開!
は、モデルの五明祐子さんをはじめ、人気プレスやスタイリスト、スタッフが自信を持ってお勧めする「着倒しアイテム」の数々、スタイリストの山田祐子さんが提案する「徹底着倒し20days」など、今すぐ役立つ特集です。意外とマンネリになりがちな夏服の着こなしがグッと洗練されるワザがいっぱい。要チェックですよ。
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2008-06-10 | 固定リンク
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