小川洋子さんが「科学の世界」を訪ね歩いた『科学の扉をノックする』
正直なところ、学生時代の私にとって「理科」や「数学」は、「こんな科目、無ければいいのに~!」と呪っていた超苦手科目でした。かろうじて「星」についての授業は、プラネタリウムに行けるので嫌いじゃなかったけれど、「100万光年」といった「距離」の話になったりしたら、もうダメ……。実感がわかなくて、ちんぷんかんぷんでした。
そんな理数系ダメ人間の私を「本当は面白い科学の世界」に誘ってくれたのが、小川洋子さんの最新刊『科学の扉をノックする』です。宇宙、鉱物、アメーバに遺体科学(!)など、百万光年からミクロの世界まで。幅広く、かつ奥深い「科学ワールド」への「扉」が、この1冊によって、大きく開いた気がしました。理数系が苦手な私でも「なるほど!」と思わずポンと膝を打ったり、「それで、それで?」と身を乗り出すように「話の続き」を読みたくなった、非常に興味深い内容なのです。
「科学初心者」とはいえ、「科学が大好き」な小川さんは、「個人的好奇心」の趣くままに、各分野のエキスパートである先生方を訪ね歩き、素朴な質問をぶつけて教えを乞います。
たとえば、宇宙について教えてくれたのは、東京・三鷹にある「国立天文台」の渡部潤一先生。ご専門は「彗星学」です。実は本書の取材以前に、小川さんはラジオ番組で渡部先生に会う機会があったそうですが、その時、先生は「星模様のネクタイ」をして、「星座の早見盤がついた腕時計」をつけていたそう。「星のネクタイを締め、星座の早見盤時計を身につけた彗星学者」とは「なんとロマンティックなんだろう」と思った小川さん。もちろん、宇宙についての講師は渡部先生にお願いしました。
はたして渡部先生は、科学的でありながら、実にロマンティックに、「宇宙の話」を易しい言葉で説明してくれています。小川さんの的確な質問に、先生の話を心から楽しんでいる様子を伝える美しい文章という強力な助っ人もあり、昔は途方にくれてしまった「100万光年」の世界の話も、ワクワクする「面白い話」として読みました。
このように、鉱物は堀秀道先生、遺伝子は村上和雄先生、遺体科学を提唱する遠藤秀紀先生……と計7分野、7人の先生方が案内人になってくださって、「科学初心者」の小川さん&読者を、めくるめく「科学への旅」へと連れて行ってくれます。新鮮な驚きに満ちたお話ばかりで、とても楽しい1冊でした。そして、ちょっと的外れな感想かもしれないけれど、私は本書を読んでいる時間、癒されていた、とも思います。
小川さんといえば、大ベストセラー『博士の愛した数式』の著者としておなじみです。「数字の面白さ」をストーリーの肝に据えるという、あっと驚く仕掛けに、多くの読者が引き込まれましたが、本書はそんな小川さんらしい、頭も心も柔らかくなる、素敵な「科学リポート」となっています。理数系が苦手な人にこそ読んでいただきたい、異色の科学エッセイです。
『科学の扉をノックする』(集英社)定価1470円
小川洋子 著
お勧め度 ★★★★★
『科学の扉をノックする』の詳細はこちらへ。ご購入もしていただけます。
http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=9784087813395
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2008-05-20 | 固定リンク
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