齋藤茂吉の妻・輝子の波瀾万丈の生涯を孫の由香が綴った『猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方』
今回は、痛快なエピソードの数々にワクワクし、ラスト近くでは泣けて泣けてしょうがなかった1冊、『猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方』を強力プッシュさせていただきたいと思います!
本書は歌人・齋藤茂吉の妻で時に「悪妻」とも言われた齋藤輝子の波瀾万丈の生涯と人柄を、孫の由香さんが愛情を込めて綴ったもの。輝子さんの地球36周分に匹敵する旅行三昧の日々や気風の良さとお嬢さま育ちの上品さ、あっけにとられる正直な言動などを、孫ならではの優しい視線で伝えています。
輝子さんの生涯と人柄は、ひょっとすると、茂吉よりもユニークかもしれません。にわかには信じられない豪快なエピソードがてんこ盛りで、亡くなって20年経っても、親戚で食事を共にすると「話題の主役は輝子」になるというのも頷けました。
輝子さんは東京・青山で敷地4500坪(!!)もあるローマ式建築の大病院「青山脳病院」のお嬢さまとして生まれ育ち、女性雑誌で紹介されるなど、今でいう「セレブ」だったようです。一方、茂吉は貧しい農村に生まれ、「神童」と呼ばれるほど飛びぬけて優秀な子どもでした。縁あって、当時、まだ赤ちゃんだった輝子の「婿養子」として、茂吉は14歳で齋藤家に迎えられました。
子ども時代はそれなりに仲がよかった2人でしたが、結婚後はソリが合わず、長い間、別居生活を送っています。その間のエピソードについても、由香さんは関係者からたくさん話を収集しており、とても興味深いのですが、白眉はやっぱり、茂吉亡き後、89歳で自身が亡くなるまで、海外渡航97回、地球36周分、世界108カ国を旅したという「旅行マニア」の横顔です。
大好きだったパリに何度も行くだけでなく、南極、モンゴル、アフリカ、南米など、世界中を精力的に旅してまわり、周囲が高齢を理由に心配しても全く意に介さず、旅先で病に倒れて危機一髪といった経験をしても、ケロリとして、また元気に出かけていったとか。旅から戻ると、翌日必ず、由香さんの家にお土産とお土産話をたっぷり携えてやってきて、家族で輝子おばあちゃまの話に耳を傾けたといいます。とりわけ秘境と呼ばれる土地へ出かけることが好きだった輝子さん、旅先で不便だった話や「初めて」の経験の数々を、ちょっぴり自慢げに語ったそうです。高齢のおばあちゃまを心配している、こちらの気持ちなど、まったく気づかぬ様子で――。
初海外旅行の逸話をはじめ、輝子さんの抱腹絶倒の旅エピソード例をここで書いてしまったら、本書を読む楽しみが減ってしまうので、あえて自重しますが、いやあ、ホントはね、「こんなことがあったんだって!」と紹介したくて、ウズウズしています!
著者の由香さんは、『窓際OL トホホな朝ウフフの夜』などの著書でおなじみのエッセイスト(ちなみに、サントリー株式会社勤務)です。精神科医で小説家の北杜夫さんの娘でもあります。伯父は「モタ先生」の愛称で知られた、こちらも精神科医にして作家でもあった故齋藤茂太さん。個性的で才能にあふれた「華麗なる一族」であります。
しかし、もちろん苦労もありました。というのも、父・北杜夫さんは、自著で明かされていますが、長年、躁鬱病を患っており、「大躁病期」と「鬱病期」を行ったり来たりしています。本書の由香さんの文章でも、ユーモアたっぷりに描かれているので、つい吹き出してしまうのですが、ジキルとハイドのように豹変する父に対処するのは、相当大変だったはず。そんな北さん一家を心配する輝子さんの、いかにも「らしい」思いやりの表し方にも、思わずホロリとさせられました。
また、輝子さんが亡くなってから、ああ言えば良かった、こうしておけば良かったと悔やむ由香さんの気持ちも、昨年、祖母を亡くしたばかりの私は、とってもよくわかるような気がして、胸が詰まる思いでした。
本書でたった1つだけ、ひっかかる部分があるとすれば、茂吉の愛人として有名な永井ふさ子さんの「な」の字も出てこないこと。身内としてその存在が許しがたかったのか、あるいは輝子さんは、本当に永井ふさ子さんをなんとも思っていなかったのか。そのあたりが、ちょっと気になります。
とはいえ、明治女の強さを鮮やかに映し出し、祖母と孫の心温まる逸話もぎっしり詰まった本書がすこぶる素敵な一冊であることに変わりはありません。
『猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方』(新潮社)定価1470円
斎藤由香
お勧め度 ★★★★★
『猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方』を発行している新潮社のサイトはこちら。
http://www.shinchosha.co.jp/
★おまけ本
『モタ先生と窓際OLの 人づきあいがラクになる本』(集英社)定価1365円
叔父である故斎藤茂太先生との共著も。詳細はこちらへ。ご購入もしていただけます。
http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=4083330724
●マガジン見どころ、読みどころ
バイラ
2008年5月号
昔はお買い物するなら、新宿(の伊勢丹)か青山でした。しかし、ここ数年、住んでいる場所から行きやすいってのもあるんですが、銀座・丸の内でのお買い物がかなり増えているのは、このエリアがダイナミックに変貌していて、とても面白いからだと思います。だから、最新情報はキッチリ押さえたいものです。というわけで、
BAILAナビゲート 銀座・丸の内最旬ガイド
は要チェック。ハイブランド、セレクトショップ、お食事どころ、一日満喫ツアー(!)まで、銀座・丸の内の「今」の魅力がぎゅっと詰まっています。
簡単なのに見映え最高! 迷った朝の救世主CD教えます!
は、タイトル通り、スタイリングお助け特集。「きちんと見えて女らしい失敗なしの最強コンビ」や「座っても立っても華やかな王道きれいめフェミニン」など、「きゃああ、遅れる~!!」とバタバタしちゃう朝の、まさに救世主となるスタイリングを提案してくれています。私は朝が弱いので、夜のうちに明日着る服を用意しておくクチですが、朝起きてみたら、あらまあ、思ったより寒い(あるいは暑い)、ざあざあ雨降ってた……など、不測の事態に陥ること、多々あり。やっぱり、『バイラ』のこういう特集は助かります。
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2008-04-15 | 固定リンク
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