まさに「瑞々しい」という言葉がピッタリの処女作! タイ人作家による、とてつもなく美しい小説『観光』
ワクワクする本、感動する本、深く考えさせられた本、おバカに笑える本。本との出合いは、いつだって、感謝です。でも、その中でも「ああ、この本と出合えて本当に良かったなあ」と、たっぷりと余韻にひたり、出合いに特別に感謝せずにいられない本というのがあります。今回ご紹介したいのは、そんなスペシャルな余韻にひたれた本。最近出合えた本の中でも、とびっきりのおすすめ!です。
『観光』と名づけられた、その作品の作者はタイ人のラッタウット・ラープチャルーンサップさん。「誰それ?」と思った方がほとんどだと思います。もちろん、私もこの作品に出合うまで知りませんでした。それもそのはず、実は『観光』はラッタウットさんのデビュー作。しかし、これが処女作とはとても信じられないほど、うまいんですねぇ。と同時に、処女作ならではの瑞々しさ、瞬間の煌めきに満ちているという、なんとも魅力的な短篇集でありました。
『観光』に収められた7つの短篇の舞台は、全てタイ。繊細な筆致で描かれる風景や出来事は、決して甘いものではありません。むしろ、客観的に見ると、厳しい状況にある人々の現実が浮かび上がってきて、胸がチクチクと痛みます。
7篇のトップを飾る「ガイジン」は、軍隊にいたらしいアメリカ人の父とタイ人の母の間に生まれた「ぼく」が主人公。父はとっくの昔にアメリカに戻ったきり。母は父の話が大嫌いです。つまり、彼は無責任な父にトンズラされてしまった混血児なのです。混血、と書くのは、ちょっと躊躇してしまうけれど、ここはこの物語の重要なポイントなので、あえて書きました。そんな彼が惹かれるのは、なぜかいつでも「アメリカ人の娘」です。「ガイジン」相手の商売で暮らす観光地であるけれど、「ガイジン」を辛らつな目で見ている現地の人々からすれば、「ぼく」の恋愛志向はいぶかしく、不毛としか思えませんが、どうしようもなく彼は「アメリカ人の娘」に惹かれてしまうのです。例え彼女たちにとっては、旅先の火遊びであっても……。その彼が物語の最後に起こしたアクションは意外なものでした。
その他、怪しくいかがわしい酒場で、兄の真似をして必死に大人になろうとする少年を描く「カフェ・ラブリーで」、失明寸前の母を残し、遠い場所にある大学へ通う決心をした息子と母の愛情あふれる交流に胸がいっぱいになる表題作「観光」など、珠玉の短篇がぎっしり詰まっています。
傷つくために恋をしているような少年のナイーブさ、ショッキングとも言えるタイの人々の本音とたくましさと強い絆。南国特有の熱気と、ひんやりと冷めた視線が渾然一体となった7つの物語は、異国が舞台なのに、なぜかとてもリアルに感情が共有できて、不思議な余韻が残ります。そして、ちょっとだけ胸がチクリとするけれど、最後は温かい気持ちに包まれます。
でも、人生って、きっとそういうもの。胸がチクッとしたり、温かい気持ちでいっぱいになったり、辛らつな見方をしたり、されたり。いろいろあって、人生です。それはやっぱり、世界共通なのかもね。
1979年、アメリカ・シカゴで生まれ、育ったのはタイのバンコクというラッタウットさん。アメリカの大学で学び、本作でデビューしたのは2005年です。いつもは辛口な各新聞の書評でも激賞され、一躍、注目の人となったそう。現在はイギリスに留学中で、次作を執筆中とか。本当に次の作品がまちどおしいな。2作目が本作以上に素晴らしい作品だったら、世界的な作家として揺るぎない評価を獲得することでしょう。だからぜひ、今のうちに『観光』に出合っておいてくださいね。
それと、作品にふさわしい良訳に恵まれたことも、日本語版『観光』の幸福な点だと思いました。
『観光』(早川書房)定価1890円
ラッタウット・ラープチャルーンサップ 著
古屋美登里 訳
お勧め度 ★★★★★、もひとつおまけに★3つ!
『観光』を発行している早川書房のサイトはこちら。
http://www.hayakawa-online.co.jp/

●マガジン見どころ、読みどころ
モア
2007年7月号
パチパチパチ。『モア』が30周年を迎えました。これを記念して7月号には、
MORE×ポール&ジョー マチ付きランチタイムトート
がもれなくついています。付録とは思えぬ出来栄えだから、きっと重宝するはず。
夏こそ本気でおしゃれな「安リッチ」服!
は、ボリュームたっぷりの大特集。かわいいのに、超お買い得な服や小物がずらり。こんなにリーズナブルなアイテムが揃うのは、夏ならではのお楽しみよね♪ 夏が本番を迎える前に気軽に買い足せちゃう。私がびっくりしたのは、1995円という、とんでもなく「安リッチ」なサンダル。もはやこれは、価格破壊です!
シュプール リュクス
2007年 夏号
早くも4号目を迎えた『シュプール リュクス』。毎号テーマを掲げていますが、今回のテーマは「SPARKLE」。煌めきです。でもって、ジュエリー好きの私としては、「煌めき」といえば、とにもかくにも、まず宝石なのだ。だから、
ジュエリー イズ マイ ライフ
をはじめ、いろいろあったジュエリーテーマに釘付けになりました。特に目が釘付けになったのは、「私の「偏愛」宝石箱、公開!」に掲載されていた、アートコレクター、森川千賀子さんのエメラルドのリング。というのも、あるサイトでこのリングを見つけクラクラし、「こ、こ、これはすごい! どんな人が買うんだろう?」と思っていたからなんです。森川さんが買ったんですね。うーん、超ド級にキレイだわ。そして、おいくらだったのかしら!?
さあ、アイランド・バカンスへ!
は、ラグジュアリーなバハマ・バカンスの提案です。青い海、そよぐ風、降り注ぐ太陽。バハマの小さな島で暮らす、英国貴族出身のモデル、インディア・ヒックスの豊かなナチュラル・ライフを紹介し、バハマの魅力を伝えてくれています。憧れちゃうなあ。今、自分的には結構思い切った、でも、とっても庶民的な「アイランド・バカンス計画」を立てている私は、その憧れの旅との差を改めて痛感して、ちょびっと、しょんぼり。それはそれとして、もしラグジュアリーなご旅行を予定しているあなたなら、
ファーストクラスの旅支度
のページも忘れずにチェックを。いやもう、とってもスタイリッシュでラブリーな旅支度でありました。
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2007-06-05 | 固定リンク
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