一夜に一作。大切に読みたい短篇集たち。『このベッドのうえ』&『「処女同盟」第三号』
卒業、入学、就職、初めての一人暮らし……新生活の準備に忙しくしている方も多い、今日この頃だと思います。私自身は相変わらずの日々を過ごしているけれど、街でフレッシュな顔をしている人を見ると、「あ、春なんだなあ」と思って、フレッシュのお裾分けをもらった気分になります。
そして、新生活につきものなのは、別れと出会いです。「桜」というタイトルの名曲がたくさん生まれている昨今ですが、みんな、春の日のせつなさに敏感になっているのかな?
そんなせつない春の夜にお勧めしたい短編集を2作品、今日はご紹介したいと思います。
野中柊さんの『このベッドのうえ』は、ほろ苦い経験を多少は積んでいる大人が読むと、とりわけ心に響く作品だと思いました。表題作をはじめ、珠玉の短篇ばかりですが、私が一番グッときたのは、「真夜中にそっと」という作品。雪が残る初春という設定は、まさに今の季節にぴったりだし、31歳の女性の、めくるめくような恋ではないけれど、ほんのりポカポカあったかい気持ちを運んでくれる、3歳年下の彼の大切さに改めて気づく瞬間までの、揺れ動く気持ちが瑞々しく描かれていて、ちょっと泣きそうになりましたよ。
「今この瞬間」を大切にした過去の恋愛を経験してこそ、「今この瞬間とこれからの未来」を一緒に歩いていける人に出会えた幸せを噛み締められる――。無鉄砲な恋愛に突進することはもうないかもしれないと思うと、寂しさもちょっぴりよぎるけれど、慈しみ合える相手に出会えた幸運は、何にも代えがたい。
“ベッドのうえ”で布団にくるまって、大事に読んでみてくださいね。
吉川トリコさんの『「処女同盟」第三号』は、イキの良さが大きな魅力。登場人物の会話が生きていて、今の気分がすごく出ている! かといって、じゃあ、物語も「今」なのかと言えば、モチーフは「今的」なんだけど、テーマは普遍的なのね。思春期や青春時代のかけがえのない瞬間を丁寧に描いていて、「ああ、そうだったなあ」と胸がキュンとします。
たとえば「オタク女子=腐女子」を扱った表題作は、少数派でモテない自分に対する、誇りとコンプレックスと「普通」への憧れと憎悪でないまぜになった、せつない思いを描いていました。いや、せつなさって、ホント、いろんな種類があるものです。
この複雑怪奇な思いというのは、「腐女子」という言葉が発明されるはるか以前から、オタク気質の女子が持っていたもの、だと思います。個人的な経験で言えば、私の場合は二次元の世界でなくて、ちょっとマニアックな音楽的傾向だったけれど(少し音楽を聴きかじっている高校生男子にとって、自分より音楽について詳しい女子というのは、うざい存在以外の何者でもないのだ)、この作品が描いている「せつなさ」は、これからも不変だろうと思います。
ただし、現在、「腐女子」を自称する皆さんは、かなり揺るぎない信念を持っていると思うので、「私は違う。勝手に『腐女子』を解説するな」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。あくまで、モチーフとして捉えて読むのが正解かな、と思います。
『このベッドのうえ』(集英社)定価1365円
野中柊 著
お勧め度 ★★★★☆
野中柊さんのスペシャルインタビューはこちら。『このベッドのうえ』のご購入もしていただけます。
http://www.s-woman.net/nonaka-hiiragi/1.html
『「処女同盟」第三号』(集英社)定価1365円
吉川トリコ 著
お勧め度 ★★★★☆
吉川トリコさんのスペシャルインタビューはこちら。『「処女同盟」第三号』のご購入もしていただけます。
http://www.s-woman.net/yoshikawa-toriko/1.html
●マガジン見どころ、読みどころ
マリソル
2007年 4月号
『マリソル』が創刊しました! 『マリソル』に限らないことだけれど、創刊号というのはいいものですね。ウキウキします。『マリソル』のキーワードは「ワーキングビューティのための新ファッション誌」。
仕事服の新スタンダード
では、品が良くて、でも、コンサバティブではない、おしゃれ感のあるワーキング・スタイルが提案されていました。私もねぇ、30代後半でターゲット年齢なんですけど、いつもカジュアルだから、「わー、大人~」と思いましたが、ホントはマリソルな装いをすべきです。それにしても、イメージキャラクターの川原亜矢子さんは、何でも着こなすなあ。すごくキレイ~~!
エディター&スタイリストの愛する「銀座」
は、ボリュームたっぷりの銀座別冊。今、銀座は新しいショップが続々登場しているし、老舗ののれんも、気負いなく、くぐれるようになってきたし、昔も今も魅力的な街・銀座をもっともっと堪能するために、うってつけの付録です。えーっと、恐縮ながら、私も参加させていただきましたが、なかなか骨の折れる編集作業でありました……。スタッフ一同、気合いと心を込めて作った創刊号、ぜひ手にとってみてくださいね。
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2007-03-13 | 固定リンク
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