読書の楽しみをたっぷり味わえる、青春ミステリー『風の影』
はーっ、面白かった~。久しぶりに読書の楽しみをたっぷりと味わった!ってな爽快な気分。いやいや、いつも読書は楽しんでいるんですけれどね、こんなに物語の世界にどっぷりひたれることって、やっぱりそう滅多にありません。さすが“世界37カ国で500万部突破”のベストセラーとなった小説『風の影』。上下2巻と堂々たる長篇なのに、途中だれる箇所はみじんもないから、長篇が苦手な人も(←私です…)ぐいぐいひっぱられて読めちゃうこと、間違いなしですよ。
第2次世界大戦の終結を迎えた1945年の夏の終わり、バルセロナ。小さな古書店を営む父センペーレと暮らす少年ダニエルは、世の中から忘れられた本がたどりつく場所と言われる「忘れられた本の墓場」へ、父に連れられて出かけます。本の迷宮のようなその場所で彼は、運命の本「風の影」と出合って深く感動し、謎の作家フリアン・カラックスの隠された過去を探求するように。そして、カラックスの過去を追ううちに、内戦に傷ついたバルセロナという街の暗い記憶と魂を掘り起こすことになり、さらに、カラックスの人生と自分の人生との不思議な一致に気づいて――
10歳の少年、ダニエルが青年に成長していく過程で知る人生の光と影は、つまり、人間とはいつの時代でも、どんな場所でも、愛情と憎悪にふりまわされる生き物なのだと思い知らされることに他ならないのだけど、内戦でぼろぼろに傷ついていた時代のバルセロナを舞台としたことで、街を覆う深い哀しみがより真に迫ってくるように感じました。
ただし、この本が魅力的なのは、重いストーリーとテーマである反面、ユーモアもたっぷりあるからだと思います。特に傑作な人物は、「センペーレと息子書店」の店員フェルミン。彼のとまらないおしゃべりったら、いちいち鋭くておかしいの。まあ、口が悪いから、場合によっては周囲はやっかいだろうけど、実際にこんな人がいたら愉快だろうなあ。もちろん、彼のおしゃべりは、ただ「おかしい」ってだけじゃなくて、攻撃は最大の防御よろしく、寄るべない彼の人生の武器である点を見逃すわけにはいきませんが…。
この小説には、核となる登場人物のほかに、バスの車掌さんやカフェのウエイターなど、たくさんの脇役が出てきますが、ムダな登場人物はひとりもいないし、描写がとってもリアルで目に浮かぶよう。フランコ政権下のバルセロナという、日本人の私たちには「遠い場所」の物語であるにもかかわらず、「いるいる、こういう人」と思わせちゃう筆力は、あっぱれ!です。
そして、複雑に絡み合った点と線が集約されていき、思いがけない結末へと向かうフィナーレは、読書する楽しみと醍醐味をきっと味わえるはずの、あっと驚く鮮やかさ。
私は海外小説にもミステリーにも詳しくないので、著者のカルロス・ルイス・サフォンさんという作家を全然知らなかったのですが、欧米では『風の影』を読んだ後に「サフォン・マニア」と呼ばれるほど大ファンになる人が続出しているらしいです。さもありなん。私も次作をぜひ読みたいな。ちなみに、サフォンさんはバルセロナ生まれのスペイン人、現在はサンフランシスコ在住で、ハリウッドで脚本家としても活躍しているそうですよ。
蛇足ながら付け加えると、とても読みやすく、素晴らしい日本語訳であることも、『風の影』日本語版の幸運であると思いました。
『風の影(上・下)』(集英社文庫)定価各780円
カルロス・ルイス・サフォン 著
木村裕美 訳
お勧め度 ★★★★★
『風の影』の詳細はこちらへ。ご購入もしていただけます。
http://bunko.shueisha.co.jp/kaze/index.html
●マガジン見どころ、読みどころ
LEE
2006年10月号
今月号の『LEE』、なんといっても注目はこれでしょう。大物の連載エッセイが始まりました。
中山美穂さんの「気づくこと」の楽しさ
です。結婚しパリ在住となってから、しばらく芸能活動をペースダウンしていた中山さんですが、この連載で本格復帰! 丁寧な文章と本人撮影のスナップは、ファンならずとも、必見です。ミポリン、すっかりパリジェンヌになりましたねー。次号以降も楽しみです。
おしゃれな女性はでかバッグがお約束
では、この欄でさんざん書いていますが、荷物持ちの私にとって、願ってもないビッグトレンド「でかバッグ」大特集。実はですね、この特集を見てさっそく、大好きなブランド「オロビアンコ」のトートバッグをショップにキープしてもらい、買ってきました。ドット柄でかわいくて、ナイロン製で使いやすく、そのうえ、お手ごろ価格。もうすんごいお気に入りなの♪ ラグジュアリーからカジュアルまで、いろいろ紹介されていて、バランスのよいセレクトが◎の特集ですよ。
この人に会いたくて YOUさん
は、『LEE』の読者アンケートで「おしゃれと思う女性」No.1になったYOUさんが登場、読者からの質問にいろいろ答えてくれています……って、この記事は不肖・中沢が担当させていただいたため、手前ミソで恐縮ですけれど、ホント、興味深い話をたくさんしてくれています! だから、ぜひぜひ読んでみてくださいね。
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2006-09-12 | 固定リンク
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