個性派女優の片桐はいりさん。初エッセイにして名作となった旅のお話『わたしのマトカ』
静かなブームとなり、ロングランとなった荻上直子監督の映画『かもめ食堂』。物語の舞台は「森と湖の国」フィンランドの首都ヘルシンキです。この街で小林聡美さん扮するサチエがひらいた「かもめ食堂」という店が街になじんでいくまでの、じんわりあったかいストーリーが、とても心に響き・・・・というわけで、早速友人と行ってきちゃいました! ヘルシンキに。
その「かもめ食堂」に出演していた女優、片桐はいりさんが1ヶ月間のロケで滞在したフィンランドと、今までの旅について書いたエッセイが『わたしのマトカ』です。
正直言いますと、ヘルシンキ行きの機内で「ま、一応読んどくか」程度の気持ちで持って行った本でした。しかししかーーし、これが名作だったんでありますよ! 笑える、泣ける、文章うまい! すばらしいです。面白かったです、本当に。はいりさん、グッジョブ!! 暗い機内で何度「くっくっくっく」と笑い、ホロリと涙したことか。
そして、ここがこの本の"すばらしさグレード"を上げている点なのですが、人情味あふれる思い出話とともに、鋭い観察眼で、普通だったらスルーしそうな「フィンランド人の特徴」をしっかりつかんで、それをうまく文章で伝えてくれているんです。紀行文が好きな人なら、フィンランドに行ったことがない人も面白く読めるはずだし、読んだら行きたくなっちゃうと思います。
長いキャリアをお持ちの片桐さんなのに、意外にもこれが初単行本だそう。ちょっと信じられないくらい、うまいんだよなあ。これからは文章をどんどん書いてほしいです。
特におかしかったのが、ヘルシンキの“花やしき”(要するに、ちょっとレトロな遊園地ね)だという「リンナンマッキ」の話。意外に怖そうなジェットコースターを見つけた乗り物狂のはいりさん、どれくらい怖いのか、乗っている人の表情から推し量ろうと思ったら、これが全員無表情だった。普通の日本人なら「きゃああああ」と叫ぶとか、大笑いしているとか、両手をばんざーい!とあげているとか、何かリアクションしながら乗るジェットコースターなのに、フィンランド人はお面のような無表情。で、はいりさんが乗ってみると・・・・無表情で楽しむには、「かなりの難易度」の、結構ハードな乗り物だったらしいです。フィンランドの人たち、なぜ無表情で乗れるの!?
ヘルシンキを旅してみると、はいりさんが書いていらしたことを「なるほど」と実感する場面がいっぱいありました。はいりさんがいつも乗っていたというトラムにも、毎日乗りっぱなしだったし、撮影場所に足を運んでみたりして、『わたしのマトカ』が旅をより楽しいものにしてくれました。ちなみに、「マトカ」とはフィンランド語で「旅」を意味する言葉であります。
香港好きでもあるはいりさん、香港旅話も出てきます。私も香港好きなので、そんな共通項も個人的にうれしくて。そういえば、ウォン・カーウァイ監督が『ブエノスアイレス』公開時に来日した折、監督は渋谷でサイン会をしたのですが、そのとき、普通に並んでいたはいりさんを見たことがあります。そんなはいりさんだから、フィンランドの名監督アキ・カウリスマキの映画『過去のない男』に主演したマルック・ペルトラさん(『かもめ食堂』にも出演)とのエピソードも、非常に興味深く伝えてくれています。カウリスマキ映画ファンにも見逃せない一冊だと思います。
『わたしのマトカ』
片桐はいり 著(幻冬舎)定価1470円
お勧め度 ★★★★★
『わたしのマトカ』を発行している幻冬舎のサイトはこちらです。
http://www.gentosha.co.jp/index.php
●ヘルシンキにて。中沢が撮影してまいりました。
(1)ムーミンファミリーの頭上に、かもめ。
(2)とってもえらい人の頭上にも、かもめ。
(3)バルト海の乙女ちゃんの頭上にも、かもめ。
(4)そして・・・・「かもめ食堂」。
*映画が撮影されたSUOMIレストランでは、
「かもめ食堂」の文字を撮影の記念に残したそうです。
おまけ。
もたいまさこさん扮するマサコが買った「マリメッコ」のワンピースを、たぶん、マサコが訪れたと思われる「マリメッコ」で発見! このワンピースを着て「ちょっと派手だったでしょうか?」とマサコが言う場面がありましたが、実際、なかなかパンチの効いたワンピースでありました。
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2006-07-04 | 固定リンク
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