夫婦で営む創作料理店『筆や』。(台東区)

明けましておめでとうございます。年が明けると、いつも以上に気持ちがぴりっとひきしまり、謙虚さを忘れないようにと願うのですが、2008年第1回の更新は、その大切さをより強く実感させられる、すてきなレストランを紹介します。
最近お気に入りの谷中エリアは、徳川時代の発令により集められた70もの寺社がある珍しい場所。そのせいか、高いビルが少ないうえ、よどみのない空気が流れているから、お散歩するにはもってこい。そこでぜひ足を運んで欲しいのが、『筆や』です。
店主の高山繁さんは、洋画の筆職人だったころから家族の食事を作るのはもちろん、仲のよい友達にも頻繁に手料理をふるまっていたほどの料理好き。その趣味が高じて、お店を開きたいと思うようになり、50歳を過ぎてから料理店で修業を積み、ついに自宅の1階に『筆や』をかまえました。
座席数が10というアットホームな空間の、カウンターの向こう側では、ご主人と奥様の笑子さんが、お客さんと楽しく会話したり、あうんの呼吸で料理を作っています。
そこで登場するのが、繁さんがもてなす創作料理の数々。その作り方がなんとも独創的で、たとえば評判の「ビーフシチュー」(¥1750)ならば、大量の赤ワインにトマトペースト、多くの香辛料を加えて6時間以上煮込んだ自家製ルーに、野菜と、脂をそぎ落とした豚バラ肉の塊を紐で巻いてオーブンで焼き込んだものを加える。さらにそれらをキャセロールに移して直火でぐつぐつ煮込み、テーブルに運ぶのです。アツアツで深い味わいのビーフシチュー、食べ始めは「ややうすめの味付けかな」と思ったけれど、食べ終わったときにちょうどいい味わいとして舌と記憶に残る、絶妙の味加減です。
さらには、いつも2人で通っているという、足立区の市場で仕入れた旬の魚や野菜を使い、その日の内容によって調理法や味付けをかえた料理を展開。私がいただいた「小えびのバルセロナ風」(¥840)は、ぷりぷりのえびをオリーブ油やにんにく、唐辛子とさっと炒めて、フレッシュなバジルをたっぷりからめ、キャセロールに入れて直火であぶったもの。近所の酒屋さんが提案してくれるという、美味しい「ワイン」がぐいぐいすすみます。
気になっていた方もいらっしゃるかもしれませんが、高山さんの料理には、すっぽん用の鍋をアレンジして作ってもらったという特製のキャセロールを使って直火で調理する、という方法がたくさん出てきます。その理由は、「食材がもっとも美味しくなる絶妙のタイミングを見逃さずに、お客さまへ提供できるから」なのだそう。アツアツ・ぐつぐつのまま目の前に運ばれてきた料理の様子を見て香りをかぐだけで、そこにいる誰もが心を高揚せずにはいられません。
「筆作りも料理作りもいっしょ。よい素材を使って、気持ちをこめて作らなければ、最高のものはできないんです」と、ていねいに語る繁さんとその傍らでやさしく見守る笑子さん。「常連さんに新しい彼氏(もしくは彼女)ができると、お店に連れてきて、紹介してくれる」という言葉にも納得。我が家のように、“帰りたくなる”レストランです。
住所 東京都台東区谷中7の4の1
電話 03(3827)1144
営 12時~14時30分、18時~23時(土日祝日)11時30分~15時、18時~22時
休 月曜・火曜・第3日曜
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2008-01-05 【カフェ】 | 固定リンク
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