谷根千めぐりなら、甘味処『芋甚』へ。(文京区)

最近、谷中・根津・千駄木エリアに行くことが多い私は、“谷根千”の魅力にすっかりハマってしまいました。環境がよく、人情味にあふれていて、古いものと新しいものとが仲良く共存している場所。最大の魅力は、“安くておいしいお店”に出会える確率が、ほかのエリアに比べて極めて高いところです。
その中でもとくに心うばわれたのが、根津神社そばにある『芋甚』。初代の頃は“おイモやさん”として人々に親しまれ、当時の店主・山田甚蔵さんの愛称“芋屋の甚さん”が略されて『芋甚』になったのだとか。
4代目になって改装したという店内の壁に掛けられた、近所の絵師が描いたという何枚かの線画から、3代目までの『芋甚』に思いを馳せます。きっと昔も、今と変わらずお客さんの空間はもちろん、厨房のすみずみまで掃除が行き届いた、清潔感あふれる店内だったことでしょう――。
いろんなお店を巡って谷根千を楽しみたいという気持ちもわかりますが、私はやっぱり『芋甚』の喫茶スペースでおいしい甘味を食べてほしいなと思います。
名物の「昭和焼き」(¥110・店内では2個で¥260)は、いわゆる今川焼きのような『芋甚』特製のおやつ。餡は、ひいきにしている北海道・十勝産の小豆を、火が均一に伝わるぶんおいしく炊けるという銅鍋で、長い時間をかけてことこと煮込みます。そして、創業当時から使っているという、一般的な今川焼きよりも小さめで高さのある特製の銅の焼き型に生地を流し込み、その餡をつめて焼き上げます。焼きたては、音がするほど表面カリカリ、中はふっくら。あっさり味の生地が、ふっくら炊けた甘さひかえめの餡をおいしく包み込みます。先代からの味を忠実に受け継ぐ「昭和焼き」は、ため息がでるほど、懐かしくておいしい。
当たり前のように“手作り”を貫く『芋甚』では、「アイスクリーム」だってもちろん手作り。その作り方もユニークで、昔ごはんを炊く時に使っていた羽釜を使うとか。そこに脱脂粉乳やエバミルク、コンデンスミルクなどを入れてかき混ぜてから、かく拌機に移して、毎日、自家製のバニラアイスや小豆のアイスをこしらえます。それは、シャーベットのようにあっさりしているのに、コクとうまみはたっぷり。香ばしくてサクサクの最中ではさんだ2種盛りの「アイスもなか」(¥110・店内では2個で¥260)は、寒い冬にだって食べたくなる味です。そして店主がほれ込んでいるという、ご近所の「土佐屋」製の天草からこしらえた寒天に自家製アイスや小豆をのせ、つややかな黒蜜をかけた「クリームあんみつ」(¥450)……どのメニューも心の奥底にじんわりしみこみ、安らぎと幸せを与えてくれるから不思議です。
もしかしたらお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、こんなに素材にこだわり、丁寧に作っているのに、お値段はすごく良心的。お金儲けとは無縁で、自分の道をじっくりゆっくり歩まれる(と私は思う)お店のご主人によれば「ごくごく適正価格ですよ」とのこと。そのおだやかな精神が、100年近くもの間、人々にとっての“ごひいき”になる理由のひとつかもしれません。
気づけばまわりは、女性同士や男性客はもちろん、おじいちゃんと孫、おばあちゃんと孫、といった組み合わせもちらほら。思わずそばにいる私までにっこりしてしまう、ぬくもりのある甘味屋さんです。もし、「時間がない」という場合は、通りに面した売り場で、“買い食い”してみてくださいね。
住所 東京都文京区根津2の30の4
電話 03(3821)5530
営 11時~19時
休 月曜
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2007-12-22 【カフェ】 | 固定リンク
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